文献情報
文献番号
201126018A
報告書区分
総括
研究課題名
純化自己幹細胞移植術による難治性自己免疫疾患治療の免疫再生メカニズムに関する研究
課題番号
H22-免疫・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
赤司 浩一(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 堀内孝彦(九州大学 大学院医学研究院)
- 宮本敏浩(九州大学病院)
- 新納宏昭(九州大学病院)
- 塚本 浩(九州大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
31,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
自己免疫疾患の中には進行性の間質性肺炎や皮膚硬化を呈し、治療抵抗性で予後不良の疾患群が依然として存在する。これらの病態への新規治療法として、難治性自己免疫疾患23例に対し自己造血幹細胞移植(自己HSCT)を施行した。本年度の研究では、1) 移植症例について5年間にわたる有効性を評価する、2) 移植症例における再構築リンパ球分画の経時的変化の解析やT細胞受容体レパトアの多様性の解析、遺伝子発現プロファイル解析等により、本治療法の有効性のメカニズムを明らかにする事を目的とする。
研究方法
対象はSSc19例、皮膚筋炎3例で自己HSCT後5年間の有効性を評価した。免疫学的再構築の解析対象はCD34純化自己HSCTを施行したSSc11例で、治療開始前、自己HSCT直前、自己HSCT1-60ヶ月後にリンパ球亜分画の実数を測定した。T細胞受容体レパトアの多様性の解析ではSSc患者6例において自己HSCT前後のTCR Vβレパトア分布および相補性決定領域3(CDR3)サイズ分布解析を行った。SSc患者末梢血リンパ球を8分画に分け、遺伝子発現プロファイル解析を施行した。
結果と考察
自己HSCT後、皮膚硬化、間質性肺炎の改善や自己抗体の低下等多くの症例で臨床的寛解が得られ、その効果は5年間持続した。SScに対する自己HSCT 後の5年生存率は89%、また5年無増悪生存率は65%で、海外と同等以上の成績であった。自己HSCT後の免疫学的再構築において、SSc患者では自己HSCT後5年間Th1/Th2バランスはTh1優位が持続し、長期間にわたる有効性との関連が示唆された。TCRレパトアの多様性の解析ではSSc患者において治療前は一部のVβのCDR3サイズがoligoclonalまたはmonoclonalな分布を示したが、自己HSCT後にTCRレパトアの多様性が有意に回復した。遺伝子発現プロファイル解析ではSSc患者リンパ球各亜分画において健常人とは遺伝子発現プロファイルが異なり、自己HSCT後に正常化する傾向が認められた。
結論
難治性自己免疫疾患に対する自己HSCTの臨床効果は5年間持続した。HSCT後のTh1/Th2バランスにおけるTh1優位の免疫再構築、TCRレパトアの多様性の回復、リンパ球の遺伝子発現プロファイルの正常化等が臨床的寛解の誘導および維持に関連していると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2012-06-07
更新日
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