自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成

文献情報

文献番号
201122015A
報告書区分
総括
研究課題名
自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成
課題番号
H21-こころ・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
倉恒 弘彦(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 稲葉 雅章(大阪市立大学大学院医学研究科代謝内分泌病態内科学)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学医学部ウイルス学講座・ウイルス学、分子生物学)
  • 伴 信太郎(名古屋大学医学部附属病院 総合診療医学講座 総合診療医学)
  • 下村 登規夫(独立行政法人国立病院機構さいがた病院 神経内科学)
  • 久保 千春(九州大学大学病院医学研究院心身医学 心身医学)
  • 野島 順三(山口大学大学院医学系研究科・生体情報検査学・免疫学、血栓・止血学)
  • 渡辺 恭良(理化学研究所・理化学研究所・分子イメージング科学研究センター)
  • 酒井 一博(財団法人労働科学研究所、労働衛生学)
  • 小泉 淳一(横浜国立大学大学院工学研究院)
  • 局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科・獣医学専攻比較病態生理学)
  • 松本 美富士(藤田保健衛生大学医学部(七栗サナトリウム)、内科学、リウマチ学、臨床疫学)
  • 村上 正人(日本大学医学部附属板橋病院、心療内科、心身医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
17,391,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
客観的な疲労評価系のCFS診断における感度、特異度を明らかにするとともに、客観的な疲労評価系を組み入れた新たなCFS診断基準を作成する。
研究方法
CFS患者と健常者を対象に、種々の生理学的検査、生化学的検査、ウイルス検査、脳機能解析などを用いて疲労を評価し、客観的な疲労評価・診断法の確立を目指した。また、明らかになってきた客観的な疲労評価法を取り入れた新たなCFS診断基準の作成を行った。さらに、日本におけるCFS患者の実態調査を実施した。
結果と考察
1.客観的な疲労評価法の検証 睡眠・活動指標、自律神経機能、単純計算課題、酸化ストレス評価、唾液中ヘルペスウイルス解析、起立試験の有用性、カットオフ値、感度、特異度を明らかにした。

2.多施設参加による多変量解析と客観的な疲労評価系の検討
ア)認知課題検査、自律神経機能評価、睡眠・覚醒リズム解析の組み合わせによるPrimary診断決定木を考案(感度72.0%、特異度75.6%、尤度比は2.95)。
イ)血液抗酸化能評価、起立試験の組み合わせによるSecondary診断決定木を考案(感度93.3%、特異度98.7%、陽性尤度比73.7)。
ウ)多施設多変量解析に登録されたCFS患者 60名、健常者79名を検証し、5つの検査を組み合わせてCFSを判別する手法を考案。

3.客観的な疲労評価を取り入れたCFS診断基準(試案)の作成
ア)日本疲労学会「新たな慢性疲労症候群診断指針」を元に、新たなCFS臨床診断基準を作成。
イ)臨床的にCFSと診断された患者に対する客観的な補助的検査レベル評価(5段階)を導入。

4.臨床研究
ア)Positron Emission Tomography解析により、視床と中脳の脳内炎症がCFSの病態と深く関連していることを発見。
イ)CFSの集学的治療成績や線維筋痛症との問題点を紹介。
ウ)CFS患者や労働者の慢性疲労の実態を調査。
結論
1.CFS診断に有用な検査における感度や特異度を明らかにした。
2.日本疲労学会の慢性疲労症候群診断指針を元にCFS臨床診断基準を作成し、臨床的にCFSと診断された患者に対しては5つの客観的な疲労診断検査を実施して補助的検査レベル評価を5段階で行うこととした。
3.Primary診断決定木、Secondary診断決定木を作成し、平成24年度に検証することとした。
4.CFS患者や労働者の慢性疲労の実態の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201122015B
報告書区分
総合
研究課題名
自律神経機能異常を伴い慢性的な疲労を訴える患者に対する客観的な疲労診断法の確立と慢性疲労診断指針の作成
課題番号
H21-こころ・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
倉恒 弘彦(関西福祉科学大学 健康福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤 良記(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 小山 英則(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 稲葉 雅章(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 久保 千春(九州大学大学病院 診療内科学)
  • 伴 信太郎(名古屋大学 医学部)
  • 渡邊 恭良(理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 野島 順三(山口大学大学院 医学系研究科)
  • 下村 登規夫(独立行政法人国立病院機構 さいがた病院)
  • 小泉 淳一(横浜国立大学大学院 工学研究院)
  • 近藤 一博(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 酒井 一博(財団法人労働科学研究所)
  • 局 博一(東京大学大学院 農学生命科学研究科)
  • 松本 美富士(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 村上 正人(日本大学医学部 附属板橋病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
客観的な疲労評価系のCFS診断における感度、特異度を明らかにするとともに、客観的な疲労評価系を組み入れた新たなCFS診断基準を作成する。
研究方法
CFS患者と健常者を対象に、種々の生理学的検査、生化学的検査、ウイルス検査、脳機能解析などを用いて疲労を評価し、客観的な疲労評価・診断法の確立を目指した。また、明らかになってきた客観的な疲労評価法を取り入れた新たなCFS診断基準の作成を行った。さらに、日本におけるCFS患者の実態調査を実施した。
結果と考察
1.客観的な疲労評価法の検証 
 睡眠・活動指標、自律神経機能、単純計算課題、酸化ストレス評価、唾液中ヘルペスウイルス解析、起立試験の有用性、カットオフ値、感度、特異度を明らかにした。

