HIV感染防御免疫誘導に関する研究

文献情報

文献番号
201124007A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染防御免疫誘導に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 三浦 聡之(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
  • 森川 裕子(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 横山 勝(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 寺原 和孝(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
35,640,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染拡大はグローバルな視点で取り組み克服すべき国際的重要課題である。本研究は、この問題解決に必要な予防エイズワクチン開発を目的とし、HIV複製抑制に結びつく防御免疫反応の選択的誘導のための論理基盤確立を目指すものである。我々が開発を進めているセンダイウイルス(SeV)ベクターを用いた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導エイズワクチンは、エイズモデルで初めて有効性を示した点で注目され、接種者全員への効果は期待できないものの集団レベルでのHIV感染拡大抑制効果を期待したワクチンとして国際共同臨床試験計画が進展中である。本研究では、このCTL誘導ワクチンの最適化と、さらに有効な次世代ワクチン開発に結びつく基礎研究を進めることとした。
研究方法
平成23年度には、CTL誘導ワクチン抗原最適化に向けた研究として、HIV Gag蛋白動態の解析、HIV感染者の解析およびエイズモデルにおけるワクチンによるCTLメモリー誘導効果の解析を行った。また、中和抗体標的のHIV Env gp120の構造計算を進めた。
結果と考察
CTL誘導ワクチン抗原最適化に向けた研究では、有望な標的抗原であるHIV Gag蛋白の主な分解経路はプロテアソーム経路であることを示す結果を得た。一方、邦人HIV感染者の解析で、CTL逃避変異株の国内での広がりを示唆する結果を得た。さらに、エイズモデルにおける解析で、ワクチンによるCTL誘導がHIV曝露後のCTL優位性に大きく影響すること、つまり、CTL誘導ワクチンの選択抗原の違いが曝露後のワクチン抗原特異的CTL反応と非ワクチン抗原特異的CTL反応の協調バターンに大きく影響し、HIV複製制御の有無を左右しうることを示す結果を得た。中和抗体に関する研究では、標的となるHIV Envの構造計算により、gp120三量体モデルを構築し、V1/V2ドメインが抗V3中和抗体のエピトープへのアクセス障壁となりうることを示す結果を得た。
結論
ワクチンによるCTLメモリー誘導がHIV曝露後のCTL反応およびHIV複製に及ぼす影響を明らかにした。本研究で得られた結果は、予防エイズワクチンの選択抗原の最適化に結びつく重要な成果である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201124007B
報告書区分
総合
研究課題名
HIV感染防御免疫誘導に関する研究
課題番号
H21-エイズ・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
  • 三浦 聡之(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
  • 森川 裕子(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 横山 勝(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 寺原 和孝(国立感染症研究所 免疫部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染拡大はグローバルな視点で取り組み克服すべき国際的重要課題である。本研究は、この問題解決に必要な予防エイズワクチンの開発を目指し、HIV複製抑制に結びつく防御免疫反応の選択的誘導のための論理基盤確立を進めることを目的とした。我々が開発を進めているセンダイウイルス(SeV)ベクターを用いた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘導エイズワクチンは、エイズモデルで初めて有効性を示した点で注目され、集団レベルでのHIV感染拡大抑制効果を期待したワクチンとして国際共同臨床試験計画が進展中である。本研究では、このCTL誘導ワクチンの最適化と、さらに有効な次世代ワクチン開発に結びつく基礎研究を推進した。
研究方法
(1) CTL誘導ワクチンのデリバリーシステムの研究、(2) CTL誘導抗原選択法の研究、および (3) 中和抗体反応についての研究を行った。
結果と考察
(1) 抗SeV中和抗体存在下でのSeVベクター経鼻接種のCTL誘導能を明らかにし、臨床応用の障壁となりうる抗ベクター抗体の問題については克服できることを示す結果を得た。(2) 有望なCTL標的抗原であるGag蛋白の分解経路の解析系を樹立し、主な分解経路はプロテアソーム経路であることを示す結果を得た。邦人HIV感染者の解析では、CTL逃避を反映するHLA関連変異の同定を進めるとともに、CTL逃避変異株の広がりを示唆する結果を得た。エイズモデルではGag特異的CTLに加えVif特異的CTLが高いウイルス複製抑制能を有する可能性を見出した。また、多様性に富むHIVに対し、ワクチンにより誘導された一つのエピトープ特異的CTLメモリーでも曝露HIVを認識することができれば有効性を発揮しうることを明らかにした。さらに、CTL誘導ワクチンで選択する抗原の違いが、曝露後のワクチン抗原特異的CTL反応と非ワクチン抗原特異的CTL反応の協調バターンに大きく影響し、HIV複製制御の有無を左右しうることを示す極めて重要な結果を得た。(3) 中和抗体の標的となるHIV Env三量体モデルを構築し、V1/V2ドメインが抗V3中和抗体のエピトープへのアクセス障壁となりうることを示唆する結果を得た。
結論
本研究結果は、予防エイズワクチンのデリバリーシステム最適化と選択抗原最適化に結びつく重要な成果である。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
エイズモデルにおいて、ワクチンによるCTLメモリー誘導がHIV曝露後のCTL反応およびウイルス複製に及ぼす影響を明らかにしたことは、専門的・学術的に極めて意義が大きい。本研究で得られた抗原提示に関わるGag蛋白動態、CTL逃避変異および各種抗原特異的CTLの有効性に関する知見は、HIV複製の制御に結びつくCTL反応の理解に直結する重要かつ斬新な成果である。特に、Gag抗原特異的CTLに加え、Vif 抗原特異的CTLの有効性を示した結果は新規性が高い。
臨床的観点からの成果
抗ベクター抗体存在下のセンダイウイルスベクターワクチン経鼻接種の有効性およびCTLメモリー誘導効果を示した結果は特に重要である。エイズワクチン開発は国際的最重要課題の一つであるが、本研究の成果は、現在、国際共同臨床試験計画が進展中のセンダイウイルスベクターエイズワクチンの有効性の確立に結びつくことに加え、さらに有効なエイズワクチン開発に結びつく抗原選択法に知見を与えるものである。
ガイドライン等の開発
特に無し。
その他行政的観点からの成果
センダイウイルスベクターエイズワクチン国際共同臨床試験計画が進展中であり、本研究成果はその進展に貢献しうる。
その他のインパクト
研究内容等について、読売新聞社会欄(平成23年1月6日)に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
60件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
94件
学会発表(国際学会等)
66件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yamamoto T, Iwamoto N, Yamamoto H, et al.
