血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植のための組織構築

文献情報

文献番号
201124004A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植のための組織構築
課題番号
H21-エイズ・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
兼松 隆之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上平  憲(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 臨床検査医学病態解析診断部門)
  • 山下 俊一(福島県立医科大学)
  • 安岡  彰(長崎大学病院 感染制御教育センター )
  • 澄川 耕二(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 麻酔・蘇生科学)
  • 中尾 一彦(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 消化器病態制御学)
  • 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所)
  • 八橋  弘(独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター 臨床研究センター  )
  • 江口  晋(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 移植・消化器外科学)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 臨床研究センター)
  • 酒井 英樹(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 腎泌尿器病態学)
  • 國土 典宏(東京大学大学院医学系研究科外科学 専攻臓器病態外科学肝胆膵外科 )
  • 市田 隆文(順天堂大學醫學部附属静岡病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
45,433,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者(以下重複感染患者)に対する肝移植の組織を構築するにあたり、実際に肝移植の適応となる患者がどの程度存在するのか、また、同患者群に特徴的な病態を把握することにより、これらの症例に対する、より適切な肝移植適応基準および診療ガイドラインを作成することを目的とした。

研究方法
1)肝移植候補者の受け入れとHIV/HCV重複感染者の肝機能評価のための検診
薬害による重複感染者のうち、自ら希望し同意の得られた患者に対して全国からの患者を受け入れ、主に肝機能を中心とした全身検査を行った。
2)肝移植の適応
重複感染患者の肝移植に関するコンサルトを受け付けると共に、肝移植候補者に対しては、入院の上、評価を行い、適応例にはこれを実施することとした。また前述の如く本疾患患者での肝機能評価のための検診を行いそのデータベースを構築し、HCV単独感染患者に対する肝移植適応をそのまま適用可能か否かも考察し、必要であれば新たな適応基準を提案・確立することとした。
結果と考察
30例に検診を行い、27例(90%)が肝硬変の程度の指標であるChild分類Aであり、黄疸や腹水を認めることなく肝機能良好であると判断された。しかし、CT検査では21例(70%)が肝炎もしくは肝硬変の所見であり、17例(57%)が脾腫を認めた。また、内視鏡検査で8例(26%)に食道静脈瘤を認め、総合的に「みかけの肝機能は良好であるが、潜在的に門脈圧亢進症の程度が強い肝障害が多くみられる」という結果であった。この結果を受けてエイズ診療拠点病院である国立国際医療研究センター(ACC)、横浜市立市民病院、国立病院機構大阪医療センター、国立病院機構九州医療センターの4施設のChild分類Aの症例146例の予後を調査したところ、門脈圧亢進症の間接的指標である血小板数15万/μL未満の症例は有意に予後不良であり、やはりChild分類Aであっても門脈圧亢進症の所見が見られる症例は早期に肝移植を考慮すべきと思われた。
結論
重複感染患者に対してはHCV単独感染者に比して早期に肝移植を考慮すべきであるが、HCV単独感染による肝硬変に対する移植にと比較して周術期のARTによるHIV治療、血友病に対する周術期の凝固因子管理、等に高度の専門的介入が必要である。本研究で得られた様々な知見をもとに、重複感染患者に対する肝移植の診療ガイドラインを作成した。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-01-17
更新日
-

