Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)に対する細胞分子生物学的手法を用いた診療基盤技術の開発

文献情報

文献番号
201128046A
報告書区分
総括
研究課題名
Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)に対する細胞分子生物学的手法を用いた診療基盤技術の開発
課題番号
H22-難治・一般-085
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 潤(京都大学 iPS細胞研究所 )
  • 原 寿郎(九州大学大学院成育発達医学)
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学研究科)
  • 平家 俊男(京都大学大学院発達小児科学)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院発達小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)は自己炎症性疾患の1つで、原因遺伝子はNLRP3遺伝子である。以下の3項目を検討した。①日本におけるCAPSの実態調査を行う。②国際共同研究によるNLRP3変異陰性CINCA症候群におけるNLRP3体細胞モザイクの普遍性の検討、その頻度の検討する。③CAPS由来疾患特異的iPS細胞を樹立、各細胞への分化系、特に単球・マクロファージ系、軟骨への分化系を開発する。今年度は臨床症状の検討、モザイク病態の解析、iPS細胞の解析を進めた。
研究方法
I-1. CINCA症候群における動脈硬化に関する研究:今回1年後に同様の検査を行い経時的評価を行った。I-2. CAPSの各病型における臨床症状の検討を行った。II. CAPSにおけるNLRP3体細胞モザイクの検討。II-1. NLRP3変異陰性CINCAにおけるNLRP3体細胞モザイクの頻度および各症例の臨床症状、経過情報を担当医より集め検討した。II-2. 次世代シークエンサーを用いたNLRP3体細胞モザイク迅速診断を検討した。III. CAPS患者特異的iPS細胞の樹立とその解析:NLRP3体細胞モザイクCINCA患者2名よりiPS細胞株を樹立、単球・マクロファージ分化系へ分化させ、患者由来iPS細胞における表現型の解析を行った。
結果と考察
I-1. 1年後の経過観察では改善がみられ,その他の検査も増悪はみられなかった。I-2.トシリズマブ投与前後では血清中IL-6、IL-1βに変化は認めず、Anakinra投与により血清IL-6の低下を認めている。また、トシリズマブは髄液中で検出されず、髄液移行が認められないことが明らかとなった。Anakinraの投与により髄液中のIL-6の低下を認めた。II-1. 26症例中18症例にNLRP3モザイクを同定した。モザイク患者の臨床症状では、神経症状の軽症傾向がみとめられた。II-2. 次世代シークエンサーを用いたNLRP3体細胞モザイク迅速診断が可能となった。
III. CAPS患者特異的iPS細胞の樹立とその解析:患者iPS細胞を機能的マクロファージに分化させ、NLRP3変異を持つクローンでは、すべてIL-1bの過剰産生が認められることを確認した。さらにNLRP3変異特異的に誘導される細胞死(Pyronecrosis)が確認された。これを用いて、創薬スクリーニングを開始した。
結論
以上のように、2年間の研究期間にCAPSの病態を理解し、診療に役立てるための基盤を形成することができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128046B
報告書区分
総合
研究課題名
Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)に対する細胞分子生物学的手法を用いた診療基盤技術の開発
課題番号
H22-難治・一般-085
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 潤(京都大学 iPS細胞研究所 )
  • 原 寿郎(九州大学大学院成育発達医学)
  • 横田 俊平(横浜市立大学医学研究科)
  • 平家 俊男(京都大学大学院発達小児科学)
  • 西小森 隆太(京都大学大学院発達小児科学)
  • 河合 利尚(国立成育医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Cryopyrin-associated periodic syndrome(CAPS)は自己炎症性疾患の1つである。以下の3項目を目標に本研究班が形成された。①日本におけるCAPSの実態調査を行う、特にアナキンラ等の抗IL-1療法の効果の調査、長期生存例がもつリスク因子についても調査する。②国際共同研究によるNLRP3変異陰性CINCA症候群におけるNLRP3体細胞モザイクの普遍性の検討、その頻度の検討する③CAPS由来疾患特異的iPS細胞を樹立、各細胞への分化系、特に単球・マクロファージ系、軟骨への分化系を開発する。
研究方法
I-1. CINCA症候群における動脈硬化の有無・程度を検討した。I-2. 抗IL-6受容体抗体と抗IL-1受容体アンタゴニストによる治療を行い、その経過における炎症性サイトカインについて血清、髄液での測定を行った。II. CAPSにおけるNLRP3体細胞モザイクの検討。II-1. NLRP3変異陰性CINCA症候群症例の全血/PBMCより抽出されたDNA検体を、フランス6例、アメリカ6例、スペイン4例、オランダ4例、日本6例の計26症例集積し,モザイク率を検討した。II-2. 次世代シークエンサを用いたNLRP3体細胞モザイク迅速診断を検討した。III. NLRP3体細胞モザイクCINCA患者2名よりiPS細胞株を樹立、単球・マクロファージ系へ分化させ、患者由来iPS細胞における表現型の解析を行った。
結果と考察
I-1. 3例のCINCA症候群を対象として超音波検査による評価を行い、動脈硬化は年齢とともに増悪する傾向がみられた。I-2. トシリズマブ投与前後では血清中IL-6、IL-1βに変化は認めず、Anakinra投与により血清IL-6の低下を認めている。また髄液中のIL-6は血清中に比べて高値を示していることが明らかとなった。II-1. NLRP3変異陰性CINCA症候群26症例中18症例にNLRP3モザイクを同定した。モザイク患者の臨床症状検討では、皮疹、発熱、骨過形成は典型的な症状を有していたが、神経症状の軽症傾向認められた。II-2. 次世代シークエンサを用いたNLRP3体細胞モザイク迅速診断法を開発した。III. 体細胞モザイクで発症したCINCA症候群患者2例からiPS細胞クローンを樹立した。NLRP3変異を持つクローンでは、全てIL-1bの過剰産生が認められ、変異なしクローンではIL-1b産生は正常であった。
結論
本研究班によって、CAPSの遺伝的背景、臨床症状、予後リスク因子などを明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128046C

