肝炎に関する全国規模のデータベース構築に関する研究

文献情報

文献番号
201125012A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎に関する全国規模のデータベース構築に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 祖父江 友孝(国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 国際臨床研究センター)
  • 高橋 祥一(広島大学病院 消化器・代謝内科)
  • 酒井 明人(金沢大学医学部附属病院 光学医療診療部)
  • 井上 泰輔(山梨大学大学院医学工学総合研究部 第1内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
28,041,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の肝炎ウイルスキャリアに関する全国規模データベースと言えるものは、日本肝癌研究会による全国原発性肝癌追跡調査が挙げられるくらいで、人的・財政的問題から継続的に維持することが困難であった。
研究方法
インターフェロン療法に対する医療費助成を平成20年4月以降に受け、治療効果判定がすでに可能なB型・C型肝疾患患者を対象とし、年齢、性別、肝病変進行度、ウイルス型、ウイルス量、治療薬剤、副作用の出現状況、および最終的治療効果等に関する臨床情報の収集を、全国41都道府県の協力の下に開始した。肝炎情報センターでは、CD-Rに保存されたPDFファイル又は紙媒体からスキャナを用いてPDF化したファイルの患者診療情報をサーバにアップロード、電子化し、各都道府県の行政担当者あてにデータ、ならびに上記の評価項目に関する解析結果を2ヶ月毎に送付した。
結果と考察
C型7,696例についての検討結果では、1)性別:男女ほぼ同数。2)年齢分布:60歳代が最多。3)治療歴:初回治療5,498人(71.4%)、再治療2,017人。4)治療状況:投与完遂82.6%、投与中止16.8%で、投与完遂率は年齢が高齢化するにつれて低下。5)ウイルス学的判定:投与完遂した6,355例における治療効果は著効66.2%、再燃21.4%、無効11.2%であった。6)ウイルス型・量の内訳:1型・高ウイルス量4,669人(60.7%)、2型・高ウイルス量1,944人(25.3%)。7)ウイルス学的治療効果(投与完遂例):1型・高ウイルス量に対するリバビリン併用療法による著効率は初回治療60.1%、再治療49.4%。8)地域差に関する検討:ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の非著効に関与する因子は、女性、65歳以上、1型、高ウイルス量、再治療、開始前ALT低値、開始前血小板数低値で、地域差はなかった。一方、地域により、患者年齢の中央値は57~64歳、高齢者(65歳以上)比率は18.6~41.1%と有意差を認めた。再治療例の占める比率にも地域差があり、さらに、投与中止率に関与する因子を検討したところ、女性、65歳以上、1型、開始前血小板数低値、および地域差が抽出された。
結論
C型慢性肝疾患に対するインターフェロン治療効果に関するデータベース構築はほぼ軌道に乗っており、ほぼ満足すべき成績を全国的に上げていることが確認された。しかし、患者の受療状況には地域差の存在する可能性が示唆されており、今後、患者実態に即した指標も取り込んだ詳細な解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201125012B
報告書区分
総合
研究課題名
肝炎に関する全国規模のデータベース構築に関する研究
課題番号
H21-肝炎・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
正木 尚彦(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 泉 並木(武蔵野赤十字病院 消化器科)
  • 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 祖父江 友孝(独立行政法人国立がん研究センター がん対策情報センター)
  • 新保 卓郎(独立行政法人国立国際医療研究センター 国際臨床研究センター)
  • 高橋 祥一(広島大学病院 消化器・代謝内科)
  • 酒井 明人(金沢大学医学部附属病院 光学医療診療部)
  • 井上 泰輔(山梨大学大学院医学工学総合研究部 第1内科)
  • 今村 雅俊(独立行政法人国立国際医療研究センター 国府台病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の肝炎ウイルスキャリアに関する全国規模データベースと言えるものは、日本肝癌研究会による全国原発性肝癌追跡調査が挙げられるくらいで、人的・財政的問題から継続的に維持することが困難であった。
研究方法
1)インターフェロン療法に対する医療費助成を平成20年4月以降に受け、治療効果判定がすでに可能なB型・C型肝疾患患者を対象とし、年齢、性別、肝病変進行度、ウイルス型、ウイルス量、治療薬剤、副作用の出現状況、および最終的治療効果等に関する臨床情報の収集を、全国41都道府県の協力の下に開始した。2)インターフェロン治療における診療アクセス改善策に関する後ろ向き研究として、治療導入時の形態によって治療効果、安全性に差があるかを14施設の協力で検討した。
結果と考察
1)肝炎情報センターでは、すでに8,000例以上の治療効果判定報告書を収集し、解析結果を協力自治体へ2ヶ月毎に送付するシステムを構築、稼働させている。1型・高ウイルス量に対するリバビリン併用療法による著効率(投与完遂例)は初回治療60.1%、再治療49.4%ときわめて良好で、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の非著効に関与する因子を多変量解析で検討すると、女性、65歳以上、1型、高ウイルス量、再治療、開始前ALT低値、開始前血小板数低値が抽出され、地域差は有意でなかった。しかし、地域により、患者年齢の中央値は57~64歳、高齢者(65歳以上)比率は18.6~41.1%と有意差を認めた。再治療例の占める比率にも地域差があり、さらに、投与中止率に関与する因子を検討したところ、女性、65歳以上、1型、開始前血小板数低値、および地域差が抽出された。2)入院導入と外来導入では、薬剤アドヒアランス、ウイルス学的治療効果に全く有意差はなく、治療中止に至る率も入院導入17.6%、外来導入9.8%で、むしろ後者の方で低率であった。
