文献情報
文献番号
201128018A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病予防の実用化に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
堂浦 克美(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 工藤 幸司(東北大学 未来医工学治療開発センター)
- 岡村 信行(東北大学 大学院医学系研究科)
- 逆瀬川 裕二(東北大学 大学院医学系研究科)
- 上高原 浩(京都大学 大学院農学研究科)
- 木村 朋寛(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
26,923,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
プリオン病は、発症後に治療的介入を行っても病気の進行を止めることは不可能であるものの、潜伏期の予防的介入では発症を寿命一杯まで遅らせるところまで達成可能である。研究代表者らは、セルロース誘導体が、プリオン病に対して長期間にわたる優れた発病抑制効果を発揮することを発見しており、その予防的効果を人に応用することを目指している。初年度の2ヶ月間間歇静脈内投与毒性試験の結果を踏まえ、毒性と予防的効果を切り離す接点を見出すため、本年度は作用機序解明等に重点を置いた。
研究方法
セルロース誘導体の投与により変動する因子群を各種マイクロアレイで探索し、候補となる実行因子について発症抑制効果との関連をインビトロやインビボで検討した。また、実効因子に関連する既製薬物の効果をインビボで調べた。さらに、化学構造が明確で構造展開が容易である関連低分子化合物の効果と毒性をインビトロとインビボで調べた。また、既製薬物との併用でセルロース誘導体の毒性を低減させる可能性を検討した。
結果と考察
セルロース誘導体の作用を抑制する特定の胸腺由来細胞の存在を明らかにし、その細胞機能を抑えることで、脳内プリオン感染でも単回投与でほぼ寿命近くまで発症を免れられることを発見した。この発見は、プリオンに対する宿主制御系を解明する上で重要であり、新たな創薬の標的となる可能性がある。また、実行因子候補としてサイトカインや糖代謝因子を支持するデータが蓄積され、関連する既製薬物で程度は低いもののインビボで効果を確認した。さらに、関連低分子化合物の構造活性相関で発症遅延効果をもつ単糖レベルでの化学構造が固まり、代表的化合物の安全性をインビボで確認した。セルロース誘導体に比肩する効果はないものの、単糖体での有効な化学構造の発見は構造最適化研究を加速させるものと期待できる。セルロース誘導体の優れた予防的効果を毒性から切り離す目処が立つところまでは到達できていないが、作用機序解明に基づく安全性の高い介入手段の開発に向けて着実に成果を重ねた。
結論
セルロース誘導体の作用機序解明研究・作用に関連する既製薬物の評価研究・関連化合物の最適化研究・毒性克服研究を実施し、セルロース誘導体が持つ予防的効果を安全に実用化するための新たな知見を得た。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
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