制御性T細胞治療による臨床肝移植における免疫寛容誘導法の開発

文献情報

文献番号
201126020A
報告書区分
総括
研究課題名
制御性T細胞治療による臨床肝移植における免疫寛容誘導法の開発
課題番号
H22-免疫・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤堂 省(北海道大学 大学院医学研究科 移植外科学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 奥村 康(順天堂大学大学院医学研究科)
  • 垣生 園子(順天堂大学医学部)
  • 寺岡 慧(国際医療福祉大学熱海病院)
  • 場集田 寿(順天堂大学医学部)
  • 山下 健一郎(北海道大学大学院医学研究科 移植外科学講座)
  • 清野 研一郎(北海道大学遺伝子病制御研究所 免疫生物分野)
  • 上本 伸二(京都大学大学院医学研究科 外科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,167,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
移植患者は拒絶反応制御の為に、免疫抑制剤を生涯服用しなければならず、感染症・発癌・薬剤による副作用等の危険性に常に晒され、医学的にも又、医療経済の上からも重要な問題である。従って、これ等の問題を払拭するためには、免疫抑制剤を中止してもグラフトが正常に機能する、いわゆる「免疫寛容の誘導」が必須である。本研究では肝移植患者において、制御性T細胞を用いた細胞治療による免疫寛容誘導法の確立が目的である。
研究方法
肝移植患者を対象とし、レシピエントおよびドナーより成分採血法にて採取した末梢単核球細胞(PBMC)を抗CD80抗体および抗CD86抗体存在下に2週間共培養することでドナー抗原特異的な制御性T細胞を誘導し、細胞治療を行う。グラフト機能、肝生検病理所見や各種モニタリング法を用い免疫状態を検討しながら免疫抑制剤を漸減し、最終的に免疫抑制剤を中止する。
結果と考察
生体肝移植患者8例において本治療法を施行した。症例3まではPBMCを用い、抗CD80および抗CD86抗体存在下に制御性T細胞を誘導した。症例4以降ではこれにレシピエント脾細胞を加え細胞量の増加を図った。本培養法により8例中7例において制御性T細胞が高率に誘導され、特にCD4+CD25+Foxp3+ T細胞は培養開始時に比べ2.7から8.8倍へ上昇した。また、in vitroにおいて培養細胞を添加することでドナー抗原に対するMLRは抑制された。肝移植後はステロイド・MMF・カルシニューリン阻害剤(CNI)3剤で免疫抑制を開始し、術後13日目に培養細胞を輸注した。培養細胞輸注に伴う副作用は認められなかった。8症例中、術後3ヶ月以内に3例で拒絶反応が認められたが、2例は免疫抑制剤中止もしくは減量のさなかであり、拒絶も軽微であった。6ヶ月以上経過した6症例中、全例がCNI単剤で免疫抑制が維持されており、術後1年以上経過した3症例は、CNI週2回のみの投与で肝機能は良好に経過している。
結論
生体肝移植症例8例において、制御性T細胞を用いた新しい免疫抑制療法の臨床試験を施行した。抗CD80・CD86抗体存在下にPBMCを共培養することで制御性T細胞は高率に誘導され、細胞輸注に伴う副作用を認めなかった。6ヶ月以上経過した全例において免疫抑制の減量に成功しており、術後1年以上経過した3例は極少量のCNIのみ服用で拒絶反応は見られず、免疫寛容誘導が期待される。

公開日・更新日

公開日
2012-06-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201126020Z