ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立

文献情報

文献番号
201125036A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法の確立
課題番号
H23-肝炎・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 溝上 雅史(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 江口 晋(長崎大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 藤堂 省(北海道大学 大学院医学研究科)
  • 里見 進(東北大学 病院)
  • 具 英成(神戸大学 医学研究科)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学 大学院生命科学研究部)
  • 古川 博之(旭川医科大学 医学部)
  • 矢永 勝彦(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 國土 典宏(東京大学 医学系研究科)
  • 島田 光生(徳島大学 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 北川 雄光(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤原 俊義(岡山大学 医歯薬学総合研究科)
  • 永野 浩昭(大阪大学 医学系研究科)
  • 調 憲(九州大学 病院)
  • 大段 秀樹(広島大学 医歯薬学総合研究科)
  • 竹内 正弘(北里大学 薬学部)
  • 赤澤 宏平(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 森田 智視(横浜市立大学 附属市民総合医療センター)
  • 山中 竹春(独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) 腫瘍統計学研究室)
  • 武冨 紹信(北海道大学 医学研究科)
  • 副島 雄二(社会福祉法人恩賜財団済生会支部福岡県済生会福岡総合病院 外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
14,740,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウイルスを原因とする肝硬変に対する究極の治療法として肝移植が広く普及し、その長期成績も向上した。しかし、C型肝炎ウイルスは移植直後から再感染し、その後のIFN+RBV治療の効果は不十分であり新たな治療法の開発が急務である。この課題を克服することはC型肝炎を原因とした末期肝不全患者にとって残された最後の大きな関門である。
研究方法
本研究の目的は「ゲノムワイド関連解析を用いた革新的な肝移植後肝炎ウイルス再感染予防・治療法を確立」することである。今回我々はこの研究課題に対し、ゲノムワイド関連解析(GWAS)を応用する。今回多施設から収集した多数の検体をもとにIFN治療効果予測因子としてIL28B遺伝子SNP解析の有用性を検討するとともに、貧血等の副作用、HBワクチン感受性などの移植後ウイルス性肝炎制御に関わる新たなSNP領域を同定するためGWAS解析を行う予定である。
結果と考察
IL28B遺伝子多型解析が可能であったレシピエント77例のうちTT群は54名、TG/GG群は23名で、各々VR率75.9% vs 43.8%(p=0.006)、SVR率54.9% vs 26.1%(p=0.02)と、いずれも有意にTT群で良好な治療成績が得られた。ドナーにおいても、TT群(n=35)とTG/GG群(n=18)のVR率、SVR率は各々77.1% vs 38.9%(p=0.006)、51.5% vs 14.8%(p=0.05)と有意にTT群でIFN治療が奏効していた。両者の併用解析では、レシピエント、ドナー両者ともにTTであるとVR率86%と良好な成績であったが、Gを含む群ではVR率30-40%程度に留まっていた。
 肝移植後の生存率は、非代償性肝硬変のレシピエントの状態が、比較的良好状態で肝移植術を施行した方が明らかに高いことが分かっているが、この場合ドナーのリスクなどを考えると、肝移植後の肝炎制御率というのが大きく肝移植の適応判断に関わってくる。IL-28BがT/Tであれば、より積極的に肝移植を行い、インターフェロン治療を行うことが、患者QOLの向上および医療費の抑制につながることが予想される。
結論
現状に於いて、ドナーおよびレシピエントのIL-28BのSNPを測定することにより、C型肝炎に対する肝移植後のインターフェロン感受性を概ね予測することが可能である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201125036Z