動物由来クラミジアの自然界における存在様式の解明-比較ゲノム解析及び種特異的診断法の開発と実態調査

文献情報

文献番号
201123015A
報告書区分
総括
研究課題名
動物由来クラミジアの自然界における存在様式の解明-比較ゲノム解析及び種特異的診断法の開発と実態調査
課題番号
H21-新興・若手-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大屋 賢司(国立大学法人 岐阜大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福士 秀人(国立大学法人 岐阜大学 応用生物科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,128,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
オウム病クラミジアChlamydophila psittaciを始めとした、人獣共通感染症の原因となりうる動物由来クラミジアを対象とする。
1)動物由来クラミジアの遺伝子・血清診断法を開発する。
2)動物由来クラミジアの比較ゲノム解析により、種特異的診断法開発・自然界における存在様式解明のための技術基盤とする。
3)鳥類を始めとした野生・飼育動物における実態調査を行う。
研究方法
1.解読したMat116株配列を元に比較ゲノムの手法により設計した、クラミジア鑑別用のmultiplex PCR法、LAMP法の評価を行った。
2.これまでに樹立した検出系を用いて、鳥類133検体におけるクラミジア保有率の実態調査を行った。
3.精製クラミジアEB、クラミジア感染細胞よりRNAを調製し、クラミジアmRNAの、次世代シーケンサーを用いたRNA-seqを行った。
結果と考察
1.multiplex PCRは3種のクラミジアを同時に鑑別可能であった。
2.感度・特異性・簡便性に優れたC. psittaci検出用LAMPを樹立することができた。
3.鳥類におけるクラミジア保有率は約10.5%であった。
4.国内繁殖鳥では、輸入鳥に比べて陽性率が低い傾向が認められた。
5.RNA-seqにより精製EB、感染細胞それぞれからクラミジア由来RNAのリードを得ることができた。
6.C.psittaci近縁他種株の配列解析を引き続き行った。
結論
1.解読したゲノム配列情報を利用して以下の遺伝子検査系を樹立した。
a.動物クラミジアを鑑別可能なmultiplex PCR
b.C.psittaci種特異的なLAMP法
2.開発した診断法を用いた実態調査を継続中である。
3.本研究開始以前の調査よりも、国内繁殖鳥の陽性率が低下していた。
4.国内で検出されるC. psittaciは特有の遺伝子型に偏っているわけではないことが明らかとなった。
5.クラミジアのRNA-seqのデータのみならず、技術的な課題も明らかとなった。
6.C.psittaci近縁他種株の配列解析を引き続き行った。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201123015B
報告書区分
総合
研究課題名
動物由来クラミジアの自然界における存在様式の解明-比較ゲノム解析及び種特異的診断法の開発と実態調査
課題番号
H21-新興・若手-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大屋 賢司(国立大学法人 岐阜大学 応用生物科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福士 秀人(国立大学法人 岐阜大学 応用生物科学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
オウム病クラミジアChlamydophila psittaciを始めとした、人獣共通感染症の原因となりうる動物由来クラミジアを対象とする。
1)動物由来クラミジアの遺伝子・血清診断法を開発する。
2)動物由来クラミジアの比較ゲノム解析により、種特異的診断法開発・自然界における存在様式解明のための技術基盤とする。
3)鳥類を始めとした野生・飼育動物における実態調査を行う。
研究方法
1.ゲノム解読の対象として、C.psittaci国内分離株、強毒株、近縁他種2株を選択した。
2.国内分離株に関しては、Roche、Illumina2種類の次世代シーケンサーを用いて決定した。
3.近縁他種株の配列決定には、先に決定した国内分離株の配列をレファレンスに用いて作業を行っている。
4.血清診断法の評価は、倫理審査に諮った患者血清および感染動物血清を用いて評価した。
5.遺伝子検出法は、決定した配列情報を元に標的を選抜し、定法に従って評価した。
6.開発した診断法を用いて、動物由来クラミジアの実態調査を行った。
7.クラミジアの遺伝子発現解析を目的に、クラミジアアレイとRNA-seqを検討した。
結果と考察
1動物由来クラミジアのゲノム解析
C. psittaci国内集団発生事例分離株配列の完全決定。
C. psittaci Mat116株近縁他種株配列の解読(進行中)。
2 動物由来クラミジアの遺伝子・血清診断法の開発
C. psittaci多型膜タンパク質Pmpを抗原としたELISAの系を樹立。
