疾患特異的iPS細胞を用いた難治性疾患の画期的診断・治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201128005A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患特異的iPS細胞を用いた難治性疾患の画期的診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-216
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 潤(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 高橋 和利(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 高橋 政代(理化学研究所発生再生科学総合研究センター)
  • 高橋 淳(京都大学再生医科学研究所)
  • 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所)
  • 高橋 良輔(京都大学医学研究科脳病態生理学講座)
  • 井上 治久(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 長船 健二(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 平家 俊男(京都大学大学院発達小児科学)
  • 中西 淳(武田薬品工業医薬研究本部生物研究所)
  • 浅香 勲(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 三嶋 理晃(京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
346,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、患者から樹立された疾患特異的iPS細胞を用いて難治性疾患の病因、病態の解明、新たな治療法の開発を目指すと共にiPS細胞から各疾患で傷害されている各臓器の細胞に分化させる方法を共有化し、我が国における研究基盤を確立することである。
研究方法
本年度は、個々の疾患解析、創薬への応用へより一層注力した。家族性および孤発性パーキンソン病のiPS細胞から分化させたドパミン神経を用いたミトコンドリアの解析、網羅的解析、細胞生物学的な解析、多発性嚢胞腎患者の病態関連候補遺伝子・診断マーカーの開発、腎、肝嚢胞モデル作製、肺リンパ脈管筋腫症の病態解析、網膜膜色素変性症患者のiPS細胞由来視細胞の形態・細胞死の評価と有効薬剤の探索、疾患由来iPS細胞から分化させた骨・軟骨細胞の表現型・トランスクリプトームあるいはプロテオーム解析 、ヒト好中球減少症の病態再現 、ALSの神経細胞を用いた網羅的タンパク質発現解析と創薬評価系の構築などを行う。体細胞モザイクの患者から正常と変異クローンの疾患特異的iPS細胞を作成し、遺伝的背景の多様性を最小限に抑えた解析を行う。
結果と考察
①前年度から収集を続けている疾患に加えて、新規6疾患を対象に、新たな患者20例以上から、皮膚線維芽細胞を樹立し、iPS細胞のソースとした。②網膜色素上皮細胞、ドパミン神経細胞、運動ニューロン、骨格筋細胞、好中球、気道上皮細胞などの分化系・培養系の構築や最適化を行った。③進行性骨化性線維異形成症、CINCA症候群、網膜色素変性症、ALS、多発性嚢胞腎などの患者由来のiPS細胞を用いて、分化した細胞の機能解析を行い、新たな生物学的・病理学的特徴を明らかにした。④ヒトES細胞株と5ヒトiPS細胞の遺伝子発現、メチル化DNA、神経細胞への分化能を調べた。
患者iPS細胞を用いた病態解析も本格化しており、創薬につながる成果や、疾患の本態を理解する上で重要な成果が報告されている。従来の手法では解明しえなかった、様々な結果を生かし、さらに研究を進めてゆきたい。
結論
本年度は疾患の幅を広げるとともに、本格的な病態解析が進んでいる。疾患特異的iPS細胞を用いた病態解析・病因究明という大きな目標に向けて、順調に研究が進行している。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128005B
報告書区分
総合
研究課題名
疾患特異的iPS細胞を用いた難治性疾患の画期的診断・治療法の開発に関する研究
課題番号
H21-難治・一般-216
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
中畑 龍俊(京都大学 iPS細胞研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 潤(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 高橋 和利(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 高橋 政代(理化学研究所発生再生科学総合研究センター)
  • 高橋 淳(京都大学再生医科学研究所)
  • 戸口田 淳也(京都大学再生医科学研究所)
  • 高橋 良輔(京都大学医学研究科脳病態生理学講座)
  • 井上 治久(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 長船 健二(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 平家 俊男(京都大学大学院発達小児科学)
  • 中西 淳(武田薬品工業医薬研究本部生物研究所)
  • 浅香 勲(京都大学 iPS細胞研究所)
  • 三嶋 理晃(京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患克服研究事業の対象となっている疾患はいずれも患者数が少なく研究が進みにくいことから、新たな画期的な診断、治療法の開発が求められている。iPS細胞は患者個人由来の多能性幹細胞として樹立できる点で画期的であり、様々な臨床応用が期待される。本研究では、疾患特異的iPS細胞を用いて難治性疾患の病因、病態の解明、新たな治療法の開発を目指すと共に各疾患で傷害されている細胞にiPS細胞から分化させる方法を共有化し、我が国における研究基盤を確立することである。
