HIVの感染防止、AIDS発症防止に関する免疫学的基礎研究

文献情報

文献番号
201124008A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの感染防止、AIDS発症防止に関する免疫学的基礎研究
課題番号
H21-エイズ・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森 一泰(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 和浩(日本ビーシージー製造株式会社日本BCG研究所)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター )
  • 高橋 秀宗(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 庄司 省三(熊本大学大学院生命科学研究部・生化学)
  • 玉村 啓和(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)
  • 志田 壽利(北海道大学遺伝子病制御研究所)
  • 三浦 智行(京都大学ウイルス研究所感染症モデル研究センター)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
  • 高橋 秀実(日本医科大学微生物免疫学教室)
  • 高久 洋(千葉工業大学工学部・分子生物学()
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,736,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVワクチンの基礎研究として1)感染制御に働く宿主応答の解明、2)プライム・ブーストワクチンの開発、3)広域中和抗体誘導、4)細胞性免疫増強、5)ワクチン評価モデル開発に関する研究を行う。
研究方法
1)感染防御モデルとして、糖鎖変異SIV感染アカゲザルを用い、Heterologous SIVチャレンジ実験を行い、宿主応答を解析した。
2)BCG、ワクシニアワクチン株をプライムワクチン、ブーストワクチンとして開発し、ワクチンの有効性を検討した。
3)広域中和抗体誘導を目的にa) 抗原の化学合成、b) HIV-1様粒子から脂質膜を取り除いたCore-Envの中和抗体誘導について検討した。c) 腸粘膜組織での感染を中和するワクチンを開発し、効果を検討した。d) 中和抗体エピトープについてV3、V1/V2ループ間の相互作用の影響について解析した。
4)抗酸菌分泌抗原Ag85B遺伝子をSHIVに組み込み、細胞性免疫増強について解析した。腸粘膜組織におけるHIV感染について解析した。粘膜組織HIV感染における樹状細胞、CD4+NKT細胞の役割ついて解析した。Gag発現バキュロウイルスの細胞性免疫誘導について解析した。
5)ワクチン評価に用いるSHIV-ENVのR5指向性、中和抗体抵抗性を検討した。
結果と考察
)防御免疫に関し1)多様な変異ウイルスに対する感染抑制効果、2)慢性感染期に働くCD8+細胞についてSIV特異性、3)初期感染期の標的細胞の感染抑制機構を示す結果が得られた。
2)Gag、Env gp120及びRev-Tat-Nefを抗原にBCG株3種でプライミングし、組換えワクシニアウイルスLC16m8D株でブーストするワクチンは、インド産アカゲザルへのSIV感染に対する抑制効果を示した。
3)gp41- C34の3量体、CXCR4のN端領域、細胞外ループ等は中和抗体を誘導した。Core-Envは、HIV-1A, AG, B, Dに対する中和抗体を誘導した。交叉免疫抗原は抗ENV抗体と抗CCR5抗体価を維持した。V1/V2ループとV3ループ間にリガンド非結合―結合状態を通じた相互作用が存在し、定常状態とは質的に異なっていた。
4)SHIV感染の制御効果からAg85Bの細胞性免疫アジュバント効果が示された。粘膜組織における樹状細胞、NKT細胞HIV感染の重要性が示唆された。rBV-gagはマウス樹状細胞を活性化し、自然免疫・適応免疫応答を誘導した。
5)CCR5指向性を獲得したSHIV-MK1を順化したSHIV-MK38は中和抵抗性を示した。
結論
当初の計画はほぼ達成された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124008B
報告書区分
総合
研究課題名
HIVの感染防止、AIDS発症防止に関する免疫学的基礎研究
課題番号
H21-エイズ・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森 一泰(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松尾 和浩(日本ビーシージー製造株式会社 日本BCG研究所)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所 エイズ研究センター )
  • 高橋 秀宗(国立感染症研究所 感染病理部)
  • 庄司 省三(熊本大学大学院生命科学研究部 生化学)
  • 玉村 啓和(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所)
  • 志田 壽利(北海道大学 遺伝子病制御研究所)
  • 三浦 智行(京都大学ウイルス研究所 感染症モデル研究センター)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 高橋 秀実(日本医科大学 微生物免疫学教室)
