自閉性障害における遺伝子変異がもたらすシナプス機能障害と小胞体ストレス誘導についての研究

文献情報

文献番号
201122087A
報告書区分
総括
研究課題名
自閉性障害における遺伝子変異がもたらすシナプス機能障害と小胞体ストレス誘導についての研究
課題番号
H22-精神・若手-020
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神保 恵理子(自治医科大学 医学部・小児科学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳発達障害である自閉性障害は、社会的な大きな問題であり、治療法の確立が緊急な課題である。しかしながら、分子病態が未だ十分に把握されていない。本研究は自閉性障害に見出された遺伝子変異産物(神経接着蛋白CADM1)が誘導する小胞体ストレスシグナルによりUPRが引き起こすシナプス機能タンパクの膜輸送障害の関係を明らかにし、自閉性障害の統一的な病態解明を目的とする。
研究方法
①CADM1変異蛋白の機能障害についての解析:自閉性障害患者とその家族に見出したCadm1の変異を培養細胞系及びラット初代神経細胞系に導入し、神経マーカーあるいは小胞体ストレスマーカーを用いた免疫染色を行い局在の違いを観察した。②Cadm1欠損マウスにおける行動解析:Cadm1欠損マウスを用いて、不安様行動、攻撃行動、社会性行動などの行動解析を行った。③Cadm1欠損マウスの超音波音声解析および組織免疫染色:哺乳時の親と仔を別離させ音声を測定し、仔マウスの脳について免疫染色を行った。
結果と考察
Cadm1欠損マウスは、行動異常、Social Communicationの異常を示し、シナプス機能不全が自閉性障害の病態基盤である可能性を示した(Takayanagi et al., BBRC 2010)。さらにCadm1欠損マウスは自閉性障害の特徴の1つであるコミュニケーション障害について検討したところ、Cadm1欠損マウスは言語障害の変異を導入したFoxp2(R552H)変異ノックインマウスと同様、超音波音声コミュニケーションの異常と小脳の発達障害を示した(Fujita(Jimbo) et al., PLoS ONE 2011; Neurosci. Lett. 2011)。一方、細胞培養系での解析により、自閉性障害の患者のCADM1の変異(H246N, Y251S)、Bourgeronらが発見したNeuroligin-3(R451C)変異により小胞体ストレスが誘導され、CHOPの発現増大が観察された(Fujita(Jimbo) et al., Cell Death Dis. 2010)。Cadm1(Y251S)変異ノックインマウスの作製が完了したものの、繁殖予定の遅延により、来年度に解析を行う。
結論
機能障害Loss-of-functionだけでなく、変異タンパクによるGain-of-functionとしての 小胞体ストレスが病態に関わっている可能性が高まった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122087Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,800,000円
(2)補助金確定額
2,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,052,151円
人件費・謝金 0円
旅費 12,580円
その他 89,269円
間接経費 646,000円
合計 2,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-