文献情報

文献番号
201124004B
報告書区分
総合
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植のための組織構築
課題番号
H21-エイズ・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
兼松 隆之(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 上平  憲(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 臨床検査医学病態解析診断部門)
  • 山下 俊一(福島県立医科大学)
  • 安岡  彰(長崎大学病院 感染制御教育センター)
  • 澄川 耕二(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科麻酔・蘇生科学)
  • 中尾 一彦(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科消化器病態制御学)
  • 有吉 紅也(長崎大学 熱帯医学研究所 )
  • 八橋  弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
  • 江口  晋(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科移植・消化器外科)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター臨床研究センター)
  • 酒井 英樹(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科腎泌尿器病態学)
  • 國土 典宏(東京大学大学院医学系研究科外科学専攻臓器病態外科学肝胆膵外科学)
  • 市田 隆文(順天堂大學醫學部附属静岡病院 消化器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植適応を検討するにあたり、実際に適応となる患者がどの程度存在するのか、また、同患者群に特徴的な病態を把握することにより、これらの症例に対するより適切な肝移植適応基準および診療ガイドラインを作成することを目的とした。
研究方法
どの医療施設でも簡便に測定可能な血小板数でChild-Aの重複感染患者の予後を比較した。また、肝機能および画像診断を中心とした検診業務を長崎大学病院で30例実施した。
結果と考察
従来、重複感染患者に対する肝移植成績は思わしいものではなかったが、これは周術期管理の難しさもさることながら、移植適応判断の困難さからタイミングが遅れることが多かったからと推測される。今後、適応を的確に判断すること、また本研究で作成した診療ガイドラインを参考に周術期管理を行うことにより、重複感染患者に対する肝移植の予後が改善することを期待する。本研究の結果をもとに、我々が提案した肝移植適応基準に合致する症例が脳死肝移植の待機患者として登録され、今回作成した診療ガイドラインにより周術期管理を行えば、重複感染患者の予後改善に大きく寄与する可能性がある。
結論
エイズ診療拠点病院である4施設より集積した146例のChild分類A症例の予後を血小板数で分けたところ、15万/μl未満の症例は有意に予後不良であった。HIV/HCV重複感染患者ではChild Aでも門脈圧亢進症の所見がみられたら早期に肝移植を検討すべきである。HIV/HCV重複感染患者に対する肝移植の適応・周術期管理、術後フォローアップに関して組織構築に向けての基盤が出来上がった。

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201124004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究により、HIV/HCV重複感染患者ではChild-Aであっても、画像診断や肝予備能検査を追加すると門脈圧亢進症による脾腫、食道静脈瘤や血小板減少を認める症例が多いことが明らかとなった。実際に、どの医療施設でも測定可能な血小板数で肝機能良好な重複感染患者の予後を比較したところ、15万/μl未満の症例の生存率は有意に不良であった。以上より、重複感染患者では、おそらくARTによる肝障害が門脈圧亢進症というかたちで表れ、HCVによる肝細胞障害と相まって急速に肝不全が進行するものと思われる。
臨床的観点からの成果
現行の脳死肝移植適応基準では、Child-Aでは登録すらできない。今後、さらに簡便に測定可能な血小板数を参考にして重複感染患者の登録基準を検討する必要があると思われる。従来、重複感染患者に対する肝移植成績は芳しくなかったが、移植適応判断の困難さから手術のタイミングが遅れることが多かったからと推測される。今後、適応を的確に判断し、本研究で作成した診療ガイドラインを参考に周術期管理を行うことにより、同患者への肝移植の予後が改善することが期待される。

ガイドライン等の開発
『「HIV/HCV重複感染患者に対する肝移植」における医療従事者マニュアル』
第1版 平成21年(2009年)7月、
『「血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する肝移植の診療ガイドライン」』
第1版 平成24年(2012年)3月
その他行政的観点からの成果
現在、薬害によるHIV/HCV重複感染患者の大半がHCVによる肝不全で失われている現状があり、肝移植しか救命手段がない症例が増加傾向にある。本研究によりHCV単独感染患者よりも肝移植のタイミングを早める必要があることが明らかとなり、複雑な周術期管理も今回作成されたガイドラインによりマニュアル化される。重複感染患者が今後肝移植により救命されれば、行政的観点からも多大な効果が得られることとなる。
その他のインパクト
2011年3月20日「患者むしばむ重複感染-肝移植の選択肢与えたい-」長崎新聞掲載、
2011年「HIV/HCV重複感染者における肝機能フォローアップの重要性」長崎エイズ診療ネットワーク掲載、
2010年7月26日「移植治療のいま」西日本新聞掲載

発表件数

原著論文(和文)
32件
原著論文(英文等)
122件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
17件
学会発表(国内学会)
122件
20011年 20、2010年 96、2009年 6.
学会発表(国際学会等)
15件
2011年 8、 2010年 6、2009年 1.
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
欧文書籍:1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Eguchi S, Soyama A, Hidaka M, Takatsuki M,et al.
Liver transplantation for patients with human immunodeficiency virus and hepatitis C virus coinfection with special reference to hemophiliac recipients in Japan.
Surg Today , 41 (10) , 1325-1331  (2011)
原著論文2
西田聖剛、江口 晋、曽山明彦、高槻光寿、他
マイアミ大学でのHIV陽性患者に対する肝移植
The Journal of AIDS Research , 13 , 137-144  (2011)
原著論文3
江口 晋、高槻光寿、曽山明彦、村岡いづみ、他
後天性免疫不全症候群(AIDS)
外科 , 73 (12) , 1282-1287  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-26
更新日
2016-10-03

収支報告書

文献番号
201124004Z