潜在性抗酸菌感染症の病態機構の解明及び診断・治療・予防に関する研究

文献情報

文献番号
201123042A
報告書区分
総括
研究課題名
潜在性抗酸菌感染症の病態機構の解明及び診断・治療・予防に関する研究
課題番号
H23-新興・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 和夫(国立感染症研究所 免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 御手洗 聡(結核研究所 抗酸菌レファレンス部)
  • 松本 壮吉(大阪市立大学大学院医学研究科)
  • 杉田 昌彦(京都大学ウイルス学研究所)
  • 小出 幸夫(浜松医科大学)
  • 前倉 亮治(国立病院機構 刀根山病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
23,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
殆どの活動性結核は潜在性感染からの内因性再燃に起因している。結核を含めた潜在性抗酸菌感染機序の解明は新規診断法、抗結核薬やワクチン開発を促進し、結核制圧に寄与することが期待される。潜在性抗酸菌感染に関わる宿主および菌の分子機構を解明し、病態の理解、診断・治療やワクチン標的候補の探索を目的とした。
研究方法
抗酸菌遺伝子・蛋白質・脂質や糖脂質解析、薬剤感受性、宿主免疫応答、DNAワクチンの作製、潜在抗酸菌感染の臨床診断(酵素抗体法)を用いた。生命倫理、動物愛護や遺伝子組換実験など、規程に準拠し、機関承認を得た。利益相反はなかった。
結果と考察
長期培養結核菌(低酸素状態)は死菌と休眠生菌の混合物と考えられ、増殖期と異なる形態学的特徴を示した。休眠分子である抗酸菌DNA結合蛋白質は抗結核薬:isoniazid(INH)抵抗性に関与し、その機構はINH活性化酵素:KatGの発現抑制であった。休眠菌糖脂質に対する免疫応答で潜伏感染における意義を明らかにした。潜在結核菌感染者でT細胞優位な蛋白質を同定し、ワクチン抗原として有望である。他方、結核患者>潜在感染者>健常者で抗体価が上昇している蛋白質を同定し、抗体価は活動性結核と潜在感染の鑑別診断に応用可能性を示した。Mycobacterium avium complex(MAC)感染症の化学療法は血清MAC-GPL抗体価を有意に低下させ、抗体価は治療効果の指標となる。特筆事項として、1)研究分担者 松本 壮吉が「結核菌の病原性および増殖制御機構の分子遺伝学的解析と応用研究」により、平成23年 小林 六造 記念賞(日本細菌学会)を受賞し、2)平成23年8月、MAC-GPL診断キット(キャピリア; MAC抗体ELISA タウンズ)上市(保険点数:120点)された。感度:84%、特異度:100%、所要時間の大幅短縮:3時間(従来法:約1か月)、かつ、非侵襲性であり、MAC感染症の診療に有用である。
結論
・長期低酸素培養菌で生菌と死菌が混在していた。
・抗酸菌DNA結合蛋白質は休眠結核菌の薬剤抵抗性に関与していた。
・休眠抗酸菌脂質を同定し、BCG接種モルモットで宿主応答を解明した。
・休眠菌蛋白質に対するT細胞応答は潜在感染者で結核患者や健常者と比し上昇していた。
・MAC感染症の血清診断キットは保険医療の適用となった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123042Z