難治性眼炎症性疾患に対する網羅的迅速診断システムの開発

文献情報

文献番号
201122027A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性眼炎症性疾患に対する網羅的迅速診断システムの開発
課題番号
H21-感覚・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
望月 學(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 杉田 直(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 中井 慶(大阪大学 医歯学総合研究科)
  • 臼井 嘉彦(東京医科大学 眼科)
  • 武田 篤信(九州大学 大学院医学研究院)
  • 丸山 和一(京都府立医科大学 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,929,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、眼内の微量検体からPolymerase chain reaction (PCR) 法を用いて眼内感染症病原体と眼内リンパ腫を網羅的かつ迅速に診断もしくは除外できるシステムを開発し、臨床的有用性を検討する事である。
研究方法
眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる患者の前房水または硝子体を採取し、①ヒトヘルペスウイルス1型?8型に対するmultiple定性PCRとreal time定量PCR、②細菌ブロードレンジreal time PCR(細菌16SrRNA領域)、③真菌ブロードレンジreal time PCR(真菌28SrRNA領域)、④眼内リンパ腫PCR(IgH遺伝子再構成、TCR遺伝子再構成)をおこなった。他の検査(培養、細胞診等)+治療などの臨床所見とPCR結果を比較照合して、本診断システムの有効性を判定した。(1) PCR陽性結果と臨床所見とが一致し確定診断したもの、(2) PCR陰性結果と臨床所見とが一致し眼感染症と眼内リンパ腫が除外できたもの、(3) PCRの結果が臨床所見と一致せずに無効であったものである。対照として、炎症とリンパ腫がない老人性白内障や網膜剥離などの患者100名も検査した。
結果と考察
2009年4月から2011年10月までの2年8ヶ月間の結果は以下の如くである。眼感染症が疑われた292例、ならびに眼内リンパ腫が疑われた68例の患者検体を本診断システムで検査した。(1)本システムで確定診断できた症例は142例、(2)本システムの検査結果が陰性で、感染症ならびに眼内リンパ腫が除外診断できた症例は187例、(3)本システムの結果と臨床症状ならびに他の検査結果とが一致しなかった症例は31例であった。一方、対照の100例の検体は本診断システムで全て陰性だった。
 以上より、本PCR診断システムの感度は83%、特異度99%、Positive Predictive Valueは99%、Negative Predictive Valueは91%であった。臨床所見から眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる症例の診断に対して、この網羅的迅速PCR診断システムは有効であった。
結論
感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる症例に対して網羅的迅速PCR診断システムは有効性であった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122027B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性眼炎症性疾患に対する網羅的迅速診断システムの開発
課題番号
H21-感覚・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
望月 學(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 清水 則夫(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 杉田 直(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科)
  • 中井 慶(大阪大学 医歯学総合研究科)
  • 肱岡 邦明(九州大学 大学院医学研究院)
  • 丸山 和一(京都府立医科大学 眼科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、眼内の微量検体からPolymerase chain reaction (PCR) 法を用いて眼内感染症病原体と眼内リンパ腫を網羅的かつ迅速に診断もしくは除外できるシステムを開発し、臨床的有用性を検討する事である。
研究方法
眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる患者の前房水または硝子体を採取し、①ヒトヘルペスウイルス1型?8型に対するmultiple定性PCRとreal time定量PCR、②細菌ブロードレンジreal time PCR(細菌16SrRNA領域)、③真菌ブロードレンジreal time PCR(真菌28SrRNA領域)、④眼内リンパ腫PCR(IgH遺伝子再構成、TCR遺伝子再構成)をおこなった。他の検査(培養、細胞診等)+治療などの臨床所見とPCR結果を比較照合して、本診断システムの有効性を判定した。(1) PCR陽性結果と臨床所見とが一致し確定診断したもの、(2) PCR陰性結果と臨床所見とが一致し眼感染症と眼内リンパ腫が除外できたもの、(3) PCRの結果が臨床所見と一致せずに無効であったものである。対照として、炎症とリンパ腫がない老人性白内障や網膜剥離などの患者100名も検査した。
