文献情報
文献番号
201128024A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児破局てんかんの実態と診療指針に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-063
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大槻 泰介(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部)
研究分担者(所属機関)
- 小林 勝弘(岡山大学 医学部・歯学部付属病院)
- 井上 有史(静岡てんかん・神経医療センター)
- 渡辺 英寿(自治医科大学 脳神経外科)
- 須貝 研司(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科 )
- 高橋 章夫(国立精神・神経医療研究センター 国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科診療部 )
- 小国 弘量(東京女子医科大学 小児科学)
- 廣瀬 伸一(福岡大学 医学部)
- 亀山 茂樹(国立病院機構西新潟中央病院)
- 山本 仁(聖マリアンナ医科大学 小児科学)
- 馬場 好一(静岡てんかん・神経医療センター てんかん外科)
- 馬場 啓至(国立病院機構 長崎医療センター 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
乳幼児破局てんかん(catastrophic epilepsy)は、乳幼児期に頻発するてんかん発作により重篤なてんかん性脳機能障害が生じ、その結果、発達の停止・退行など破局的な発達予後を呈する乳幼児難治てんかんをさす。多くの症例は年令依存性に変化する全般性脳波異常を示し重度の発達障害に至ると推測されるが、長期予後と有効な治療法は未だ明らかではない。本研究は、乳幼児破局てんかん患者の患者数と診療実態調査及び治療予後調査を行うとともに、乳幼児破局てんかんの診療ガイドラインを作成することを目的とする。
研究方法
乳幼児破局てんかんはの定義は、(1)てんかん発症年齢が6歳未満、(2)二剤以上の抗てんかん治療(ACTHを含む)に不応性で月に10回程度以上の発作を繰り返し、(3)精神運動発達の停滞・退行を来すてんかん型と定めた。患者数調査としては、過去に岡山県で行われた13才未満の小児てんかんの疫学調査の再集計、及び全国の小児てんかん専門施設を対象としたアンケート調査が行なわれた。また診療実態及び治療予後調査としては、国内調査に加え東アジア(日韓中)13施設による国際共同調査:Far-East Asia Catastrophic Epilepsy (FACE) study(臨床研究登録UMIN4120)が行われた。
結果と考察
本研究班の調査により、乳幼児破局てんかんの有病率は0.74/1,000で6 歳未満発症のてんかんの 10.2%を占め、我が国における患者数は6才未満で4800人と推計された。治療予後については極めて不良であり、内科的治療で発作が消失する例は1年後で15%、10年後でも35%にすぎず、発作が持続する症例では急速に発達指数が低下し、10年後においては大多数の症例が知的障害(86.1%)や運動障害(65.8%)を呈することが明らかとなり、本疾患が小児にとって極めて重大な難治性疾患であることが示された。また、FACE研究で登録された6歳未満の乳幼児破局てんかん314例中、治療1年後の追跡データが得られた258例の発作予後及び発達予後を解析したところ、切除手術は有意な発作予後改善因子であり、発達指数に関しても切除手術群が非手術群に比べて高いことが示された
結論
本研究の成果は、切除外科手術が乳幼児破局てんかんの発作予後と発達予後を改善しうるというエビデンスを示すもの期待される。本研究により、早期診断と早期治療、特に外科治療を軸とした診療指針が作成された意義は大きい。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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