  • 高久 洋(千葉工業大学工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVワクチン開発のための基礎研究として1)感染防御に働く宿主応答の解明、2)プライム・ブーストワクチンの開発、3)広域中和抗体誘導、4)細胞性免疫増強、5)ワクチン評価モデル開発に関する研究を行う。
研究方法
1)糖鎖変異SIV感染ザルを用い、感染防御に関わる宿主応答の解析を行った。
2)BCG、ワクシニアワクチン株を用いプライム・ブーストワクチンを開発し、ワクチン有効性を検討した。
3)広域中和抗体誘導を目的に a)中和抗体、抗原の性質、b) 抗原の化学合成、c)エピトープgp41 MPERを標的とするワクチンd) 粘膜免疫ワクチン(Senju-Vaccine)を開発した。
4)抗酸菌分泌抗原Ag85B遺伝子をSHIVに組み込み、細胞性免疫増強について解析した。腸粘膜組織におけるHIV感染について解析した。バキュロウイルスを用いたワクチについて検討した。
5)ワクチン評価に用いるSHIV-ENV作成法について検討した。
結果と考察
1)糖鎖変異SIVはHIVの多様性、高変異性に対応する防御免疫を誘導した。慢性感染期の免疫はIL-15応答性のCD8+T細胞、NK細胞が主体であった。初期感染では標的細胞の感染抑制機構が示唆された。
2)Gag、Env、Rev-Tat-Nefを発現するBCGでプライミング、組換えワクシニアによるブーストはSIV感染を抑制した。
3)国内感染者抗体遺伝子にはgermline免疫グロブリンの嗜好性等の特徴が見出された。gp41のヘリカル領域のペプチド、CD4 /コレセプター領域、CD4 mimic 等を創製し、中和抗体誘導等を確認した。HIV-1様粒子から脂質膜を取り除いたCore-Envは、HIV-1A, AG, B, Dに対する中和抗体を誘導した。M細胞デリバリ、抗ENV抗体とCCR5抗体を誘導させる抗原をもつSenju-Vaccineは、変異・多様性に有効な粘膜免疫を誘導した。
4)BCGの分泌抗原Ag85Bのアジュバント効果が示された。HIV感染における樹状細胞、CD4+NKT細胞の重要性が示唆された。rBV-gag感染樹状細胞は自然・適応免疫を誘導した。
5)相同組換えを利用し遺伝的多様性を再構築できる新規組換えウイルス作製技術を確立した。作成したR5指向性SHIV-MK38は中和抵抗性を示した。
結論
当初の計画はほぼ達成された。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
低病原性糖鎖変異株(生ワクチン)が誘導する感染防御の研究からHIV感染抑制のメカニズムとして感染標的細胞の供給抑制の機構の存在が示唆された。HIV感染症の治癒を実現する新規の治療法、ワクチン開発が可能となる。安全性が確認されたBCG、ワクシニアをベクターとするプライム・ブーストワクチンの防御免疫誘導能を示唆するデータが得られた。有機合成化学による中和抗体誘導ワクチン創製技術が確立した。HIVワクチン開発のための基盤となる成果が得られた。
臨床的観点からの成果
該当なし
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
65件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
86件
学会発表(国際学会等)
34件
その他成果(特許の出願)
9件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
新規な組換えBCGワクチン
詳細情報
分類:
特許番号: 2011-199422
発明者名: 松尾和浩、水野 悟、川原 守、保富康宏、渡邉健太
権利者名: 松尾和浩、水野 悟、川原 守、保富康宏、渡邉健太
国内外の別: 国内
特許の名称
遺伝子導入用ウイルスベクターの製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 2011-025234
発明者名: 保富康宏
権利者名: 保富康宏
国内外の別: 国内
特許の名称
HIV立体構造認識抗体誘導ペプチド
詳細情報
分類:
特許番号: 2011-082813
発明者名: 玉村啓和
権利者名: 玉村啓和
国内外の別: 国内
特許の名称
HIV立体構造認識抗体誘導ペプチド抗原、及びその合成方法
詳細情報
分類:
特許番号: 13/319,813
発明者名: 玉村啓和
権利者名: 玉村啓和
国内外の別: 米国
特許の名称
腸管免疫賦活剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5114713号
発明者名: 庄司 省三、三隅 > 将吾、中山 大介
権利者名: 国立大学法人 熊本大学
出願年月日: 20061031
取得年月日: 20121026
国内外の別: 国内
特許の名称
ワクチン剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第5428017号
発明者名: 庄司 省三、三隅 > 将吾、高宗暢暁
権利者名: 国立大学法人 熊本大学
出願年月日: 20070323
取得年月日: 20131213
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Naruse TK, Okuda Y, Mori K, et al.
ULBP4/RAET1E is highly polymorphic in the Old World monkey
Immunogenetics , 63 , 501-509  (2011)
原著論文2
Nagai-Fukataki M, Ohashi T, Hashimoto I, et al.
Nuclear and cytoplasmic effects of human CRM1 on HIV-1 production in rat cells.
