在宅遷延性意識障害者のQOL向上を目的とした支援の在り方に関する研究

文献情報

文献番号
201122039A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅遷延性意識障害者のQOL向上を目的とした支援の在り方に関する研究
課題番号
H21-障害・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
日高 紀久江(筑波大学 人間総合科学研究科 看護科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 紙屋 克子(静岡県立大学 看護学研究科)
  • 林 裕子(北海道大学大学院 保健科学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
1,849,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遷延性意識障害者の在宅生活の継続とQOL向上を目的に,意識障害者・介護者,両者の生活を支える医療・福祉サービスという観点から在宅支援の在り方について検討した.具体的には,意識障害者の1.医療・福祉サービスの充実を図る,2.身体・精神機能の向上,そして3.介護負担の軽減と介護力を強化することを目的に研究を実施した.
研究方法
目標2.では,意識障害者に関わる看護師への教育研修とその評価を行った.平成22年度に開発した専門教育プログラムを基に,全国計4箇所で研修会を実施した.研修前に参加者の基本的属性,意識障害者への看護に関する実態調査,研修終了後に満足度調査を行った.また,目標3.では,障害者自立支援法利用者の訪問看護計画書,居宅介護および重度訪問介護計画書を基に,在宅における意識障害者のケア目標ならびにサービス利用の実態とその特徴を明らかにした.
結果と考察
研修会の参加者は計355名であり,平均年齢は40.3±11.5歳だった.日常的に実施している看護には,合併症予防や生体管理(呼吸の援助82.1%,80度座位への援助78.9%など),生活援助に関するケア(口腔ケア97.6%,排泄介助95.1%),生活行動回復へのケア(車椅子乗車77.2%,摂食嚥下訓練58.5%)等が挙げられた.しかし,背面開放型座位や触覚,味覚刺激の実施率は30%以下であった.研修終了時の総合的な満足度は10段階中平均8.6±1.6点であり,「これまでの看護と異なる考え方であり勉強になった」等の意見が多かった.障害者自立支援法利用者のケアプラン(48件)では47件が障害区分6であり, 37件(77.1%)は居宅介護を利用し,ICF分類のセルフケア,移乗・移動に関する項目が多かった.訪問看護・介護,入浴サービスとも全員が利用しているわけではなく,医療的なケアが必要な障害者への看護と介護の連携,そして意識障害という障害特性に応じたケアの認識が課題と考えられた.
結論
意識障害者の看護は合併症予防や生体管理の看護や生活の援助が中心であったが,本研修の満足度は高く,これまでの看護を内省し看護の持つ力を再発見したなどの意見から,生活行動の回復を目標とした今回構築した研修プログラムの必要性は高いのではないかと考える.また,意識障害者のケアプランは,意識障害という障害特性への認識が少ないことから,障害者自立支援法では包括的なケアマネジメントを行う専門職の必要性が示唆された.

