文献情報
文献番号
201124002A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染妊婦とその出生児の調査・解析および診療・支援体制の整備に関する総合的研究
課題番号
H21-エイズ・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
和田 裕一(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 診療部)
研究分担者(所属機関)
- 喜多 恒和(奈良県立奈良病院)
- 外川 正生(大阪市立総合医療センター)
- 塚原 優己(国立成育医療研究センター)
- 吉野 直人(岩手医科大学医学部)
- 大島 教子(獨協医科大学医学部)
- 早川 智(日本大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
19,654,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国におけるHIV感染妊娠症例の完全把握と予防対策による母子感染の完全阻止、さらにHIV感染妊婦とその出生児の診療・支援体制の整備および母子感染予防対策の充実とその基盤となる基礎研究の成果を挙げることを目的とする。
研究方法
全国の産婦人科小児科標榜施設に対し妊婦HIV検査実施率およびHIV感染妊婦とその出生児の動向に関するアンケート調査(1次査)を行う。1次調査により得られた情報をもとに2次調査を行いデータベースを更新、疫学的臨床的解析を行う。冊子等を通じ感染者および医療者に必要な情報提供を行う。
結果と考察
全国病院調査で妊婦HIV検査率は平成23年度99.3%、HIV検査実施率上昇とともに偽陽性問題や確認検査の必要性、告知のタイミングなどHIV検査を取り巻く環境の変化がみられている。1次調査でのHIV感染妊婦報告数は28例、小児科2次調査でHIV感染妊婦から出生した児は16例で非感染11例、感染未確定・不明5例であった。データベースでの我が国のHIV感染妊婦は累計728例となった。HIV感染妊婦の近年の診療実績からHIV感染妊婦の診療に特化した拠点病院の再整備を提案。HIV感染児童児に対する告知支援冊子「この子の明日の健康のために」を作成した。新生児に対するAZT予防投与の影響について少数例であるが検討し細胞内での効果は予測より少ないことが確認された。
結論
「妊婦HIV検査実施率およびHIV感染妊婦とその出生児の動向に関する全国調査」は、わが国で唯一の周産期・小児HIV感染症に関する極めて詳細で貴重なデータであり、母子感染予防の基礎となるものである。「診療・支援体制整備に関する研究」群は、感染妊婦を差別することなく診療・支援を行えるように検査やマニュアルを整備してきた。HIV感染妊婦の早産時の地域連携がスムースに行えるよう検討したが、今後も全国的な調査解析・啓発活動が求められる。「わが国独自のHIV母子感染予防対策マニュアルの作成・改訂に関わる研究」では3年ごとに改訂を繰り返し、最新の情報を提供してきており、実際の診療に極めて有用となっている。基礎研究としては「HIV感染妊婦から生まれたHIV非感染児のミトコンドリアの評価」「脱落膜・胎盤局所免疫からみた HIV垂直感染の解析と予防に関する研究」および「HIV感染妊婦から出生した児に対するAZT予防投与における薬物動態と副作用に関する多施設共同研究」は、実際に臨床の場で解決して欲しい問題であり、数少ないわが国の症例では時間がかかるが今後とも重要な研究と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2014-05-26
更新日
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