Genes Cells , 16 (2) , 203-216  (2011)
原著論文3
Takizawa M, Miyauchi K, Urano E, et al.
Regulation of the susceptibility of HIV-1 to a neutralizing antibody KD-247 by nonepitope mutations distant from its epitope.
AIDS , 25 (18) , 2209-2216  (2011)
原著論文4
Watanabe T, Urano E, Miyauchi K,et al.
The Hematopoietic Cell-Specific Rho GTPase Inhibitor ARHGDIB/D4GDI Limits HIV Type 1 Replication.
AIDS Res Hum Retroviruses , 27  (2011)
原著論文5
Aoki T, Miyauchi K, Urano E,,et al.
Protein transduction by pseudotyped lentivirus-like nanoparticles.
Gene Ther. , 18 (9) , 936-941  (2011)
原著論文6
Ohtaki N, Takahashi H, Kaneko K, et al.
Purification and concentration of non-infectious West Nile virus-like particles and infectious virions using a pseudo-affinity Cellufine Sulfate column.
J Virol Methods. , 174 , 131-135  (2011)
原著論文7
Nomura W, Masuda A, Ohba K,et al.
Effects of DNA binding of the zinc finger and linkers for domain fusion on the catalytic activity of sequence-specific chimeric recombinases determined by a facile fluorescent system.
Biochemistry. , 51 (7) , 1510-1517  (2012)
原著論文8
Nomura W, Hashimoto C, Ohya A,et al.
A synthetic C34 trimer of HIV-1 gp41 shows significant increase in inhibition potency.
ChemMedChem. , 7 (2) , 205-208  (2012)
原著論文9
Narumi T, Komoriya M, Hashimoto C,A,et al.
Conjugation of cell-penetrating peptides leads to identification of anti-HIV peptides from matrix proteins.
Bioorg Med Chem. , 20 (4) , 1468-1474  (2012)
原著論文10
Akahara Y, Matsuoka S, Kuwano T, et al.
Dominant induction of vaccine antigen-specific cytotoxic T lymphocyte responses after simian immunodeficiency virus challenge.
Biochem Biophys Res Commun. , 408 (4) , 615-619  (2011)
原著論文11
Nakamura M, Takahara Y, Ishii H,
Major histocompatibility complex class I-restricted cytotoxic T lymphocyte responses during primary simian immunodeficiency virus infection in Burmese rhesus macaques.
Microbiol Immunol. , 55 (11) , 768-773  (2011)
原著論文12
Inagaki S, Takahashi M, Fukunaga Y,
HTLV-I-infected breast milk macrophages inhibit monocyte differentiation to dendritic cells.
Viral Immunol. , 25 (2) , 106-116  (2012)
原著論文13
Negishi Y, Wakabayashi A, Shimizu M, et al.
Disruption of maternal immune balance maintained by innate DC subsets results in spontaneous pregnancy loss in mice.
Immunobiology. , 217 (10) , 951-961  (2012)
原著論文14
Chang MO, Suzuki T, Suzuki H,
HIV-1 Gag-virus-like particles induce natural killer cell immune responses via activation and maturation of dendritic cells.
J Innate Immun. , 4 (2) , 187-200  (2011)
原著論文15
Sugiyama R, Nishitsuji H, Furukawa A, et al.
Heat shock protein 70 inhibits HIV-1 Vif-mediated ubiquitination and degradation of APOBEC3G.
J Biol Chem. , 286 (12) , 3367-3371  (2011)
原著論文16
Nishitsuji H, Yokoyama M, Sato H, et al.
Identification of amino acid residues in HIV-1 reverse transcriptase that are critical for the proteolytic processing of Gag-Pol precursors.
FEBS Lett. , 585 (21) , 3372-3377  (2011)
原著論文17
Sugimoto C, Nakamura S, Hagen SI, et al.
Glycosylation of SIV influences immune-tissue targeting during primary infection that leads to immunodeficiency or viral control.
J. Virol. , 86 , 9323-9336  (2012)
原著論文18
Mayumi N, Watanabe E, Norose Y, et al
E-cadherin interactions are required for Langerhans cell differentiation.
Eur. J. Immunol. , 43 (1) , 270-280  (2013)
原著論文19
Harimoto H, Shimizu M, Nakagawa Y, et al.
Inactivation of tumor-specific CD8+ CTLs by tumor-infiltrating tolerogenic dendritic cells.
Immunol. Cell Biol. , 91 (11) , 545-555  (2013)
原著論文20
Matsumura J, Shimizu M, Omi K, et al.
A possible origin of emerged HIV-1 after interrupting anti-retroviral therapy.
Biomed. Res., , 35 (1) , 1-8  (2014)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124008Z