わが国のアルコール対策の評価と成人の飲酒行動に関する研究

文献情報

文献番号
201120064A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国のアルコール対策の評価と成人の飲酒行動に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-循環器等(生習)・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
神田 秀幸(福島県立医科大学 医学部衛生学・予防医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学 医学部環境予防医学分野)
  • 大井田 隆(日本大学 医学部公衆衛生部門)
  • 谷畑 健生(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 樋口 進(久里浜アルコール症センター)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部衛生学・公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,470,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年5月の世界保健機関(WHO)総会にて、アルコールによる健康影響や死亡を減少させるため、「アルコールの有害な使用を軽減するための世界戦略」が採択された。そこで、わが国でアルコールの有害な使用を軽減するために、平成23年度の本研究は、これまでの国内のアルコール対策の変遷とその評価に関して既存資料を分析し、アルコールの有害な使用と過去の予防対策の効果を明らかにすることを目的とした。
研究方法
 調査に用いた資料は、国民健康・栄養調査、国税庁や警察庁、児童相談所関報告の公表資料、および海外を含めた学術論文などとした。
 調査は、わが国のアルコール関連指標に関する推移、アルコール関連疾患による経済損失、外国におけるアルコール症とアルコール対策の現状を主な検討内容とした。
結果と考察
 わが国における近年の酒税率の変更は、国民の消費量に大きな影響を与えず、アルコール推定消費量はほぼ一定に推移していた。また交通死亡事故低減に対する飲酒運転の厳罰化の効果はおよそ5年程度しかもたず、それ以降にはさらなる厳罰化が行われる変遷であった。児童虐待加害者(保護者)のアルコール依存の割合は、児童虐待防止法施行以降、それまで10%前後であった割合が4%程度に低下し維持されていることがわかった。また、アルコール関連疾患による経済損失に関し、毎日日本酒換算3合以上の多量飲酒者は他群に比べ、10年間平均で月2000円多く医療費を消費していることが分かり、多量飲酒は医療費の面からもハイリスク群であることが示唆された。
 また、海外の関連論文のレビューを行ったところ、アルコール消費と健康障害に関する価格政策の効果の検討の中で、イングランドでは10%の値上げの場合には消費が4.4%減少し、死亡・入院・医療費の減少となることが報告されていた。
結論
本年度の研究は、これまでの国内のアルコール対策の変遷とその評価や外国で行われているアルコール対策に関して既存資料を分析し、アルコールの有害な使用と過去の予防対策の効果について検討することができた。欧州で広く導入されているアルコールの価格政策による規制は、わが国ではその効果が大きく期待できないことが考えられた。わが国の国状や文化にあった総合的なアルコール対策の推進が求められると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120064Z