文献情報
文献番号
201125010A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルスと代謝・免疫系の相互作用に関する包括的研究
課題番号
H21-肝炎・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 岡上 武(大阪府済生会吹田病院)
- 熊田博光(国家公務員共済組合 連合会虎の門病院 )
- 石坂信和(大阪医科大学)
- 水落利明(国立感染症研究所)
- 勝二郁夫(神戸大学大学院医学系研究科)
- 森屋恭爾(東京大学医学部附属病院)
- 松浦善治(大阪大学微生物病研究所)
- 小原恭子(熊本大学生命科学研究部)
- 古庄憲浩(九州大学大学院医学研究院)
- 中本安成(福井大学医学部)
- 相崎英樹(国立感染症研究所)
- 四柳 宏(東京大学医学部附属病院)
- 斎藤 泉(東京大学医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
73,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国においては、180万人以上の人がC型肝炎ウイルス(HCV)、また120万人以上の人がB型肝炎ウイルス(HBV)に感染しており、慢性肝炎から肝硬変、肝癌へと到る連鎖に苦しんでいる。しかしながら、HCV感染症、HBV感染症には肝臓以外の臓器あるいは全身性の病態が存在しうる。C型肝炎には脂質代謝異常や糖代謝異常・インスリン抵抗性が合併しやすく、慢性肝炎の進行に影響を与えることも示唆されてきている。本研究においては、肝炎ウイルスと代謝・免疫系の相互作用について、臨床的研究と基礎的研究の両面から病態・原因の究明を目指している。更に、これら代謝性変化の肝病変と患者の予後に対する影響を明らかにし、臨床的な健康障害の状況を明らかにして国民の健康増進に寄与することを目的とする。
研究方法
C型慢性肝炎患者の疫学データ、倫理委員会承認の後に同意書の得られた血清、肝組織、白血球、マウスモデル、培養細胞(HCVレプリコン、JFH1増殖HuH-7細胞、コア蛋白発現HepG2細胞等)を用いて検討を行なった。
結果と考察
鉄代謝、肝脂肪化、インスリン抵抗性がC型肝炎の進展に与える影響、肥満度とHCV感染症病態の関係、HCV感染による糖代謝の変化、脂質代謝とHCV増殖の相互作用について次第に明らかにされてきた。C型肝炎においては、インスリン抵抗性や肝脂肪化などの代謝異常が起こりやすく、慢性肝炎進行の決定因子ともなっている。したがって、C型肝炎患者は肥満をさけるべきであるが、C型肝炎患者にとっての肥満の定義は不明である。通常の日本人と同様にBMI 25でよいのか否かも明らかではない。この点を明らかにするため多施設共同研究を行なった。また、HCV感染とB細胞リンパ腫の発生、成因おけるHCVの役割についても新しい知見が得られた。本年度の検討によって、C型肝炎、B型肝炎における代謝・免疫系との相互作用について解明が進展した。
結論
当初の研究計画をほぼ達成し、C型肝炎が全身性疾患であることを明らかにした。C型肝炎を全身疾患として捉えるという概念のもつ社会的な意義は大きいと考えられる。特に、代謝異常の惹起とそれによるC型肝炎病態の修飾・予後変化が明らかにされたことの意義は大きく、C型肝炎患者における代謝異常をコントロールすることによって、予後、QOLの改善が期待される。
公開日・更新日
公開日
2012-06-01
更新日
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