成果

専門的・学術的観点からの成果
次世代シーケンサ―を用いた、CAPSの体細胞モザイクにおける新たな診断技術を開発した。CAPS患者からiPS細胞を樹立し、その性状を解析することにより、モザイク患者の病態を明らかにした。
臨床的観点からの成果
CINCA/NOMID症候群における動脈硬化のリスクを明らかにした。トシリズマブ投与前後の血清・髄液中サイトカインの推移と臨床症状の関連を明らかにし、サイトカイン測定の治療時の有用性について検討した。CINCA/NOMIDの体細胞モザイク例について、臨床症状との関連を明らかにした。
ガイドライン等の開発
NLRP3変異陰性の患者の患者検体を、フランス、アメリカ、スペイン、オランダ、日本から計26症例集積し、解析した結果、約70%患者は体細胞モザイクで起こっていることが明らかとなった。今回の研究結果を得て、今後、世界的なガイドライン作りが開始される。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成23年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業研究発表会(大阪国際会議場、2012年1月14日)において「疾患特異的iPS細胞を用いた難治性疾患の画期的診断・治療法の開発に関する研究」として発表し、CAPSについて言及した。
第60回日本医学検査学会の市民公開講座(東京国際フォーラム、2011年6月6日)において「iPS細胞を用いた今後の医療」として講演し、CAPSについて言及した。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Murata Y, Nakahata T, Heike T.,et al.
Rapid diagnosis of FHL3 by flow cytometric detection of intraplatelet Munc13-4 protein.
Blood , 118 (5) , 1225-1230  (2011)
原著論文2
Tanaka N.,  Nakahata T., Heike T.,et al.
High incidence of NLRP3 somatic mosaicism in chronic infantile neurological cutaneous and articular syndrome patients; the results of an international multicenter collaborative study.
Arthritis Rheuma. , 63 (11) , 3625-3632  (2011)
原著論文3
Kato I, Ishikawa F, Nakahata T.,et al.
Identification of hepatic niche harboring human acute lymphoblastic leukemic cells via the SDF-1/CXCR4 axis.
PLoS One , 6 (11) , 27042-  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201128046Z