ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法の開発

文献情報

文献番号
201128071A
報告書区分
総括
研究課題名
ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法の開発
課題番号
H22-難治・一般-110
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 修(東北大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、(1)先天性代謝異常症と(2)栄養性ビオチン欠乏症の日本における頻度を明らかにすること、(3)ビオチン代謝異常の鑑別診断法の開発、(4)ビオチン代謝異常を起こす未同定の遺伝子の同定、(5)ビオチン代謝異常症の原因遺伝子の同定に役立てるため、血清ビオチンに影響を与える遺伝子座を同定する、(6)ビオチン代謝異常症に関する情報をウェブ上に公開する事である。
研究方法
アンケート調査行い、栄養性ビオチン欠乏症の頻度、ビオチニダーゼ欠損症、ホロカルボキラーゼ合成酵素(HLCS)欠損症の症例を経験したかどうかを尋ねた。ビオチン代謝異常症に関する最新の知見と診断の進め方に関する情報を掲載した。ビオチン代謝異常症の鑑別診断法を作成し、最近の症例に利用した。エクソーム解析によって変異遺伝子未知の患者における遺伝子の同定を試みた。ビオチン代謝に関連する遺伝子を同定するため、一般集団における血清ビオチン値を規定する遺伝子多型のゲノムワイドに相関をスクリーニングした。
結果と考察
臨床的に問題となる栄養性ビオチン欠乏症は、過去10年間で、2.5%の病院で経験があり、少なくとも日本全体で70例以上発生していると推定された。先天性代謝異常症は、30年間で30例(HLCS欠損症 28例)確定例が確認された。新しい迅速診断法によってビオチン代謝異常症の症例を新たに確定することが出来た。ビオチン代謝異常症でホロカルボキラーゼ合成酵素とビオチニダーゼ遺伝子に異常が見られない症例のエクソーム解析では、多数の変異が見つかっており、原因遺伝子の特定には至っていない。一般小児集団において、血清ビオチン値を規定する複数の遺伝子座位の存在が推定された。
結論
 栄養性と先天性のビオチン代謝異常症の罹患率の疫学調査を行って、栄養性ビオチン欠乏症の発生頻度が初めて明らかとなった。先天性代謝異常の遺伝子診断は、栄養性欠乏症と遺伝性疾患の鑑別診断にとって重要な検査であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

文献情報

文献番号
201128071B
報告書区分
総合
研究課題名
ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法の開発
課題番号
H22-難治・一般-110
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 坂本 修(東北大学医学研究院 小児病態学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)アレルギー治療用のペプチドミルク等の特殊ミルクによるビオチンの摂取不足によってビオチン欠乏症状(マルチプルカルボキシラーゼ欠損症:MCD)を起こす栄養性ビオチン欠乏症が日本でどの程度の頻度で起こっているのかを推定する。
(2)ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HLCS)欠損症とビオチニダーゼ(BTD)欠損症などの先天性ビオチン代謝異常症の発生頻度を明らかにする。
(3) MCDの症状を示した場合の鑑別診断法が実際に役に立つかどうかの検証を行う。
(4)HLCS、BTD、SLC19A3遺伝子に異常が見つからないMCDを示す患者において、遺伝子異常の同定を試みる
(5)ビオチン代謝異常症の原因となる可能性となる遺伝子の領域をスクリーニングするため、正常小児の血清ビオチン濃度を測定しゲノムワイドに遺伝子多型を調べ、血清ビオチンの量的形質遺伝子座の検出を試みる。
(6)ビオチン代謝異常の臨床像、診断、原因、治療に関する情報のウェブサイトを開発、公開する。
研究方法
 アンケート調査で、栄養性ビオチン欠乏症の頻度、BTD欠損症、 HLCS欠損症の症例を経験したかどうかを尋ねた。我々の30年間のビオチン代謝異常の診断の記録をレビューした。ビオチン代謝異常症に関する最新の知見と診断の進め方に関する情報を掲載した。ビオチン代謝異常症の鑑別診断法を作成し、最近の症例に利用した。エクソーム解析によって変異遺伝子未知の患者における遺伝子の同定を試みた。ビオチン代謝に関連する遺伝子を同定するため、一般集団における血清ビオチン値を規定する遺伝子多型のゲノムワイドに相関をスクリーニングした。
結果と考察
 臨床的に問題となる栄養性ビオチン欠乏症は、過去10年間に日本全体で70例以上発生していると推定された。先天性代謝異常症は、30年間で30例(HLCS欠損症 28例)確定例が確認された。新しい迅速診断法によってビオチン代謝異常症の症例を新たに確定することが出来た。原因未知のビオチン代謝異常症例のエクソーム解析では、多数の変異が見つかっており、原因遺伝子の特定には至っていない。一般小児集団において、血清ビオチン値を規定する複数の遺伝子座位の存在が推定された。
結論
 栄養性ビオチン欠乏症は現在のアレルギー診療上無視出来ない問題である。ビオチンの治療用ミルクへの添加が認められるまで、治療用ミルクを長期にわたり用いる場合は、ビオチンの補充も同時に行うべきである。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128071C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来、起こりにくく、臨床的には問題にならないと考えられていたビオチン欠乏症が現在の日本に多く発生し、臨床上の問題であることを明確に示すことが出来た。また、先天性代謝異常症の遺伝子診断がビオチン代謝異常症の鑑別診断、確定診断に有用であることを示した。血清ビオチン値を規定する、遺伝子の候補を見いだすことが出来た。
臨床的観点からの成果
本研究から、食物アレルギーなどの治療でアミノ酸調節粉末を利用している施設は多く、その治療中にビオチン欠乏症を起こしてくる症例の発生実態が明らかになり、アミノ酸調節粉末の使用の際のビオチン補充を訴える根拠となった。ビオチン代謝異常症の症状を示した場合の迅速診断法の適応で新たなホロカルボキラーゼ合成酵素欠損症の症例の診断が可能であった。
ガイドライン等の開発
ビオチン代謝異常のホームページにビオチン代謝異常症の鑑別診断に関する情報を公開している。ガイドラインとはなっていない。
その他行政的観点からの成果
該当なし。
その他のインパクト
ビオチン代謝異常に関するホームページの開発、公開を行った。
http://www.m.chiba-u.ac.jp/class/pubheal/biotin/

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページの公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inoue H, Mashimo Y, Funamizu M et al.
Association of the MMP9 gene with childhood cedar pollen sensitization and pollinosis
J Hum Genet , 57 (3) , 176-183  (2012)
原著論文2
Hattori S, Shimojo N, Mashimo Y et al.
Relationship between RANTES polymorphisms and Respiratory Syncytial virus bronchiolitis in a Japanese infant population
Jpn J Infect Dis , 64 (3) , 242-245  (2011)
原著論文3
Sakamoto O, Ohura T, Murayama K et al.
Neonatal lactic acidosis with methylmalonic aciduria by novel mutations in the SUCLG1 gene
Pediatr Int , 53 (3) , 921-925  (2011)
原著論文4
鈴木洋一
食物アレルギーの乳幼児へのアミノ酸調節粉末投与の際はビオチンの補充を
アレルギー , 59 (11) , 1587-1588  (2010)
原著論文5
鈴木洋一
栄養性ビオチン欠乏症と先天性ビオチン代謝異常症の疫学
ビタミン , 86 (9) , 499-507  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-05-26

収支報告書

文献番号
201128071Z