C. psittaciリアルタイムPCRの系を樹立。
multiplex PCRによる各種クラミジア鑑別系、LAMP法によるC. psittaci検出系を樹立。
3自然界における動物由来クラミジアの実態調査
飼いネコにおけるC. felisの血清疫学調査(陽性率は約17%)。
国内の鳥計487検体におけるクラミジア保有状況検査(陽性率は4.1%)。
4C. psittaci遺伝子発現プロファイル解析
感染細胞内でおこるイベントを解析するための技術的基盤を構築できた。
結論
研究期間を通じて1.動物由来クラミジアのゲノム解析、2)動物由来クラミジアの遺伝子・血清診断法の開発、3.自然界における動物由来クラミジアの実態調査、4.クラミジアの遺伝子発現プロファイル解析に取り組んだ。特にゲノム解読に関しては、実施期間内に終了できなかったことが悔やまれるが、診断系に関しては、予想通りの効果を挙げることができた。課題遂行を通じて得た知見を元に、引き続き動物由来クラミジアの実態調査と、病原性・宿主域の解析を進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2012-06-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201123015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特異性に優れたネコクラミジア、オウム病クラミジア血清診断法を開発した。
各種動物クラミジアに関して、感度・特異性にすぐれたリアルタイムPCR、multiplex PCR、LAMP法を開発した。
ネコクラミジア、オウム病クラミジアの実態調査を行い、国内飼育動物における保有状況調査を行った。
ネコクラミジアは、国内飼育ネコに普遍的に分布していた。
鳥類におけるクラミジア陽性率は過去の調査より低下していた。
オウム病クラミジア国内集団発生事例分離株の全塩基配列を完全決定した。
臨床的観点からの成果
基礎・応用研究であり、臨床研究でないので該当しない。
ガイドライン等の開発
オウム病集団発生事例時におけるガイドライン制定(H13、H17)
農林水産省病性鑑定指針改訂作業(H19;オーム病、牛クラミジア症、流行性羊流産、コクシエラ症)
農林水産省病性鑑定指針改訂作業(H25;オーム病、牛クラミジア症、流行性羊流産、コクシエラ症)
その他行政的観点からの成果
動物由来感染症ハンドブック2010改訂作業(厚生労働省)
鳥展示施設等におけるクラミジア検査と飼育衛生の指導を行っている。
(近年では、岐阜県獣医師会、臨床獣医師、厚生労働省および地方自治体からの依頼)
研究活動を通じて、以下の役職を任命され、獣医師養成、獣医微生物学分野の教育に貢献している。
農林水産省獣医事審議会専門委員(H22-23)
日本獣医学会微生物分科会教育部会委員(H22-現在に至る)
その他のインパクト
オウム病を始めとした、人獣共通感染症、家畜衛生上重要な感染症に関する市民向け講演を積極的に行っている(H21:6件、H22:2件、H24:2件)。

発表件数

原著論文(和文)
4件
クラミジア以外の人獣共通感染症および鳥類の感染症に関するものも含む。
原著論文(英文等)
19件
クラミジア以外の人獣共通感染症および鳥類の感染症に関するものも含む。
その他論文(和文)
7件
クラミジア以外の人獣共通感染症および鳥類の感染症に関するものも含む。
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
8件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
8件
市民向け講演を積極的に行っている(H21:6件、H22:2件)。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okuda H, Ohya K, Shiota Y et al.
Detection of Chlamydophila psittaci by Using SYBR Green Real-Time PCR.
J. Vet. Med. Sci. , 73 (2) , 249-254  (2011)
原著論文2
Ohya K, Okuda H, Maeda S el al.
Using CF0218-ELISA to distinguish Chlamydophila felis-infected cats from vaccinated and uninfected domestic cats.
Vet. Microbiol. , 146 (3) , 366-370  (2010)
原著論文3
Murao W, Wada K, Matsumoto A el al.
Epidemiology of Chlamydophila caviae-like Chlamydia Isolated from Urethra and Uterine Cervix.
Acta Med Okayama , 64 (1) , 1-9  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-07-06
更新日
2016-06-27

収支報告書

文献番号
201123015Z