Polyfunctional CD4+ T-cell induction in neutralizing antibody-triggered control of simian immunodeficiency virus infection.
J Virol , 83 (11) , 5514-5524  (2009)
原著論文2
Tsukamoto T, Takeda A, Yamamoto T, et al.
Impact of cytotoxic-T-lymphocyte memory induction without virus-specific CD4+ T-cell help on control of a simian immunodeficiency virus challenge in rhesus macaques.
J Virol , 83 (18) , 9339-9346  (2009)
原著論文3
Suyama M, Daikoku E, Goto T, et al.
Reactivation from latency displays HIV particle budding at plasma membrane, accompanying CD44 upregulation and recruitment.
Retrovirology , 6 , 63-  (2009)
原著論文4
Naruse TK, Chen Z, Yanagida R, et al.
Diversity of MHC class I genes in Burmese-origin rhesus macaques.
Immunogenetics , 62 , 601-611  (2010)
原著論文5
Iwamoto N, Tsukamoto T, Kawada M, et al.
Broadening of CD8+ cell responses in vaccine-based simian immunodeficiency virus controllers.
AIDS , 24 (18) , 2777-2787  (2010)
原著論文6
Inagaki N, Takeuchi H, Yokoyama M, et al.
A structural constraint for functional interaction between N-terminal and C-terminal domains in simian immunodeficiency virus capsid proteins.
Retrovirology , 7 , 90-  (2010)
原著論文7
Fujimoto K, Takano J, Narita T, et al.
Simian Retrovirus type D infection in a colony of cynomolgus monkeys.
Comp Med , 60 (1) , 51-53  (2010)
原著論文8
Haraguchi H, Sudo S, Noda T, et al.
Intracellular localization of human immunodeficiency virus type 1 Gag and GagPol products and virus particle release: Relationship with the Gag-to-GagPol ratio.
Microbiol Immunol , 54 , 734-746  (2010)
原著論文9
Yokoyama M, Mori H, Sato H.
Allosteric regulation of HIV-1 reverse transcriptase by ATP for nucleotide selection.
PLoS ONE , 5  (2010)
原著論文10
Saito A, Nomaguchi M, Iijima S, et al.
Improved capacity of a monkey-tropic HIV-1 derivative to replicate in cynomolgus monkeys with minimal modifications.
Microbes Infect , 13 , 58-64  (2011)
原著論文11
Takahara Y, Matsuoka S, Kuwano T, et al.
Dominant induction of vaccine antigen-specific cytotoxic T lymphocyte responses after simian immunodeficiency virus challenge.
Biochem Biophys Res Commun , 408 , 615-619  (2011)
原著論文12
Naruse TK, Okuda Y, Mori K, et al.
ULBP4/RAET1E is highly polymorphic in the Old World monkey.
Immunogenetics , 63 , 501-509  (2011)
原著論文13
Nakamura M, Takahara Y, Ishii H, et al.
Major histocompatibility complex class I-restricted cytotoxic T lymphocyte responses during primary simian immunodeficiency virus infection in Burmese rhesus macaques.
Microbiol Immunol , 55 , 768-773  (2011)
原著論文14
Moriya C, Horiba S, Kurihara K, et al.
Intranasal Sendai viral vector vaccination is more immunogenic than intramuscular under pre-existing anti-vector antibodies.
Vaccine , 29 , 8557-8563  (2011)
原著論文15
Saito Y, Naruse TK, Akari H, et al.
Diversity of MHC class I haplotypes in cynomolgus macaques.
Immunogenetics , 64 , 131-141  (2012)
原著論文16
Ishii H, Kawada M, Tsukamoto T, et al.
Impact of vaccination on cytotoxic T lymphocyte immunodominance and cooperation against simian immunodeficiency virus replication in rhesus macaques.
J Virol , 86 (2) , 738-745  (2012)
原著論文17
Takeuchi H, Ishii H, Kuwano T, et al.
Host cell species-specific effect of cyclosporine A on simian 1 immunodeficiency virus replication.
Retrovirology , 9 , 3-  (2012)
原著論文18
Nakayama K, Nakamura H, Koga M, et al.
Imbalanced production of cytokines by T cells associates with the activation/exhaustion status of memory T cells in chronic HIV type 1 infection.
AIDS Res Hum Retroviruses , 27  (2011)
原著論文19
Urano E, Kuramochi N, Ichikawa R, et al.
Novel postentry inhibitor of human immunodeficiency virus type 1 replication screened by yeast membrane-associated two-hybrid system.
Antimicrob Agents Chemth , 55 (9) , 4251-4260  (2011)
原著論文20
Terahara K, Yamamoto T, Mitsuki Y, et al.
Fluorescent reporter signals, EGFP and DsRed, encoded in HIV-1 facilitate the detection of productively infected cells and cell-associated viral replication levels.
Front Microbiol , 2 , 280-  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124007Z