2.多施設参加による多変量解析と客観的な疲労評価系の検討
ア)認知課題検査、自律神経機能評価、睡眠・覚醒リズム解析の組み合わせによるPrimary診断決定木を考案(感度72.0%、特異度75.6%、尤度比は2.95)。
イ)血液抗酸化能評価、起立試験の組み合わせによるSecondary診断決定木を考案(感度93.3%、特異度98.7%、陽性尤度比73.7)。
ウ)多施設多変量解析に登録されたCFS患者 60名、健常者79名を検証し、5つの検査を組み合わせてCFSを判別する手法を考案。

3.客観的な疲労評価を取り入れたCFS診断基準(試案)の作成
ア)日本疲労学会「新たな慢性疲労症候群診断指針」を元に、新たなCFS臨床診断基準を作成。
イ)臨床的にCFSと診断された患者に対する客観的な補助的検査レベル評価(5段階)を導入。

4.臨床研究
ア)Positron Emission Tomography解析により、視床と中脳の脳内炎症がCFSの病態と深く関連していることを発見。
イ)CFSの集学的治療成績や線維筋痛症との問題点を紹介。
ウ)CFS患者や労働者の慢性疲労の実態を調査。
エ)日本におけるCFS患者の病因としてXMRV感染症は無関係であることを確認。
オ)メタボローム解析にて、CFS患者でエネルギー産生系異常がみられることを発見。
結論
1.CFS診断に用いる客観的検査法の感度や特異度を明らかにした。
2.日本疲労学会CFS診断指針を元にCFS臨床診断基準を作成し、臨床的にCFSと診断された患者に対しては5つの客観的な疲労診断検査を実施して補助的検査レベル評価を5段階で行うこととした。
3.Primary診断決定木、Secondary診断決定木を作成し、平成24年度に検証することとした。
4.CFS患者や労働者の慢性疲労の実態の一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2012-08-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201122015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
Positron Emission Tomography解析により、視床と中脳の脳内炎症がCFSの病態と深く関連していることを世界で初めて明らかにした(論文投稿中)。また、CREST研究と共同でメタボローム解析を実施し、CFS患者群において、解糖系からTCAサイクルを含めたエネルギー代謝系の代謝物質で大きく低下するものを見出し、エネルギー産生系の評価が客観的な慢性疲労評価に極めて有用であることを発見した(論文投稿中)。
臨床的観点からの成果
現在のCFS診断基準は、問診票を用いた症状診断と臨床検査による除外診断を組み合わせたものであり、疲労の客観的な評価法は用いられていない。このため、CFS患者における疲労病態を正確に把握することが難しい。そこで、種々の検査法を用いて慢性疲労病態を評価し、慢性疲労を客観的に評価できるような検査法を明らかにした。さらに、臨床CFS診断基準を明示するとともに、より正確にCFS診断を行うための客観的な補助的検査レベル評価(5段階)を開発し、医師が信頼して用いることの可能な診断基準を作成した。
ガイドライン等の開発
客観的な疲労評価法として、睡眠・活動指標、自律神経機能、単純計算課題、酸化ストレス評価、起立試験の有用性を明らかにするとともに、CFS群と健常者群におけるカットオフ値、感度、特異度を示した。さらに、日本において慢性疲労症候群(CFS)患者を診療する場合に用いるCFS臨床診断基準を作成し、臨床的にCFSと診断された患者に対しては、より正確にCFS診断を行うための補助的検査レベル評価(5段階)を開発し、医療機関に慢性疲労を訴える患者が受診した場合の手引きとなるガイドラインを作成した。
その他行政的観点からの成果
2009年、サイエンス誌に米国CFS患者ではレトロウイルスXMRVが101名中67名に見出されると発表され、世界中で感染防止の観点からCFS既往者からの献血を中止する事態が発生した。そこで、日本においても緊急にXMRV問題に対処する必要が生じ、本研究の中でCFS患者100名におけるXMRV抗体やゲノム解析を実施した。その結果、日本のCFS患者ではXMRV感染は関連していないことが明らかとなり、血液行政における安全性の確保に貢献した(平成22年度第3回血液事業部会運営委員会)
その他のインパクト
本研究成果は、NHK今日の健康「もしかして?慢性疲労症候群」2012年2月15日(水)において解説した。また、CFSに対するマスコミの関心は極めて高く、NHKニュース7「慢性疲労症候群の病因・病態の解明に向けて」2011年10月23日(日)、TBS系列カラダのキモチ「あなたの疲れは本当に取れている? 賢い休日の過ごし方」2011年5月15日(日)、などにおいて大きく報道されており、また、読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞の全国版や東京新聞などでこの3年間に11回取り上げられている。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
51件
その他論文(和文)
15件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
70件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
客観的な疲労評価に関する特許を出願した
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
東日本大震災に対して、厚労省疲労研究班成果をもとにJST緊急研究開発成果実装支援プログラム「東日本大震災被災者と救援支援者における疲労の適正評価と疾病予防への支援」(吉田俊子、宮城大学)を実施した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kuratsune D, Tajima S, Koizumi J, et al. 
Changes in reaction time, coefficient of variance of reaction time, and autonomic nerve function in the mental fatigue state caused by long-term computerized Kraepelin test workload in healthy volunteers.
World Journalof Neuroscience  (2012)
原著論文2
Sakudo A, Kuratsune H, Hakariya KatoY, et al.