結果と考察
2009年4月から2011年10月までの2年8ヶ月間の結果は以下の如くである。眼感染症が疑われた292例、ならびに眼内リンパ腫が疑われた68例の患者検体を本診断システムで検査した。(1)本システムで確定診断できた症例は142例、(2)本システムの検査結果が陰性で、感染症ならびに眼内リンパ腫が除外診断できた症例は187例、(3)本システムの結果と臨床症状ならびに他の検査結果とが一致しなかった症例は31例であった。一方、対照の100例の検体は本診断システムで全て陰性だった。
 以上より、本PCR診断システムの感度は83%、特異度99%、Positive Predictive Valueは99%、Negative Predictive Valueは91%であった。臨床所見から眼内感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる症例の診断に対して、この網羅的迅速PCR診断システムは有効であった。
結論
感染症あるいは眼内リンパ腫が疑われる症例に対して網羅的迅速PCR診断システムは有効性であった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
分子生物学の進歩に伴いポリメラーゼ連鎖反応により特異的遺伝子の同定が短時間に正確に行えるようになり医学各分野で応用されている。しかし、本研究のように極微量な試料を用いて、multiplex PCR、real-time PCR、 broad range PCRを組み合わせて、全てのヒトヘルペスウイルス、HTLV-1ウイルス、真菌、細菌、トキソプラズマ、アカントアメーバ、更にはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫を一度に網羅的に同定する診断システムは過去になく専門的・学術的成果は極めて高い。
臨床的観点からの成果
分子生物学の進歩に伴いポリメラーゼ連鎖反応により特異的遺伝子の同定が短時間に正確に行えるようになり医学各分野で応用されている。しかし、本研究のように極微量な試料を用いて、multiplex PCR、real-time PCR、 broad range PCRを組み合わせて、全てのヒトヘルペスウイルス、HTLV-1ウイルス、真菌、細菌、トキソプラズマ、アカントアメーバ、更にはB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫を一度に網羅的に同定する診断システムは過去になく専門的・学術的成果は極めて高い。
ガイドライン等の開発
本診断システムは、多くの眼内炎症疾患と眼内リンパ腫の診断に有用な極めて臨床的意義のある検査法であり、その有効性と安全性も多施設協同前向き研究により確認された。そのデータに基づいて、平成24年6月に東京医科歯科大学附属病院から先進医療として申請中である。今後、基準を満たす全国のいくつかの施設においてこの検査法が先進医療として申請され、更に広く臨床に用いられることを期待している。
その他行政的観点からの成果
眼内感染症で失明する患者、あるいは眼内リンパ腫により死亡する患者は多いが、これらの疾患は眼科臨床症状が極めて多彩であり、眼内液を用いた従来の検査は感度が低いために診断が極めて難しかった。PCRを応用した網羅的迅速診断システムにより、迅速かつ正確な診断が可能となり、これらの疾患の早期診断と治療が可能となり、失明予防という行政的観点に大きく貢献した。
その他のインパクト
本診断システムの有用性の検討は東京医科歯科大学眼科を含む5大学で前向き協同研究をおこなった。しかし、眼内感染症と眼内リンパ腫が疑われ正確な診断を要する患者を持つ全国の極めて多くの施設から本迅速診断システムによる眼内液の検査依頼が多数あった。それらに対しても、倫理的臨床的見地から要望に応えて検査をおこない、その結果は患者の治療に役立った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugita S, Ogawa M, Inoue S, et al
Diagnosisi of ocular toxoplasmosis by two polymerase chain reaction (PCR) examinations: qualitative multiplex and quantitative real-time.
Jpn J Ophthalmol , 55 , 495-501  (2011)
原著論文2
Sugita S, Kamoi K, Ogawa M, et al
Detection of candida and Aspergillus species DNA using broad-range real-time PCR for fungal endophthalmitis.
Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol , 250 (3) , 391-398  (2012)
原著論文3
Imadome K, Yajima M, Arai A, et al
Novel mouse xenograft models reveal a critical role of CD4+ T cells in the proliferation of EBV-infected T and NK cells.
PLOS Pathogenes , 7 , 1-14  (2011)
原著論文4
杉田 直
検体検査
あたらしい眼科 , 28 , 469-475  (2011)
原著論文5
杉田 直
ぶどう膜炎の網羅的診断法
臨床眼科 , 65 , 332-338  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201122027Z