パイエル板指向性分子を利用した経口ワクチンの開発

文献情報

文献番号
201123063A
報告書区分
総括
研究課題名
パイエル板指向性分子を利用した経口ワクチンの開発
課題番号
H23-新興・若手-024
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
渡利 彰浩(国立大学法人 大阪大学 大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 亮(帝京大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨今の新型インフルエンザの世界的流行でも明らかなように、依然として感染症は人類に立ちはだかる大きな脅威であり、感染症によって毎年2000万人の命が失われている。患者の生活の質・有効性・安全性を考慮すると、非侵襲性投与が可能であること、多くの感染性病原体の侵入門戸(粘膜面)における防御網を構築できること、生体内に侵入した病原体の排除活性をも有することから、『経口ワクチン』が理想的な感染予防法であると言える。しかしながら、消化酵素による分解を回避しつつ腸管粘膜免疫組織に抗原を効率良く送達しなければならず、ここに経口ワクチン開発の難しさがある。以上の背景を踏まえ本研究では、腸管粘膜免疫組織パイエル板にclaudin-4(CL-4)が高発現していることに着目し、独自のCL-4 指向性分子を有効活用することで、初めてのパイエル板指向性経口ワクチンを開発することを目的とする。
研究方法
従来のC-CPEに比してCL-4結合性に優れた新規CL-4 binderを作製し、モデル抗原である卵白アルブミン(OVA)と融合することで、粘膜ワクチン活性を解析した。また、疾病モデル抗原を用いたワクチン活性評価のための予備実験を行った。
結果と考察
平成23年度はCL-4への結合性に優れた新規CL-4 binderの作製、疾病モデル抗原を用いたワクチン活性評価のための予備実験を試み、以下の成果を得た。(1) 当グループが独自に開発したCL-4 binderであるC-CPEをprototypeとして用い、C-CPEのC末端側に存在しCL-4への結合性に重要なアミノ酸残基をランダムなアミノ酸に置換した、C-CPE 構造変異体ライブラリから、当グループが独自に確立したCL-4提示出芽バキュロウイルスを用いたCL-4 binderスクリーニング系を利用し、高結合性CL-4 binderを取得した。本binderにモデル抗原であるOVAを融合させた蛋白質は、既存のC-CPEを用いたものより高い免疫賦活化作用を有していた。(2) C-CPEと疾患関連抗原の融合タンパクによるワクチン活性評価の予備検討を行うため、HIVモデル抗原 (V3抗原)とC-CPEとの融合タンパクを作製した。
結論
本研究では、C-CPE構造変異体ライブラリからCL-4高結合性C-CPE変異体の取得に成功し、モデル抗原を融合させた新規CL-4 binderがワクチン活性に優れていていることを見出した。そこで、本binderを修飾したリポソームを作製することにより、経口ワクチン開発に資する抗原送達技術の開発を図る。

公開日・更新日

公開日
2012-06-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123063Z