HIV感染症の疫学的研究:メタ分析とコホート研究

文献情報

文献番号
201124012A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の疫学的研究:メタ分析とコホート研究
課題番号
H21-エイズ・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野内 英樹(結核予防会複十字病院)
  • 本田 美和子(独立行政法人 国立国際医療研究センター)
  • 堀 成美(聖路加看護大学 看護学部)
  • 小柳 愛(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,240,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はHIV感染症の疫学を推進するために、1)国内外のHIV感染予防に関する保健介入リストに関するメタ分析を行い、最新のHIV感染予防に関するエビデンスを提供し、2)HIV感染者コホートを用いて、HIV感染予防介入による検査並びに治療への促進・阻害要因を継続的に分析し早期検査並びに早期・継続的治療を進展させる為のエビデンスを発信していく。
研究方法
エイズ予防保健介入のメタ分析およびモデリングは、小柳(東大)とギルモー(東大)が担当する。コホート研究等の縦断研究のためのタイ国のフィールドの整備と保健情報システムの構築には野内(複十字病院)、渋谷(東大)、情報分析は、小柳(東大)とギルモー(東大)が行う。エイズ感染症の専門家である医長の本田(国立国際医療センター)は、最新の臨床知見をもとに研究戦略を策定する。エイズ感染症の専門家である堀(聖路加看護大)は、プロジェクトの教育的立場で人材育成を行う。
結果と考察
メタ分析においては、世界標準のコクラン共同計画との連携研究を原則とし、最終年度は、途上国および先進国のセックスワーカーのコンドーム使用の行動変容に関するコクランレビューを2本出版し、構造やコミュニティーレベルでの行動介入のHIV感染予防に関するコクラン共同計画のプロトコールを出版した。これらは、エイズ感染有病率を把握した上で、我が国で主に行われている行動変容のみではなく、生物医学的介入への変更を検討すべき時期に来ていることを示している。また、数理モデルによる日本の今後30年間のHIV感染率予測の結果から、MSMへのエビデンスに基づいた介入が必要なことが明らかになり、現在のHIV感染予防戦略の再検討が必要であることが示唆された。一方、コホート研究においては、国際共同研究チームがHIVと結核対策プログラム介入効果評価の為のフィールド・ラボラトリー情報システム(検体バンクを含む包括的データベース)を構築し、複数の実証研究を行った。
結論
国内外におけるHIV感染予防のための保健介入の効果のエビデンスの構築、継続的なエビデンスの提供とモニタリングと評価の重要性をエイズ予防領域において推進することができたと考えられる。本研究班が行ってきた理論的研究と実践的フィールド研究の組み合わせは、今後も我が国が戦略的に重点的に取り組むべき課題であると思われる。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124012B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染症の疫学的研究:メタ分析とコホート研究
課題番号
H21-エイズ・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野内 英樹(結核予防会複十字病院)
  • 森 臨太郎(元 東京大学 大学院医学系研究科)
  • 本田 美和子(独立行政法人 国立国際医療研究センター)
  • 堀 成美(聖路加看護大学)
  • 小柳 愛(東京大学 大学院医学系研究科)
  • スチュアート ギルモー(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は二つの大きな目的を持つ:1)2009年に作成した国内外のエイズ予防に関する保健介入リストに基づき、系統的かつ詳細なメタ分析を行い、最新のエイズ予防に関するエビデンスを提供する。2)昨年度に準備してきたコホート研究やランダム化臨床試験を行うための研究フィールドとエイズ保健情報システムを用いて、エイズ予防介入による検査並びに治療への促進・阻害要因を継続的に分析し早期検査並びに早期・継続的治療を進展させる為のエビデンスを発信していく。
研究方法
エイズ予防保健介入のメタ分析は森(東大)およびモデリングは、ギルモー(東大)が担当する。コホート研究等の縦断研究のためのタイ国のフィールドの整備と保健情報システムの構築には野内(複十字病院)、渋谷(東大)、情報分析は、小柳(東大)が行う。エイズ感染症の専門家である医長の本田(国立国際医療センター)は、最新の臨床知見をもとに研究戦略を策定する。エイズ感染症の専門家である堀(聖路加看護大)は、プロジェクトの教育的立場で人材育成を行う。
結果と考察
国民の税金を最大限有効に活用し、インパクトのある政策を立案するためには、各種HIV感染症予防介入戦略の費用対効果の情報が不可欠である。特に、系統的レビューの結果からは行動変容介入はHIV感染率には効果が低いことが明らかになった。特に、これまでのキャンペーンを中心とした介入のみならず、世界的トレンドである生物医学的介入の我が国における導入について検討し、保健所を中心とした検査体制や診療所や病院を介した介入をも分析の対象に含めた包括的予防戦略を立案していく必要がある。
結論
今後の展望としては、3つの対策が考えられる。まず第一に、基礎・臨床・社会医学のみならず、数理統計学、経済学、公共政策学などとの連携によるエイズ対策の効果を科学的に把握するシステムの構築を行うことである。UNAIDS等とも連携し、エイズ感染者の推計などを行うために、既存の動向委員会と連携しながらも独立した組織で行うことが望ましい。次に、HIV感染に関するリスク要因を抽出し、1次予防、2次予防に有効で費用対効果の高い保健介入案の系統的レビューを行うことである。最後は、これら2つの情報を基にした介入研究の実施である。予算状況の厳しい中であるからこそ、すべてを可視化することで、我が国のHIV予防のためのエイズ検査体制と予防戦略の再構築を行う時が来ている。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
メタ分析では、HIVの個別施策層であるMSMやセックスワーカーに関する質の高いエビデンスを構築し、コクラン共同計画などの国際雑誌に出版し、国際的な学術の場において意義は大きい。また、日本エイズ学会においてシンポジウム参加、学会発表など、研究班の取り組む質の高いエビデンスの構築と疫学調査によるモニタリングと評価の重要性に関して発表し国内外に啓発を行うことができた。
臨床的観点からの成果
系統的レビューの結果から、行動変容介入は、HIV感染率・発症率に効果があまりみられないことが明らかになり、日本も効果があるといわれている生物医学的介入をハイリスク群へ行うかどうかを検討する必要性が明らかになった。コホートの方では、人口レベルで結核患者での体重を指標にした介入の治療成績への改善の可能性を明らかにすることができた。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
カナダ政府のThe Canadian Institutes of Health Research (CIHR) Institute of Gender and Health (IGH)のウェブサイトhttp://www.cihr-irsc.gc.ca/e/42414.htmlに、本研究班の研究結果のサマリーが掲載された。
その他のインパクト
2009年の日本エイズ学会では、公開セミナーを開催した。2010年の日本エイズ学会のシンポジウムに、シンポジストとして参加した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
