中・高齢層中途視覚障害者の自立・学習・就労を支援する文字入力システムの開発と有効性の実証に関する研究

文献情報

文献番号
201122024A
報告書区分
総括
研究課題名
中・高齢層中途視覚障害者の自立・学習・就労を支援する文字入力システムの開発と有効性の実証に関する研究
課題番号
H21-感覚・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 和之(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 理療教育・就労支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 清田 公保(熊本高等専門学校 人間情報システム工学科)
  • 江崎 修央(鳥羽商船高等専門学校 制御情報工学科)
  • 奈良 雅之(目白大学大学院 心理学研究科)
  • 福田 文彦(明治国際医療大学 鍼灸学部)
  • 加藤 麦(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 理療教育・就労支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
3,338,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、点字や普通文字、PCでの文字入力に困難を有し、ノート・テイキングに苦慮する中・高齢層中途視覚障害者の自立訓練、学習、就労を支援する文字入力システムの開発と、その有効性の実証を目的とした。
研究方法
 A 文字入力システムのうち、点字タイプライター式は自立訓練プログラムでの評価を得ることとした。B 手書き式は編集機能の強化を図り、試用評価を得ることとした。また、医学英語の模擬授業に導入し、PCと交互に用いるABABデザインで成績の比較を行った。C 予約管理・予診票・施術録作成システムを開発し、鍼灸臨床実習時の患者情報のデータベース化と試用評価を行った。いずれも、対象者は中途視覚障害者とした。評価には、福祉用具満足度スケール(QUEST2.0)と福祉機器心理評価スケール(PIADS)を用いた。D 理療教育卒前、卒後の者に対する医療コミュニケーション教材の作成を継続した。その基礎資料を得るために、患者の健康と意識に関する調査を行うこととした。調査は対面による聞き取り調査と配布郵送調査法を用いた。
結果と考察
 Aについて、訓練後の対象者2名のQUEST平均得点は4.0±1.41点(max=5.0点)であった。Bについて、2度の更新を行った。対象者1名が試用した結果、最終的にQUEST平均得点は3.3点であった。心理的評価は、効力感が1,7点(max=3.0点)、積極的適応性が2.0点、自尊感が1.3点であった。また、模擬授業の結果、対象者2名の4回の成績に有意差は見られず、手書き式システムの有効性が確認された。Cについて、予約・予診票・施術録データを一元管理する電子カルテシステムを開発した。30名の初診患者の手書き入力した予診データの文字認識率は96.4%であった。全盲の理療師が手書きで施術録を作成したQUEST平均得点は4.5点であった。PIADS得点は、効力感1.3点、積極的適応性1.8点、自尊感1.0点に集約された。Dについて、回収した調査票1,441通のうち、有効回答数は1,434通(有効回答率60.3%)であった。患者の健康状態は、Tariffスコア(EuroQol)平均0.72±0.14であった。施術者への信頼、症状の話しやすさ、コミュニケーションが患者満足度に影響していた。これらを資料した卒前の医療コミュニケーション教材は6章立て、卒後臨床家向け教材は2編立てのドラフトを作成した。
結論
 点字タイプライター式、手書き式文字入力システム並びにデジタルペンを活用した電子カルテシステムを開発し、中途視覚障害者による試用評価の結果、有効性が確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122024B
報告書区分
総合
研究課題名
中・高齢層中途視覚障害者の自立・学習・就労を支援する文字入力システムの開発と有効性の実証に関する研究
課題番号
H21-感覚・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 和之(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 理療教育・就労支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 清田 公保(熊本高等専門学校 人間情報システム工学科)
  • 江崎 修央(鳥羽商船高等専門学校 制御情報工学科)
  • 奈良 雅之(目白大学大学院 心理学研究科)
  • 福田 文彦(明治国際医療大学 鍼灸学部)
  • 加藤 麦(国立障害者リハビリテーションセンター 自立支援局 理療教育・就労支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、点字や普通文字、PCでの文字入力に困難を有し、ノート・テイキングに苦慮する中・高齢層中途視覚障害者の自立訓練、学習、就労を支援する文字入力システムの開発と、その有効性の実証を目的とした。
研究方法
