保健・医療の栄養管理サービスの評価に基づく専門的人材育成のシステム構築に関する研究

文献情報

文献番号
201120038A
報告書区分
総括
研究課題名
保健・医療の栄養管理サービスの評価に基づく専門的人材育成のシステム構築に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)・指定-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 ちぐさ(兵庫県立大学 環境人間学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中坊 幸弘(川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 実践栄養学科)
  • 小松 龍史(同志社女子大学 生活科学部)
  • 奈良 信雄(東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター)
  • 永井 成美(兵庫県立大学 環境人間学部)
  • 赤松 利恵(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,270,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
管理栄養士養成の卒前教育(4年)と卒後教育(5年程度)が連動して機能するようなシステム構築を目指し、基礎資料を蓄積する。
研究方法
本研究課題の1年目に開発した4年制管理栄養士養成施設の学生が卒業時点で到達すべきコンピテンシー40項目を基本として、大学院生用(4年生卒業時と同じ内容の40項目:基本コンピテンシー4項目、共通コンピテンシー29項目、職域別キャリアコンピテンシー7項目)、栄養管理実践現場の初任者用(4年生卒業時と同じ内容の40項目に初任者用の独自項目18を追加した合計58項目:同様に、4項目、33項目、21項目)とした。
管理栄養士養成施設を持つ大学の大学院(76施設)に在籍する修士課程の大学院生を対象とし、2011年10月に各施設に質問紙と回答用マークシートを送付した。実践現場の初任者は、日本栄養士会の協力を得て会員データベース(個人票)から生年月日と管理栄養士資格の2条件を満たす8,220名を抽出し、2011年9月下旬に質問紙と回答用マークシートを登録された住所に個人毎に送付した。
結果と考察
大学院生461名(回答率87.8%)、初任者3,055名(回答率37.2%)から回答を得た。コンピテンシー到達度を昨年度調査した4年生卒業時点(卒前)、大学院生、初任者で、「十分にできる」または「できる」と回答した場合を高達成度として比較した。50%以上の者が高達成度であった項目は、共通コンピテンシーでは、卒前29項目中13項目(44.8%)、大学院生29項目中15項目(51.7%)、初任者33項目中21項目(63.6%)であった。一方、職域別キャリアコンピテンシーでは、卒前、大学院生ともに7項目中0項目、初任者は21項目中9項目(42.9%)であった。初任者において職域キャリアコンピテンシーの高達成度者が多いのは当然であるが、共通コンピテンシーについても、卒前、大学院生、初任者の順に高達成度の項目数が増えていた。しかし、初任者であっても高達成度の者の割合が20%未満と低い共通コンピテンシーの2項目「個人や地域の栄養課題の解決のために、調査研究を計画・実施する」及び「調査研究により得られたデータについて、適切な集計・統計方法を選択し、解析する」では、卒前でそれぞれ27.7%と24.1%、大学院生で37.1%と31.1%と低値ながらも初任者より高かった。
結論
管理栄養士の卒前・卒後教育の問題点が明らかにされた。今後、本研究で蓄積された資料を活用し、科学的評価に基づく管理栄養士教育の改革が可能となる。

