生活習慣病対策における行動変容を効果的に促す食生活支援の手法に関する研究

文献情報

文献番号
201120020A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病対策における行動変容を効果的に促す食生活支援の手法に関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部 食生態学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 足達 淑子((財)日本予防医学研究会)
  • 坂根 直樹(独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター))
  • 西村 節子((財)大阪府保健医療財団大阪府立健康科学センター)
  • 赤松 利恵(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)
  • 林 芙美(千葉県立保健医療大学健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診・特定保健指導において,肥満の改善につながる食を中心とした支援手法を体系化し,その普及と実行可能性の検討を目的とした。最終年度である平成23年度は,2年間の量的・質的減量成功・非成功要因の検討結果をふまえ,「脱メタボリックシンドローム用 食・生活支援ガイド」を開発し,その実行可能性を検討した。その他の全体研究および個別研究については,文字数の関係で割愛する。
研究方法
1. 初回面接,継続支援,最終評価時別に,支援の流れを整理したアルゴリズムと,支援者用セルフチェックシート,及び関連教材から構成される「食・生活支援ガイド」を開発し,平成23年8-9月に全国7か所で主に管理栄養士を対象に約5時間の研修会を開催した。研修会開始時と終了時(集合法),および3か月後(郵送法)に,ガイドにそった支援スキル18項目のセルフエフィカシ―(SE)を5段階で尋ねた.
2.埼玉県内H健診機関で特定保健指導にガイドを導入し,平成23年9月から翌年1月迄に積極的支援を受けた25名を介入群とし、平成21年度(30名)及び平成22年度(24名)の同時期に積極的支援を受けた者を比較群として,ガイド導入の効果を検討した。
結果と考察
1. ガイド研修会参加者(458名)は,研修会後に「やる気のない人に対し適切な対応をする」,「対象者が自分の体調や体型をどのように考えているか的確に把握する」など18項目全てでSEが有意に高くなった。 3か月後調査時にガイド活用者(70名)は,非活用者(121名)に比べ,「押しつけでなく,対象者が自分で実行できそうと思えることを目標として設定する」,「本人の工夫や努力を評価し誉める」のSEが有意に高かった。
2.H健診機関におけるガイド導入後の体重変化量は-1.28±1.46kg(体重変化率では-1.77±2.04%)であり,初回面接時間及びBMIを共変量とした共分散分析の結果,平成21年度(0.13±1.36kg),平成22年度(0.04±0.91kg)に比べて有意に大きかった。また約1カ月半後の継続支援までに1kg以上の減量をした者は,ガイド導入後は64.0%と、平成21年度(30.0%),平成22年度(29.2%)に比べ有意に多かった。
結論
「食・生活支援ガイド」は管理栄養士の支援スキルを高め,導入により一層の減量効果が期待されると示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-

文献情報

文献番号
201120020B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病対策における行動変容を効果的に促す食生活支援の手法に関する研究
課題番号
H21-糖尿病等・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部 食生態学研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 足達 淑子((財)日本予防医学研究会)
  • 坂根 直樹(独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター))
  • 西村 節子((財)大阪府保健医療財団大阪府立健康科学センター)
  • 赤松 利恵(お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科)
  • 林 芙美(千葉県立保健医療大学健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診・特定保健指導における,1. 身体指標(主に肥満)の改善につながる食生活を中心とした支援手法の整理,体系化,2.その支援手法を管理栄養士等保健医療職に普及するための実行可能性の検討,3.食生活習慣変容が困難な非成功事例の抱える心理的・社会的要因の検討,以上を目的とした。
研究方法
1及び3の目的に対し,既存データ等を用いた減量の成功および維持要因の検討,グループ支援の効果に関する検討,減量の成功および非成功事例への個別インタビューによる要因の深い検討(質的研究),減量中の障害や誘惑場面の対処に関する研究と教材開発,を行った。以上の結果をふまえ,2の目的に対し,初回面接,継続支援,最終評価時別に,支援の流れを整理したアルゴリズムと,支援者用セルフチェックシート,及び関連教材から構成される「食・生活支援ガイド」の開発と実行可能性試験,初回面接直後問診票および6か月後評価時問診票を作成し減量との関連を検討した。
結果と考察
1. 減量の成功要因として,①約1カ月後の減量の実感がその後の成功に関与,②食生活では行動目標として設定したこと以外の、自分なりの工夫による食生活改善や,誘惑場面での認知的対処を出来ることが全ステージを通じて重要,③無理のない行動目標や取組みは重要だが、効果が期待できるものか確認が必要,④飲酒や喫煙が減量の阻害要因である可能性が示唆されたことから、飲酒や喫煙も考慮しつつ,食生活支援を行う必要,以上が示唆された。
2.「食・生活支援ガイド」を用いて全国7か所で研修会を実施した結果,ガイドは管理栄養士の支援スキルを高めることが示唆された。また埼玉県内の1健診機関で平成23年秋以降にガイドを導入した結果,導入後の体重変化量および変化率は,平成21年度,平成22年度の同時期の対象者に比べ有意に大きかった。
3. 勤労男性の減量の非成功要因として,生活習慣改善の必要性や危機感がなく,勝手な思い込みや不合理な信念を有すること,また,仕事の多忙と本制度そのものへの不信感との関連が示唆された。
結論
本研究班で開発した「食・生活支援ガイド」は管理栄養士の支援スキルを高め,導入により一層の減量効果が期待されると示唆された。また,本研究により明らかになった減量成功及び非成功要因は,今後の制度の見直しに活用できるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
特定健診の減量成功者および非成功者への個別インタビューによる質的研究を実施したことにより,従来の量的検討では十分に明らかにできなかった減量中の対象者の認知の変化など深い要因を明らかにし,初回面接から1年後健診までの減量成功に至る流れを整理できたこと(林他:特定保健指導対象の職域男性における減量成功の条件とフロー:個別インタビューによる質的検討,日本公衛誌. 2012;59:171-182)。
臨床的観点からの成果
なし
 本研究では主に健常人または軽度の検査異常を有する者を対象としたが,本研究で得られた支援方法の要点は,特定保健指導のみならず,臨床現場における減量を中心とした栄養・食事指導に応用可能と考える。
ガイドライン等の開発
研究班で「脱メタボリックシンドローム用 食・生活支援ガイド」を開発した。このガイドは,初回面接,継続支援,最終評価時の3場面別に,支援の流れを整理したアルゴリズムと,支援者が自分の支援状況を振り返るためのチェックシート,及び関連教材から構成される。作成上留意した点は,既存の支援プログラムや教材を変更することなく,導入可能なものにする点であった。研究協力者の1機関で導入した結果,導入に伴う大きな負担はなく,また,ガイド導入により減量に望ましい効果が示された。今後,日本健康教育学会のHPで公開予定。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省「健診・保健指導の在り方に関する検討会」に研究協力者の松岡幸代(京都医療センター研究員)が委員として参加,第3回(平成24年2月6日)に,特定健診の初回面接のあり方について発言。
標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)等の改定案作成ワーキング(代表,横山徹爾 国立保健医療科学院生涯健康研究部長)に,研究協力者の奥山恵(東松山医師会病院健診センター管理栄養士)が参加,第3回ワーキング(平成24年3月22日)にて,保健指導教材の改定の一案として「食・生活支援ガイド」を紹介。
その他のインパクト
平成24年2月24日に,東京国際フォーラムにて,一般向け成果発表会を開催し,「食・生活支援ガイド」を用いた特定保健指導における効果的な支援へのポイントを紹介した。当初100名の予定を上回る,134名の参加者(管理栄養士64%,保健師22%)が得られた(会場の定員を超え参加を断った者あり)。開催後のアンケートでは,全体として「大変よかった」67%,「食・生活支援ガイド」は「多いに参考になった」72%と良好な反応が得られた。その後,参加した健保組合担当者等から個別の研修会依頼も複数受けている。