 A. 点字タイプライター式文字入力システムを開発し、自立訓練プログラムでの試用を通して有効性を評価した。B. 手書き式文字入力システムの編集機能の強化と生活場面での試用、授業場面への導入方法の検討と、PCと交互に使用しての試験の成績の比較により有効性を評価した。C. デジタルペンを活用した鍼灸臨床用電子カルテシステムの開発と試用により有効性を評価した。いずれも、対象者は中途視覚障害者とした。評価には、福祉用具満足度スケール(QUEST2.0)と福祉機器心理評価スケール(PIADS)を用いた。D. 鍼灸を受療する患者の健康と意識に関する調査を行い、理療教育卒前、卒後の者に対する医療コミュニケーション教材を作成する基礎資料を得ることとした。E. 筆記行動支援研修プログラム案を策定し、普及の資料を得ることとした。
結果と考察
 Aについて、訓練後の対象者2名のQUEST平均得点は4.0±1.41点(max=5.0点)であった。Bについて、地域の生活者1名のQUEST平均得点は3.3点であった。心理的評価は、効力感1,7点(max=3.0点)、積極的適応性2.0点、自尊感1.3点に集約された。模擬授業の結果、対象者2名の4回の成績に有意差は見られず、手書き式システムの有効性が確認された。Cについて、予約・予診票・施術録データを一元管理する電子カルテシステムを開発した。初診患者30名の予診データの文字認識率は96.4%であった。全盲の理療師による施術録作成後のQUEST平均得点は4.5点であり、PIADS得点は、効力感1.3点、積極的適応性1.8点、自尊感1.0点に集約された。Dについて、施術者への信頼、症状の話しやすさ、コミュニケーションが患者満足度に影響していた(有効回答数1,434通(有効回答率60.3%))。これを資料とした卒前の医療コミュニケーション教材は6章立て、卒後臨床家向け教材は2編立てのドラフトを作成した。Eについて、フォーラムを開催し、分野間連携が必要であるとの示唆を得た(参加者63名)。
結論
 2種類の文字入力システム並びにデジタルペンを活用した電子カルテシステムを開発し、有効性を確認した。教育・訓練プログラム、教材と組合せ、日常生活、学習、就労における自立を目指す中途視覚障害者の筆記行動を促進するリハビリテーション・サービス「筆記行動支援システム」を提案するに至った。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122024C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 視覚障害リハビリテーション研究の書字の領域において、自立訓練、学習、就労の各場面を結ぶ支援技術(AT)の系統を提案した。具体的には、点字盤、点字タイプライター、「点字タイプライター式文字入力システム」、PCという系統、そしてハンドライティング、「手書き式文字入力システム」、「手書き式電子カルテシステム」という系統である。
 また、地域リハや個別支援を論ずる上で、成人の中途視覚障害者の自己決定には「選択肢の提供」と専門分野間の「連携」がキーワードになるとの示唆を得た。
臨床的観点からの成果
 点字タイプライター式文字入力システムは、平成23年度障害者自立支援機器等開発促進事業の補助を受けて製品化された。
 2012年度、文字認識技術を活用した手書き式システムの仕様を応用し、入札業者に中途視覚障害者と晴眼者が共用できる電子カルテシステムを製作いただき、国立障害者リハビリテーションセンター施術室に設置した。2013年度に改修を行い、利用手引書を作成し、2014年4月から本格稼働を開始した。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
 コミュニケーション・ツールの選択肢を増やし、個々の障害程度に応じた適合を実現することによって、中・高齢層中途視覚障害者の自己効力感、積極的適応性、自尊感を高める効果が得られることを実証した。中途視覚障害者のICTの利活用と自立と社会参加に具体的に貢献し得ることを示している。
 また、適切な適合は、支援機器の不要な給付を防ぐことにつながり、結果として経済的メリットに結びつく。
その他のインパクト
 2012年3月10日に鹿児島市ハートピアかごしまにて、63名の参加者を得て「コミュニケーション&リハビリテーションフォーラムin鹿児島」を開催した。視覚障害関係者、医療、教育、福祉、工学、行政分野を含めた一般市民を対象とし、研究成果発表と、開発した各文字入力システムを直接触れる時間を設けた。当日はNHK鹿児島放送局の取材を受けた。
 同様に、2013年3月9日に仙台市福祉プラザにて、84名の参加者を得て「コミュニケーション&リハビリテーションフォーラムin仙台」を開催した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
13件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
コミュニケーション&リハビリテーションフォーラム2012in鹿児島, 2012.3.10)コミュニケーション&リハビリテーションフォーラム2013in仙台, 2013.3.9)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
伊藤和之,清田公保,江崎修央他
中途視覚障害者の文字入力を支援する手書き式文字入力システム“Pen-Talker”の開発と評価
ヒューマンインタフェース学会論文誌 , 11 (4) , 391-400  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122024Z