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201120038B
報告書区分
総合
研究課題名
保健・医療の栄養管理サービスの評価に基づく専門的人材育成のシステム構築に関する研究
課題番号
H22-循環器等(生習)・指定-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
伊達 ちぐさ(兵庫県立大学 環境人間学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中坊 幸弘(川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科)
  • 吉池 信男(青森県立保健大学 健康科学部)
  • 石田 裕美(女子栄養大学 実践栄養学科)
  • 小松 龍史(同志社女子大学 生活科学科)
  • 奈良 信雄(東京医科歯科大学 医歯学教育システム研究センター)
  • 永井 成美(兵庫県立大学 環境人間学部)
  • 赤松 利恵(お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在の管理栄養士教育システムが、保健・医療サービスの場で栄養管理の専門職として、社会の要求に応えることができる人材を育成しているかを、栄養管理に関するコンピテンシー到達度を指標として検証する、及び卒前(4年)と卒後(5年程度)が連動して機能するような管理栄養士教育システム構築を目指すための基礎資料を蓄積する。
研究方法
管理栄養士養成施設4年生卒業時点(卒前)、実践栄養系大学院生(修士課程で管理栄養士免許取得者)、実践現場の初任者、それぞれのレベルでの栄養管理に関するコンピテンシーの指標を開発し、その到達度を評価した。また、管理栄養士養成施設のシラバスをコンピテンシー到達度の観点から事例的に検討し、到達度の高いカリキュラムの特徴を検討した。
結果と考察
卒前、大学院生、初任者のそれぞれの立場でのコンピテンシー到達度を、わが国で初めて把握できた。この到達度は、現在の管理栄養士の卒前教育、大学院における実践栄養学教育、卒後教育の現状を反映しているものと考えられる。すなわち、卒前、大学院、初任者の各レベルにおけるコンピテンシー到達度の標準値として利用が可能である。これらを用いることにより、A 各養成施設において、コンピテンシー到達度を自己評価することにより、各養成施設における教育内容の充実を図ることを可能にした。B 卒前と大学院生の到達度を比較する、あるいは社会人院生と学部から直接大学院に入学した院生の到達度を比較することにより、実践栄養学分野の大学院教育の充実を図ることを可能にした。C 公衆栄養、臨床栄養、給食経営管理の実践現場において、初任者が管理栄養士の職域コンピテンシー項目到達度を自己評価することにより、栄養管理業務の質の向上を図ることを可能にした。
到達度が高い養成施設の特徴をシラバスの面から検討するため、シラバスを収集できた97施設のうち、コンピテンシー合計得点が上位10%の施設(11施設)を取り上げた。第1位の施設は他の施設より突出して到達度の得点が高かったが、2位以下の施設間ではほぼ近似した得点であった。コンピテンシー到達度が高い第1位の施設のカリキュラムの特徴は、実習科目が多く、学外で行う実習が多いことであった。
結論
卒前、大学院、初任者の各レベルにおいて、コンピテンシー到達度を自己評価することにより、卒前・卒後教育の質の向上が期待できる。また卒前教育においては、臨地実習の有り方を見直す必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120038C

成果

専門的・学術的観点からの成果
米国の登録栄養士では、登録時、実務者、教育者のすべてのレベルでコンピテンシーが開発されている。登録時の到達度は、栄養専門職としての教育を受ける学生の達成目標にもなっている。本研究では、わが国で初めて管理栄養士の卒前教育レベル、実践栄養系大学院生(修士)レベル、初任者(卒後5年程度)レベルで管理栄養士のコンピテンシーを開発し、その到達度をこれらの3レベルで明らかにした。これらの結果によって、わが国の新カリキュラムによる管理栄養士教育の科学的評価を可能にした。
臨床的観点からの成果
本研究で作成したコンピテンシーモデルは、管理栄養士としての基本・共通・職域別コンピテンシーの3種類のコンピテンシーから構成されている。職域別コンピテンシーは、臨床栄養、公衆栄養、給食経営管理の各職域で特に重要となる専門的実践能力である。臨床栄養の実践現場で働く管理栄養士が、コンピテンシーの到達度を自己評価することにより、臨床現場における栄養管理業務の質の向上図ることを可能にした。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドラインの開発には関与していない。しかし将来、管理栄養士国家試験出題基準(ガイドライン)が改定される際には、本研究のコンピテンシー到達度データが重要な資料として活用できる。
その他行政的観点からの成果
本研究で開発されたコンピテンシー項目を、全国の管理栄養士養成施設において学生の到達度を自己評価することにより、教育内容の充実を図ることを可能にした。また、実践栄養分野の大学院生(修士課程)において社会人入学の院生と学部から直接進学した院生のコンピテンシー到達度を比較・分析することにより、実践栄養分野の大学院教育の充実化を図ることを可能にした。
また、臨地実習の重要性をコンピテンシー到達度という数値で示すとともに、現時点で可能な臨地実習の改善方法を提言した。
その他のインパクト
管理栄養士養成施設教員を対象に本研究結果をもとにして研修会を開催し、教員が学生の卒業時点でのコンピテンシー到達度を把握・評価する理論や方法を修得することによって、各施設のカリキュラムの見直しや体系化を効率的に行うことができるようになる。本年8~9月に、コンピテンシーに関するいくつかの研修会(全国栄養士養成施設協会、東京都栄養士会、山口県立大学)が既に企画されている。

発表件数

原著論文(和文)
3件
うち、2編は資料として掲載された(査読有)
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
赤松利恵、永井成美、長幡友実、他
管理栄養士に関する基本コンピテンシーの高い学生の特徴
栄養学雑誌 , 70 (2) , 110-119  (2012)
原著論文2
永井成美、赤松利恵、長幡友実、他
卒前教育レベルの管理栄養士コンピテンシー測定項目の開発
栄養学雑誌 , 70 (1) , 49-58  (2012)
原著論文3
長幡友実、赤松利恵、吉池信男、他
管理栄養士養成課程学生の卒業時点におけるコンピテンシー到達度
栄養学雑誌 , 70 (2) , 152-161  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-10-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120038Z