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
79件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
厚労省「健診・保健指導の在り方に関する検討会」に参加し,特定健診の初回面接のあり方について発言。標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)等の改定案作成ワーキングに参加,「食・生活支援ガイド」を紹介。
その他成果(普及・啓発活動)
3件
「脱メタボリックシンドローム用 食・生活支援ガイド」活用研修会, 「第15回日本糖尿病教育・看護学会日本学術会議臨床医学委員会・健康生活科学委員会合同生活習慣病対策分科会共催シンポジウム」等

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
溝下万里恵,赤松利恵,玉浦有紀,武見ゆかり
成人男性における体重管理のセルフエフィカシー-クラスター分析を用いた検討-
日本健康教育学会誌 , 19 (1) , 26-35  (2011)
原著論文2
新保みさ,赤松利恵,玉浦有紀,武見ゆかり
セルフエフィカシーを用いた体重管理における無関心期の検討
日本健康教育学会誌 , 20 (1) , 41-50  (2011)
原著論文3
溝下万里恵,赤松利恵,山本久美子,武見ゆかり
生活習慣変容ステージは健康行動の実施と一致しているか-特定健康診査における標準的な質問票を用いた検討-
栄養学雑誌 , 69 (6) , 318-324  (2011)
原著論文4
玉浦有紀,赤松利恵,武見ゆかり
体重管理における誘惑場面の対策尺度の作成
栄養学雑誌 , 68 (2) , 87-91  (2010)
原著論文5
新保みさ,赤松利恵,玉浦有紀,武見ゆかり
体重管理における誘惑場面ごとのセルフエフィカシーと対策との関連
日本健康教育学会誌  (2012)
原著論文6
玉浦有紀,赤松利恵,武見ゆかり
フォーマティブ・リサーチに基づいた職域における体重管理プログラムに関する事例的研究
栄養学雑誌 , 68 (6) , 397-405  (2010)
原著論文7
山本久美子,赤松利恵,玉浦有紀,武見ゆかり
成人男性における健康的な食生活のためのソーシャルサポートと野菜摂取の関連
女子栄養大学栄養科学研究所年報 , 17 , 85-90  (2011)
原著論文8
溝下万里恵,赤松利恵,山本久美子,武見ゆかり
メタボリックシンドロームと生活習慣および体重変化の関連の検討
栄養学雑誌 , 63 (3)  (2012)
原著論文9
林芙美,赤松利恵,蝦名玲子,西村節子,奥山恵,松岡幸代,中村正和,坂根直樹,足達淑子,武見ゆかり
特定保健指導対象の職域男性における減量成功の条件とフロー:個別インタビューによる質的検討
日本公衆衛生雑誌 , 59 , 171-182  (2012)

公開日・更新日

公開日
2017-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,100,000円
(2)補助金確定額
8,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,081,701円
人件費・謝金 2,199,070円
旅費 3,310,294円
その他 1,556,082円
間接経費 0円
合計 8,147,147円

備考

備考
外国旅費および消耗品の一部に、見積金額と実績で差額が生じたため。

公開日・更新日

公開日
2015-10-08
更新日
-