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122039B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅遷延性意識障害者のQOL向上を目的とした支援の在り方に関する研究
課題番号
H21-障害・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
日高 紀久江(筑波大学 人間総合科学研究科 看護科学系)
研究分担者(所属機関)
  • 紙屋 克子(静岡県立大学 看護学研究科)
  • 林 裕子(北海道大学大学院 保健科学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遷延性意識障害者の在宅生活の継続とQOL向上を目指して,意識障害者と介護者の生活を支える在宅支援のあり方について多角的に検討することを目的とした.
研究方法
意識障害者は重度の重複した障害を抱えている.しかし,意識障害は長い経過のなかで回復に向けて変化している場合もあり,現状維持に留まらず身体・精神機能の改善に向けたケアが必要である.そこで,意識障害者の在宅療養の継続に向けて,研究1.介護者の介護負担の軽減と介護力の強化に関する研究,2.意識障害者の身体・精神機能の向上を目的とした研究,3.意識障害者が利用する医療・福祉サービスの充実に向けた研究を実施し,在宅療養における問題点を抽出した.
結果と考察
研究1では,介護保険・障害者自立支援制度の利用者を対象にケアプランの分析を行った.両制度ともほぼ全員が最重度の障害であり,介護保険では意障害者の特徴を踏まえたプランでないことや医療的な管理に関する記載がないことが,障害者自立支援法では看護と介護の連携に関する問題が示唆された.研究2では,看護師を対象に関節拘縮の軽減や摂食摂取に向けてのケア方法に関する研修会を計4回実施し,参加者の満足度は高かった.研究3では,在宅での介護内容・介護量について24時間のタイムスタディー調査と介護上のニーズに関する実態調査を実施した.また,介護教室と看護の専門外来を実施しその評価を行った.タイムスタディー調査では,総介護時間は平均約9時間であった.在宅では気管切開,経管栄養の注入や血糖測定など,医療的なケアも家族に委ねられていた.一方,ケアニーズ調査では,患者・家族会を対象に実施し258名から回答を得た(回収率64.8%).在宅と入院患者では,在宅の方が関節運動等のリハビリの実施率が高く,実施者は家族であることが推測された.また,意識障害の重症度に関わらず,家族はコミュニケーションが図れるようになること,摂食嚥下機能の回復を望んでいた.
結論
在宅療養の支援として,医療専門職に関する意識障害の病状,特徴等に関する理解の促進,研修会や継続的な研修プログラムの構築を図ること,研修のアウトカムとして臨床実践における患者の変化等に関する研究の必要性が示された.また,関節拘縮,コミュニケ-ション,摂食嚥下機能の向上を希望している介護者が多いことから,それらの問題に対するケア方法の確立が今後の課題であると考える.

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122039C

成果

専門的・学術的観点からの成果
わが国では在宅で療養している遷延性意識障害者の実態調査は少ない.なかでも,意識障害者と介護者の生活における実態調査はほとんど行われていない.国際的にみても在宅で療養している意識障害者の研究はほとんどないことからも,本研究の結果は今後の在宅遷延性意識障害者の研究の基礎資料となり得るものである.
臨床的観点からの成果
在宅療養の支援として,医療専門職に対する意識障害の病状,特徴等に関する理解の促進,研修会や継続的な研修プログラムの構築を図ること,研修のアウトカムとして臨床実践における患者の変化等に関する研究の必要性が示された.また,意識障害者の介護者のケアニーズとして,関節拘縮の軽減,コミュニケ-ション方法の確立,摂食嚥下機能の向上が抽出され,それらの問題に対するケア方法の確立が今後の課題であると考える.
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
在宅療養が推進されるようになり重度障害者の在宅療養が注目させるようになった.遷延性意識障害においては,いまだ障害者数も把握できていない状況である.しかしながら,本研究では直接的に行政施策な施策に反映できる成果はなかったものの,遷延性意識障害者の介護の実態やケアニーズが明らかにできた.それらは医療的なケアを含むことからも,在宅における意識障害者の病状に関する啓蒙や職種間連携の必要性など,今後の課題を見出すことができた.
その他のインパクト
本研究と直接的な関連はないが,平成21年3月NHKスペシャルで遷延性意識障害への治療・看護における報道があり,また平成22年度には東北の新聞社において遷延性意識障害の特集が掲載された.双方とも本研究の分担研究者が関与しており,社会的に遷延性意識障害者への関心が拡がったのではないかと考えられる.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
日高紀久江,紙屋克子,林 裕子,他
遷延性意識障害患者の介護教室参加者のケアニーズと介護教室の在り方に関する検討
日本脳神経看護研究学会誌 , 33 (2) , 141-146  (2011)
原著論文2
松田陽子,日高紀久江
医療福祉制度の変遷とともに生きてきた在宅遷延性意識障害者の介護者の22年の軌跡 -社会参加と支援について
医療社会福祉研究 , 19 , 63-71  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122039Z