成人に達した先天性心疾患の診療体制の確立に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
201120015A
報告書区分
総括
研究課題名
成人に達した先天性心疾患の診療体制の確立に向けた総合的研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 森崎隆幸(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
  • 中西宣文(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 池田智明(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
  • 中西敏雄(東京女子医科大学 循環器小児科)
  • 丹羽 公一郎(聖路加国際病院 循環器内科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター 循環器科)
  • 八尾 厚史(東京大学医学部 循環器内科)
  • 赤木 禎治(岡山大学病院循環器疾患治療部)
  • 市田蕗子(富山大学医学部 小児科)
  • 松井三枝(富山大学医学部 心理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人先天性心疾患患者の診療には、患者の複雑な血行動態を十分に理解するとともに、続発症、生活習慣病の影響、再手術の適応の問題、女性では妊娠出産の問題、社会自立の問題とそのサポート、遺伝の問題、などを総合的に診てゆかねばならない。そのためには、縦割りでない複数の専門家の連携を必要とするハイブリッド型の診療体制を全国に確立させることが不可欠である。本研究では成人先天性心疾患患者の抱える様々な問題点を調査研究するとともに、専門施設の認定と確立、専門医師教育システムの提言、社会心理的問題の対策、医療支援体制の充実への支援などを行う。
研究方法
平成23年度は以下の研究をおこなった。
1.成人先天性心疾患の診療実態調査と遠隔医療支援システムの確立に向けた研究
2.循環器内科ネットワークの確立
3.循環器内科における全国調査
4.小児病院に通う先天性心疾患患者の望ましい成人医療への移行のあり方に関する調査
5.患者会に参加する成人先天性心疾患患者の社会生活に関する研究
6.教育プログラム、研修(小児循環器医、循環器医)の具体的なカリキュラム策定
7.成人先天性心疾患患者の心理・行動の特徴とその関連要因の検討
8.成人期に診断される心房中隔欠損症
9.先天性心疾患を含む肺高血圧症合併妊娠の検討
10.先天性心疾患を有する女性における適切な避妊法の検討研究
結果と考察
1.患者にとって数少ない成人先天性心疾患専門医師とともに診断や治療方針の決定を行うためには、今後遠隔診断支援システムの重要になる。
2.全国の循環器内科医師による「循環器ネットワーク」を確立し、診療体制の確立や患者登録などを開始した。
3. 患者は循環器内科への転院に十分な説明を受けておらず不安を感じ、移行システムの確立が望まれる。
4.患者アンケート調査では患者の社会経済状態は良好ではなく、就労支援や医療保障制度の確立が望まれる。
5.成人先天性心疾患教育システムの確立を作成し、関連学会に提言する予定である。
6.高齢者ASD患者は心臓細動や肺高血圧の合併が多く、その診断には専門の超音波技師の養成が必要である。
7.肺高血圧患者では妊娠出産に伴い心機能が悪化し死亡例が見られ、患者の妊娠に対する注意喚起が必要である。
8.心血管疾患を有する女性には子宮内避妊システムは安全かつ有効な避妊法である。
結論
成人先天性心疾患患者には医学的な問題だけでなく、社会心理的および経済的問題が存在する。これらの患者の診療には主要専門施設の確立、専門医師の教育による養成、医療制度の改革提言など、様々な方面から患者を支援する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120015B
報告書区分
総合
研究課題名
成人に達した先天性心疾患の診療体制の確立に向けた総合的研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-016
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立循環器病研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 森崎隆幸(国立循環器病研究センター 分子生物学部)
  • 中西宣文(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
  • 池田智明(国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
  • 中西敏雄(東京女子医科大学 循環器小児科)
  • 丹羽公一郎(聖路加国際病院 循環器内科)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
  • 八尾厚史(東京大学医学部 循環器内科)
  • 赤木禎治(岡山大学病院循環器疾患治療部)
  • 市田蕗子(富山大学医学部 小児科)
