文献情報
文献番号
201122078A
報告書区分
総括
研究課題名
治療抵抗性統合失調症に対する治療戦略のためのデータベース構築に関する研究
課題番号
H22-精神・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
三國 雅彦(国立大学法人 群馬大学 大学院医学系研究科 神経精神医学分野)
研究分担者(所属機関)
- 神庭 重信(九州大学大学院医学研究院精神病態医学精神医学)
- 寺尾 岳(大分大学医学部精神神経医学)
- 大森 哲郎(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部精神医学)
- 伊藤 千裕(東北大学大学院医学系研究科精神神経学)
- 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院精神医学)
- 武田 雅俊(大阪大学大学院医学系研究科精神医学)
- 兼子 直(弘前大学大学院医学研究科神経精神医学)
- 米田 博(大阪医科大学医学部総合医学講座神経精神医学)
- 石郷岡 純(東京女子医科大学医学部精神医学)
- 車地 暁生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医歯科学)
- 岡崎 祐士(東京都立松沢病院精神神経科学)
- 三辺 義雄(金沢大学医薬保健研究域医学系脳情報病態学)
- 染矢 俊幸(新潟大学教育研究院医歯学系)
- 小山 司(北海道大学大学院医学研究科精神医学講座)
- 清水 徹男(秋田大学大学院医学系研究科精神科神経科)
- 岩田 泰秀(浜松医科大学医学部附属病院精神科神経科)
- 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学講座)
- 伊藤 寿彦(独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院精神科)
- 黒木 俊秀(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部)
- 功刀 浩(国立精神・神経医療研究センター精神神経科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
12,100,000円
研究者交替、所属機関変更
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研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は各研究機関の臨床研究倫理委員会の承認を得た上で、書面で同意の得られた治療抵抗性統合失調症例について、クロザピンを使用する前と治療経過中に臨床精神病理学的評価や神経心理学的評価を実施し、これらの臨床データを各施設から基幹研究センターに移してデータベース化し、クロザピンの使用実態と治療成績を明らかにするとともに、非侵襲的脳画像解析や基幹研究センターに集積された遺伝子サンプルの一括解析を実施して、治療反応性や副作用発現との関連を明らかにし、治療ガイドライン作成の資料とすることを目的としている。
研究方法
連結可能匿名化したクロザピン投与前後の臨床データをWEB登録するシステムは、平成23年8月から入力可能となったので、この時点から平成23年度末までの新規導入患者51名について有効性と副作用発現につき解析した。一方、治験からの継続症例や上市後の症例のWEB登録が遅れたため、平成23年11月に臨床実態アンケート調査を実施し、202症例を解析した。また、基幹研究センターに遺伝子サンプルを集積して解析し、分担研究では、非侵襲的脳画像解析を治療前後で比較する方法で、本研究の目的を達成しようとしている。
結果と考察
WEB登録された新規導入患者51名の解析の結果、PANSSの評価では、投与開始4週後より改善がみられ、12週後、ないし26週後のPANSS総得点が25%以上低下し、35%の症例がクロザピン治療に奏功していた。また、アンケート調査による202症例の解析の結果、中等度改善以上は46%であり、副作用での中止が13%を占め、白血球減少症がその約40%、循環器系と神経系副作用もその約35%を占めた。血液モニタリングにより安全に治療が遂行されているが、循環器系などのガイドラインの再検討の必要性が示唆された。
結論
クロザピンの有効性や副作用出現には人種差の存在が知られているが、本研究によって日本人の治療抵抗性統合失調症でも35?45%に有効であることが明らかにされた。また、血液モニタリングにより安全に治療が遂行されているが、循環器系などのガイドラインの再検討の必要性が示唆され、専門学会との連携が重要である。一方、基幹研究センターに集積された遺伝子サンプル数はまだ少数であり、分担研究では、非侵襲的脳画像解析を治療前後とで計測できた症例も少数のため、解析待ちの状態となっており、協力症例数の増加が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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