結核等抗酸菌感染症における生体防御及び抗菌制御を介した治療予防法の開発戦略

文献情報

文献番号
201123022A
報告書区分
総括
研究課題名
結核等抗酸菌感染症における生体防御及び抗菌制御を介した治療予防法の開発戦略
課題番号
H22-新興・一般-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
牧野 正彦(国立感染症研究所 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 宜親(名古屋大学大学院 医学部)
  • 田村 敏生(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 星野 仁彦(国立感染症研究所 感染制御部)
  • 竹田 潔(大阪大学大学院 医学部)
  • 河村 伊久雄(京都大学大学院 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
43,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ワクチンとして用いられてきたM. bovis BCGに抵抗性を示す結核菌及び多剤耐性結核菌に対応し、結核に対する国民の恐怖を拭い去るために発展性に富む開発研究を展開し、新しい予防法及び治療法を樹立する。
研究方法
免疫抑制性因子であるPD-1を欠損するマウスの高結核菌感受性(早期個体死、肺内結核菌の異常増殖)を誘導する責任因子の解明をCD4陽性T細胞を中心に行う。結核ワクチンの開発を目的として新規リコンビナントBCGを作出し、その免疫学的効果をin vitro及びマウス生体内で解析する。高齢者結核発症を抑制するCD8陽性キラーT細胞の分化・誘導に必須なCD4陽性ヘルパーT細胞を同定する。結核菌特異的新規ヌクレオチド加リン酸分解酵素(Rv2613c)の機能構造相関解析を行い、新規抗結核薬開発のターゲット分子を同定する。自然免疫応答に関与する分子群を欠損するマウスを作出し、結核菌感受性を解析する。
結果と考察
PD-1欠損マウスでは、病原性因子ESAT6特異的IFN-γ産生性CD4陽性T細胞が異常活性化し、結核菌の異常増殖・組織破壊・早期個体死を誘導していた。ウレアーゼ欠損BCGに結核菌由来MMP-IIとBCG由来のHSP70を連結して導入した新規リコンビナントBCG(BCG-DHTM)は、樹状細胞を強く活性化すると同時に、ヒト未感作CD4陽性及びCD8陽性T細胞を活性化し、大量のIFN-γ産生を誘導した。さらに、in vitro及びマウス生体内で効率的にメモリーT細胞を産生し、ワクチンとして用いると経気道感染した結核菌の肺内増殖を現行のBCGに比し有意に強く抑制した。高齢者結核発症を抑制するCD8陽性キラーT細胞の産生にはIL-17Fが不可欠であり、IL-17Fを産生するCD4陽性ヘルパーT細胞は、IFN-γ産生性ヘルパー亜集団とは異なる亜集団であった。Rv2613cは特異的な基質結合部位を有し、本部位に結合する基本的化合物7種類が同定された。新規抗結核薬の開発が可能となった。細胞質結核菌DNAを認識してIL-1の産生を誘導する自然免疫応答関与因子AIM2を欠損するマウスは、結核菌に対し高感受性を示し、結核菌感染を受けると早期に全例死亡した。
結論
結核に対する初回免疫ワクチン及び追加免疫ワクチン、さらに新しい抗結核薬の開発、自然免疫系を介した新しい結核治療法の開発が可能となった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201123022Z