結論
C型慢性肝疾患に対するインターフェロン治療効果に関するデータベース構築はほぼ軌道に乗っており、満足すべき成績を全国的に上げていることが確認された。肝臓専門医が関与すれば、少なくとも2剤併用療法までは外来導入でも安全に施行しうる。一方、患者の受療状況には地域差の存在する可能性が示唆されており、今後、患者実態に即した指標も取り込んだ詳細な解析が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-06-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201125012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
肝炎情報センターと全国41自治体肝炎対策部署との間に、双方向性の患者データ送受信システムを構築しえた。2ヶ月毎に解析結果をフィードバックすることにより、各自治体における肝炎対策の向上へリアルタイムに貢献している。
臨床的観点からの成果
現行のペグインターフェロン・リバビリン併用療法の治療成績は全国的に均霑化されていることが確認されたが、患者の受療状況、すなわち、患者年齢の中央値、65歳以上の高齢者比率、インターフェロン再治療率、および、治療完遂率などの指標に関しては、少なからず地域差の存在することを明らかにした。平成24年度以降は新規研究班として、このデータベース構築を継続するとともに、全国を9ブロックに分けて同様の検討を行い、地方圏差の存在することを見出した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
ペグインターフェロン・リバビリン併用療法に関しては、外来導入でも十分に安全であり、著効率も担保されていることを明らかにし得たことから、インターフェロン治療に対する診療アクセス改善を目指す行政の方針を後押しした。平成24年度からの新規研究班では、「投与完遂率、治療効果における地方圏差」の要因を探索するとともに、成績の劣る地方については肝炎対策推進室が主導するブロック会議へ参加し、問題提起をすることが可能となった。
その他のインパクト
副研究として実施した「インターフェロン治療における診療アクセス改善策に関する後ろ向き研究」の内容は、2010年2月16日発行の朝日新聞医療面に大きく採りあげられた。データの二次利用として、75歳以上の高齢者におけるインターフェロン治療の費用対効果が担保されていることも確認した。現在、英文誌に投稿中であるが、今後、研究代表者が運用する肝炎情報センターホームページ上での公開も視野に入れている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
第20回日本薬剤疫学会学術総会(分担佐藤)追加
学会発表(国際学会等)
6件
ISPOR(分担新保)、APASL2013(代表正木)、分担佐藤1件追加
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の外来導入の安全性、有効性に関するエビデンス;北海道ブロック会議(2014.5.26)、東北ブロック会議(2015.10.31)開催など。
その他成果(普及・啓発活動)
12件
千葉県肝疾患診療連携拠点病院連絡協議会 (6回)、拠点病院主催の医療従事者向け研修会(盛岡、旭川、大阪、愛媛各1回、和歌山2回)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
正木尚彦、西村 崇、忌部 航 他
ペグインターフェロン治療における診療アクセス改善策に関する多施設共同研究~前向き研究と後ろ向き研究からの考察~
肝臓 , 51 (7) , 348-360  (2010)
原著論文2
Masaki N, Yamagiwa Y, Shimbo T, et al.
Regional disparities in interferon therapy for chronic hepatitis C in Japan: a nationwide retrospective cohort study
BMC Public Health , 15 , 566-  (2015)
10.1186/s12889-015-1891-2
原著論文3
Sato I, Shimbo T, Kawasaki Y, et al.
Comparison of Peginterferon alfa-2a and alfa-2b for treatment of patients with chronic hepatitis C: a retrospective study using the Japanese Interferon Database
Drug Design, Development and Therapy , 9 , 283-290  (2015)
10.2147/DDDT.S72245
原著論文4
Sato I, Shimbo T, Kawasaki Y, et al.
Efficacy and safety of interferon treatment in elderly patients with chronic hepatitis C in Japan: A retrospective study using the Japanese Interferon Database
Hepatol Res , 45 (8 ) , 829-836  (2015)
10.1111/hepr.12419

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-01-20

収支報告書

文献番号
201125012Z