Visible and near-infrared spectra collected from the thumbs of patients with chronic fatigue syndrome for diagnosis.
Clinica Chimica Acta  (2012)
原著論文3
Tanaka M, Watanabe Y.
Supraspinal regulation of physical fatigue
Neurosci Biobehav Rev , 36 (1) , 727-734  (2012)
原著論文4
Furuta RA, Miyazawa T, et al. Sugiyama T,
No association of xenotropic murine leukemia virus-related virus with prostate cancer or chronic fatigue syndrome in Japan.
Retrovirology  電子ジャーナル , 8 , 20-  (2011)
原著論文5
Mizuno K, Tanaka M, Yamaguti K, et al.
Mental fatigue caused by prolonged cognitive load associated with sympathetic hyperactivity.
Behav Brain Funct  電子ジャーナル , 7 (1) , 17-  (2011)
原著論文6
Tanaka M, Mizuno K, Yamaguti K, et al.
Autonomic nervous alterations associated with daily level of fatigue.
Behav Brain Funct  電子ジャーナル , 7 (1) , 46-  (2011)
原著論文7
Shishioh-Ikejima N, Ogawa T, Yamaguti K, et al.
The increase of alphamelanocyte-stimulating hormone in the plasma of chronic fatigue syndrome patients.
BMC Neurol. 電子ジャーナル , 10 , 73-  (2011)
原著論文8
Yoshihara K, Hiramoto T, Sudo N, et al.
Profile of mood states and stress-related biochemical indices in long-term yoga practitioners.
Biopsychosoc Med. , 5 (1) , 6-  (2011)
原著論文9
倉恒弘彦
疲労とメンタルヘルス
臨床と研究 , 88 (3) , 329-334  (2011)
原著論文10
小泉淳一
慢性的な疲労に対する心拍変動解析手順と診断決定木
日本疲労学会誌 , 6 (2) , 43-48  (2010)
原著論文11
Koyama H, Fukuda S, Shoji T, et al.
Fatigue is a predictor for cardiovascular outcomes in patients undergoing hemodialysis.
Clin J Am Soc Nephrology , 5 (4) , 659-666  (2010)
原著論文12
Fukuda S, Kuratsune H, Tajima S, et al.
Premorbid personality in chronic fatigue syndrome as determined by the Temperament and Character Inventory.
Compr Psychiatry , 51 (1) , 78-85  (2010)
原著論文13
Tajima S, Yamamoto S, Tanaka M, et al.
Medial orbitofrontal cortex is associated with fatigue sensation.
Neurology research international 電子ジャーナル , 2010  (2010)
原著論文14
Fukuda S, Hashimoto R, Ohi K, et al.
A functional polymorphism in the Disrupted-in schizophrennia 1 gene is associated with chronic fatigue syndrome.
Life Sciences , 86 , 722-725  (2010)
原著論文15
Tanaka M, Mizuno K, Fukuda S, et al.
Personality and fatigue in medical students.
Psychol Rep , 106 (2) , 567-575  (2010)
原著論文16
Shigihara Y, Tanaka M, Tsuyuguchi N, et al.
Hazardous nature of high-temporal-frequency strobe light stimulation: neural mechanisms revealed by magnetoencephalography.
Neuroscience , 166 (2) , 482-490  (2010)
原著論文17
田島世貴、 山口浩二、 倉恒弘彦
生理学的バイオマーカーによる疲労の計測
アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学会雑誌 , 6 (3) , 329-334  (2010)
原著論文18
倉恒弘彦、 田島世貴、 小川 正
女子大学生における疲労・抑うつと食生活、栄養摂取との関連について
Functional Food , 3 (4) , 305-317  (2010)
原著論文19
倉恒弘彦、 田島世貴、 大川尚子、他
精神作業疲労に対する森林浴の疲労回復効果
日本疲労学会誌 , 5 (2) , 35-41  (2010)
原著論文20
Sakudo A, Kato YH, Kuratsune H et al.
Non-invasive prediction of hematocrit levels by portable visible and near-infrared spectrophotometer.
Clin Chim Acta. , 408 (1) , 123-127  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201122015Z