文献情報
文献番号
201128038A
報告書区分
総括
研究課題名
ダウン症候群でみられる一過性骨髄異常増殖症の重症度分類のための診断基準と治療指針の作成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-077
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 泰秀(群馬県立小児医療センター 血液腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 悦朗(弘前大学医学部 小児科)
- 滝 智彦(京都府立医科大学大学院医学研究科 分子診断・治療医学)
- 大喜多 肇(国立成育医療研究センター研究所 小児血液・腫瘍研究部 分子病理研究室)
- 小川 誠司(東京大学医学部附属病院 Cancer Board)
- 菊地 陽(帝京大学医学部 小児科)
- 村松 秀城(名古屋大学医学部 小児科)
- 田村 正徳(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)
- 塚本 桂子(国立成育医療研究センター 周産期診療部 新生児科)
- 渡邉 健一郎(京都大学医学部 小児科)
- 齋藤 明子(名古屋医療センター臨床研究センター 臨床疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis, TAM)は、これまで正確な数の把握はされておらず、最近の多数例の検討で、TAMの死亡例が20から30%みられることが報告された。本邦におけるTAMの頻度、診断基準、死亡率と病態を明らかにし、重症例の治療指針を確立することが目的である。
研究方法
これまで新生児専門医と小児血液専門医で別々に行なわれていたTAMの診断と治療が、平成21年度に立ち上がった研究班により日本小児血液学会の疾患登録システムと新生児側のサーベイランス等により全体像が把握できるようになり、さらに昨年度からTAMの登録と重症例に対する観察研究を開始した。また、重症例の抽出と病態解明のために、マーカー、染色体、GATA1遺伝子解析と次世代シーケンサーによる解析を開始した。
結果と考察
平成21年度の研究班によりTAMの全体像が把握できるようになり、昨年度開始されたTAMの登録と重症例に対する観察研究は順調に進み、2012年2月15日現在で76施設で倫理委員会承認済みであり、24症例が登録されている。また、重症例の抽出と病態解明のための種々の解析により、TAMに関連する遺伝子の異常とそれに伴う病態が明らかになってきた。
昨年度はGATA1遺伝子の低発現変異群が高率に白血病化することを明らかにした。今年度は2種類のGATA1内部欠失変異を6例のTAM患者で見出し、これらの症例では、変異は第3エクソンに存在し、alternative splicingが生じ、43(GATA1 ID type-1)あるいは15アミノ酸の内部欠損 (GATA1 ID type-2)が生じ、赤血球造血に不可欠なGATA1のRB結合モチーフを欠いていた。今回の結果は、TAM発症の仕組みの解明に重要な示唆を与えると思われた。また、NOGマウスの検討で、マウスにTAM細胞の移植が可能となり、今後TAMの発症機序の解明に貢献できると思われた。登録が開始された多数の症例の保存細胞と血清の解析は、TAMでみられる高サイトカイン血症や肝線維症の機序やTAMの分子機構およびモザイク型ダウン症候群や正常児に発生したTAMの機序の解明に役立つと思われる。
昨年度はGATA1遺伝子の低発現変異群が高率に白血病化することを明らかにした。今年度は2種類のGATA1内部欠失変異を6例のTAM患者で見出し、これらの症例では、変異は第3エクソンに存在し、alternative splicingが生じ、43(GATA1 ID type-1)あるいは15アミノ酸の内部欠損 (GATA1 ID type-2)が生じ、赤血球造血に不可欠なGATA1のRB結合モチーフを欠いていた。今回の結果は、TAM発症の仕組みの解明に重要な示唆を与えると思われた。また、NOGマウスの検討で、マウスにTAM細胞の移植が可能となり、今後TAMの発症機序の解明に貢献できると思われた。登録が開始された多数の症例の保存細胞と血清の解析は、TAMでみられる高サイトカイン血症や肝線維症の機序やTAMの分子機構およびモザイク型ダウン症候群や正常児に発生したTAMの機序の解明に役立つと思われる。
結論
今年度の結果により、TAMの全体像の把握と病態が明らかになり、観察研究も開始したので、今後の重症例の治療に貢献すると思われる。
公開日・更新日
公開日
2013-03-12
更新日
-