メタ分析においては、世界標準のコクラン共同計画との連携研究を原則とし、質の高いエビデンスを構築した。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
9件
日本エイズ学会、感染症学会、日本結核病学会、日本臨床検査医学学会、日本疫学学会等で発表を行った。
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Koyanagi A, Humphrey JH, Ntozini R, et al.
Morbidity among human immunodeficiency virus-exposed but uninfected, human immunodeficiency virus-infected, and human immunodeficiency virus-unexposed infants in Zimbabwe before availability of highly active antiretroviral therapy.
Pediatric Infectious Disease Journal , 30 (1) , 45-51  (2011)
原著論文2
Koyanagi A, Ruff AJ, Moulton LH, et al.
Postpartum plasma CD4 change in HIV-positive women: implications for timing of HAART initiation.
AIDS Research and Human Retroviruses , 26 (5) , 547-552  (2010)
原著論文3
Koyanagi A, Shibuya K.
What do we really know about adult mortality worldwide?
Lancet , 375 (9727) , 1668-1670  (2010)
原著論文4
Koyanagi A, Humphrey JH, Moulton LH, et al.
Effect of early exclusive breastfeeding on morbidity among infants born to HIV-negative mothers in Zimbabwe.
The American Journal of Clinical Nutrition , 89 (5) , 1375-1382  (2009)
原著論文5
Koyanagi A, Humphrey JH, Moulton LH, et al.
Predictive value of weight loss on mortality of HIV-positive mothers in a prolonged breastfeeding setting.
AIDS Research and Human Retroviruses , 27 (11) , 1141-1148  (2011)
原著論文6
Ota E, Wariki WMV, Mori R, et al.
Behavioral interventions to reduce the transmission of HIV infection among sex workers and their clients in high-income countries.
Cochrane Database of Systematic Reviews , 12  (2011)
原著論文7
Wariki WMV, Ota E, Mori R, et al.
Behavioral interventions to reduce the transmission of HIV infection among sex workers and their clients in low- and middle-income countries.
Cochrane Database of Systematic Reviews , 2  (2012)
原著論文8
Nababan H, Ota E, Wariki WMV, et al.
Structural and community-level interventions for increasing condom use to prevent HIV and other sexually transmitted infections.(Protocol).
Cochrane Database of Systematic Reviews , 11  (2011)
原著論文9
Shibuya K, Hashimoto H, Ikegami N, et al.
Future of Japan's system of good health at low cost with equity: beyond universal coverage.
Lancet , 378 (9798) , 1265-1273  (2011)
原著論文10
Llano R, Kanamori S, Kunii O, et al.
Re-invigorating Japan's commitment to global health: challenges and opportunities.
Lancet , 378 (9798) , 1255-1264  (2011)
原著論文11
Kario K, Nishizawa M, Hoshide S, et al.
Development of a disaster cardiovascular prevention network.
Lancet , 378 (9797) , 125-127  (2011)
原著論文12
Ikegami N, Yoo BK, Hashimoto H, et al.
Japanese universal health coverage: evolution, achievements, and challenges.
Lancet , 378 (9796) , 1106-1115  (2011)
原著論文13
Ikeda N, Saito E, Kondo N, et al.
What has made the population of Japan healthy?
Lancet , 378 (9796) , 1094-1105  (2011)
原著論文14
Kantipong P, Yamada N, Nampaisan O, et al.
Predictors of antiretroviral therapy regimen changes in Northen Thailand.(in press)
Bulletin of the Department of Medical Services  (2011)
原著論文15
Pitabut N, Mahasirimongkol S, Yanai H, et al.
Decreased plasma granulysin and increased interferon-gamma concentrations in patients with newly diagnosed and relapsed tuberculosis.
Microbiology and Immunology , 55 (8) , 565-573  (2011)
原著論文16
Ridruechai C, Sakurada S, Yanai H, et al.
Association between circulating full-length osteopontin and IFN-gamma with disease status of tuberculosis and response to successful treatment.
The Southeast Asian Journal of Tropical Medicine and Public Health , 42 (4) , 876-889  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201124012Z