  • 松井三枝(富山大学医学部 心理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在日本には約50万人の成人患者がいるとされ、年間約1万人の割合で増加している。多くの患者は、疾患特有の遺残症や続発症に加えて、高血圧、肥満、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まる。女性では妊娠や出産に際するリスクが加わる。本研究では、今後さらに増加の一途をたどる成人先天性心疾患患者が日本全国どこでも安心して診療を受けることができる診療体制を構築すること、成人先天性心疾患を担当する医師を養成するための教育体制を構築すること、そして成人先天性心疾患の臨床および病態研究が循環器学の一分野として確立されることを到達点とする
研究方法
1. 全国的な臨床調査をもとにした成人先天性心疾患診療の現状把握を行う。その結果を分析するとともに、既存の欧米施設のデータと比較し、日本における成人先天性心疾患診療体制の方向性を決定する。
2. 小児循環器科、循環器内科、心臓血管外科、産婦人科、麻酔科、臨床心理など複数診療科の参加による、成人先天性心疾患診療の代表モデル施設作りに向けた具体的目標設定を行う。
3. 循環器内科および小児循環器の研修医や専攻医に向けた成人先天性心疾患の臨床研修プログラム、さらには専門スタッフ養成のためのトレーニングプログラムを作製する。
4.成人先天性心疾患の診療および研究が循環器学の1部門として独立認識されるよう、学会や研究会での教育啓蒙活動を積極的に行う。さらに社会的な認知を目的として市民公開講座を全国的に展開する。
結果と考察
1.、1997年には523,682人のCHD患者がおり、そのうち小児は217,084 (42%)人、成人は306,598 (58%)人で、成人患者数は小児患者数とほぼ同数であった。さらに2007年には442,773人の成人先天性心疾患がおり、1997―2007年では年間13,000 人の成人患者数が増え、成人患者数が小児を凌駕していた。
2. 全国138施設の循環器内科のアンケート調査では、14施設が欧米の成人先天性心疾患施設基準を満たした。現時点では日本全国における1候補施設あたりの人口は910万人であった。
3.日本小児循環器学会専門医、循環器専門医研修カリキュラムの内容を検討し、成人先天性心疾患の診療体制の確立に向け、教育プログラム、研修(小児循環器医、循環器医)の具体的なカリキュラム策定を行った。
結論
成人先天性心疾患集約施設の選定に向けた方向性を示すことができた。教育研修カリキュラム案を今後は日本先天性心疾患学会、日本循環器学会、日本小児循環器学会に提出して関係者一同で協議し、カリキュラムおよび認定医/専門医制度決定に向けての作業に入る予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120015C

成果

専門的・学術的観点からの成果
成人先天性心疾患患者およびその医療体制に対する実態調査を行い、医学的な問題点のみならず社会的な問題点を明らかにした。今後は関連学会とともに専門施設や専門医師を充実させる予定である。また成人先天性心疾患には、これまでの虚血性心疾患や左心不全を主体とした循環器病学とは異なり、心臓の構造異常に基づく複雑な血行動態、右心機能不全、肺循環障害、構造異常に起因する不整脈など、診療体制も問題以外にも学術的に解決しなければならない問題点が多い。今後はこれらの研究にもつなげてゆきたい。
臨床的観点からの成果
日本における成人先天性心疾患診療体制の問題点が明らかになった。欧米諸国の医療体制より15~20年は遅れをとっていると感じられた。これらの問題点を学会や研究会で発表し論文にもまとめた。また新聞にも掲載し、成人先天性心疾患患者の抱える多くの問題点を一般社会にも報道し啓蒙した。
ガイドライン等の開発
成人先天性心疾患専門医教育プログラムを確立した。今後関連学会に提言予定である。
その他行政的観点からの成果
現在のところ、該当なし。
その他のインパクト
1. 朝日新聞2012年3月22日朝刊、「先天性心臓病ー成人後に死角」と題された記事が掲載。1/2ページを割いた大きな紙面で、我々厚生労働科研研究班の調査内容や今後の方針が大きく報道された。
2.医学新聞Medical Tribume紙2012年4月26日紙面で、「成人先天性心疾患チーム医療の必要性を指摘」と題された全面紙面により、我々厚生労働科研研究班の調査内容や今後の方針が大きく報道された。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
10件
その他論文(和文)
32件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
37件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
新聞掲載2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ochiai R, Yao A, Niwa K et al.
Status and future needs of regional adult congenital heart disease centers in Japan.
Circ J , 75 (9) , 2220-2227  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120015Z