文献情報
文献番号
201122062A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者歯科におけるEBM確立を目的としたクリニカルパス開発および利用に関する研究
課題番号
H22-身体・知的・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮脇 卓也(岡山大学大学院・医歯薬学総合研究科 歯科麻酔・特別支援歯学分野)
研究分担者(所属機関)
- 江草正彦(岡山大学病院 スペシャルニーズ歯科センター)
- 小笠原 正(松本歯科大学 障害者歯科学講座)
- 上山吉哉(山口大学大学院 医学系研究科 歯科口腔外科学分野)
- 石田 瞭(東京歯科大学 摂食・嚥下リハビリテーション・地域歯科診療支援科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,144,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
障害者に対する歯科治療は,大学病院や障害者施設,および地域での歯科センターなどで充実してきた。しかし,ガイドラインのようなものは存在していないため,治療の内容は各施設で独自の方針で行われている。本研究では,障害者歯科を質的に向上させることを念頭に置き,エビデンスに基づいた障害者歯科を行うためガイドラインを作成することを最終的な目標としている。今年度は「摂食・嚥下リハビリテーション」「行動変容」および「麻酔管理」のそれぞれの領域で,パスに基づいた診療を行い,その結果を前向き研究として解析した。
研究方法
「摂食・嚥下リハビリテーション」では神経筋疾患患者および口腔がん術後の患者を対象として,可能な限り共通の評価項目を用いて,他施設および異なる疾患であっても対応できるようにパスを作成した。「行動変容」では高次医療施設での麻酔管理が必要となる症例に共通する因子を解析した。また診療にはアウトカムを設定し,そのバリアンスを解析した。「麻酔管理」では高次医療施設で,パスに従って静脈内鎮静法を行い,鎮静からの回復遷延に関わる要因を多変量解析により調べた。
結果と考察
神経筋疾患患者では,適切な評価により発熱などの合併症が減ったものの,栄養摂取状態が著しく改善することはなかった。口腔がん術後では,術前から摂食・嚥下機能が障害されていることと,気管切開の有無によってアウトカムの達成に差が生じることがわかった。高次医療施設での麻酔管理が必要となる患者では,言語の発達年齢が4歳6ヶ月未満であることが意味のある因子となっていた。診療毎のアウトカム達成率は74%であり,体調不良などにより診療毎のアウトカムが非達成になると,期間アウトカムの達成率が低下する傾向にあった。麻酔管理ではミダゾラムの内服,短い治療時間,低いBMI,および抜歯が鎮静からの回復の遅れと関係していた。
結論
障害者歯科の各領域でパスを用いることにより,患者の状帯を客観的なデータとして評価することが可能であった。摂食・嚥下リハビリテーションに関しては,原疾患の違いによる摂食・嚥下機能の違いが明らかとなり,麻酔管理では規格化された方法により,臨床の現場から客観的なデータを得ることが可能であった。今後は前向きコホート研究として,パスの改良,データの解析を繰り返しガイドラインへ近づけることができると考えている。
公開日・更新日
公開日
2012-08-10
更新日
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