研究方法
難治性疾患克服研究事業の対象患者から書面で同意を得た後、疾患特異的iPS細胞のソースとなる皮膚などの組織を採取した。研究分担者によりiPS細胞から種々の細胞への効率良い分化系の確立、機能解析について検討した。
結果と考察
①網膜変性疾患、脊髄性筋萎縮症、パーキンソン病、難治性骨軟骨疾患、多発性嚢胞腎などの疾患患者180例以上から皮膚線維芽細胞を樹立し、iPS細胞のソースとした。②網膜色素上皮細胞、ドパミン神経細胞、運動ニューロン、骨格筋細胞、好中球などの分化系・培養系の構築や最適化を行った。③CINCA症候群、網膜色素変性症、筋萎縮性側索硬化症、多発性嚢胞腎などの患者由来のiPS細胞を用いて、分化した細胞の機能解析を用いて病態再現を行い、新たな生物学的・病理学的特徴を明らかにした。進行性骨化性線維異形成症、CINCA症候群などの疾患で、創薬スクリーニングを開始した。本研究班では、難治性疾患を対象として非常に多くの試料を得ることができた。また、分化能を含む様々な角度からiPS細胞の評価が進められた。分担研究者がそれぞれ課題に取り組み、多くの疾患で実際の病態解析からさらに創薬へと研究が順調に進捗している。従来の手法では解明しえなかった、様々な解析結果が明らかになってきており、病態の理解・治療薬開発に向けて、研究を進めてゆきたい。本研究班内での分化系やiPS細胞のやり取りが活発に行われ、研究班全体として研究が当初の予定を上回って順調に進捗した。
結論
本研究班では非常に多くの試料を収集するとともに、病態解析・病因究明という大きな目標に向けて、順調に研究が進行した。今後も研究に邁進し、病気に苦しむ患者さんの診断・治療に貢献できる成果を求めてゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
難治性疾患20疾患以上を対象に、皮膚線維芽細胞を樹立しiPS細胞のソースとした。iPS細胞から網膜色素上皮細胞、ドパミン神経細胞、運動ニューロン、骨格筋細胞、好中球、気道上皮細胞などの分化系・培養系の構築や最適化を行った。進行性骨化性線維異形成症、CINCA症候群、網膜色素変性症、ALS、多発性嚢胞腎などの患者由来のiPS細胞を用いて、分化した細胞の機能解析を行い、新たな生物学的・病理学的特徴を明らかにした。
臨床的観点からの成果
難治性疾患克服研究事業の対象となっている疾患はいずれも患者数が少なく研究が進みにくいことから、新たな画期的な診断、治療法の開発が求められている。本研究班では、これらの疾患からiPS細胞を樹立し、病態再現・解析を行うことを目指している。幾つかの疾患では疾患特異的iPS細胞を用いた患者特異的な病態の再現に成功し、創薬スクリーニングを開始するなど、治療法開発に向けた成果が挙がっている。
ガイドライン等の開発
多数の難病のiPS細胞を用いた研究を行った。診断や病態に関する新たな知見が得られていることから、今後個々の疾患についてガイドラインへの応用(反映)が期待される。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
平成23年度厚生労働省難治性疾患克服研究事業研究発表会(大阪国際会議場、2012年1月14日)において「疾患特異的iPS細胞を用いた難治性疾患の画期的診断・治療法の開発に関する研究」として発表した。
第28回日本医学会総会(東京国際展示場、2011年9月18日)において「疾患特異的iPS細胞を用いた今後の医療」の教育講演を行った。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawagoe S, Nakahata T, Eto Y.,et ai.
Generation of induced pluripotent stem (iPS) cells derived from a murine model of Pompe disease and differentiation of Pompe-iPS cells into skeletal muscle cells.
Mol Genet Metab. , 104 , 123-128  (2011)
原著論文2
Murata Y, Nakahata T, Heike T.,et ai.
Rapid diagnosis of FHL3 by flow cytometric detection of intraplatelet Munc13-4 protein.
Blood , 118 (5) , 1225-1230  (2011)
原著論文3
Tanaka N.,  Nakahata T., Heike T.,et ai.
High incidence of NLRP3 somatic mosaicism in chronic infantile neurological cutaneous and articular syndrome patients; the results of an international multicenter collaborative study.
Arthritis Rheuma. , 63 (11) , 3625-3632  (2011)
原著論文4
Kato I, Niwa Ishikawa F, Nakahata T.
Identification of hepatic niche harboring human acute lymphoblastic leukemic cells via the SDF-1/CXCR4 axis.
PLoS One , 6 (11) , 27042-  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
2015-05-21

収支報告書

文献番号
201128005Z