保健指導を中心とした地域における脳卒中及び心筋梗塞の再発予防システムとエビデンス構築に関する研究

文献情報

文献番号
201120013A
報告書区分
総括
研究課題名
保健指導を中心とした地域における脳卒中及び心筋梗塞の再発予防システムとエビデンス構築に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大森 豊緑(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 医学教育・社会医学講座 医療健康政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長束 一行(国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 横田 千晶(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 坂本 知三郎(関西リハビリテーション病院)
  • 木村 穣(関西医科大学 健康科学センター)
  • 山田 和子(和歌山県立医科大学 保健看護学部)
  • 松本 昌泰(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 森山 美知子(広島大学 大学院保健学研究科)
  • 百田 武司(日本赤十字広島看護大学)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 牧本 清子(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中・心筋梗塞は死亡率・再発率が高く、重篤な後遺症を残すため、保健指導による生活習慣やリスク要因の管理が非常に重要である。本研究は脳卒中・心筋梗塞の再発・重症化予防のための効果的な保健指導手法を開発するとともに、地域レベルでの効果的な保健指導システムの構築を目的とする。
研究方法
①保健指導の有効性を検証するため、脳卒中を発症し急性期病院に入院した患者を対象として、保健指導群と対照群に分け介入研究を実施した。現在フォローアップ中の患者174名(介入群93名、対照群81名)を対象として6ヶ月後の各種指標の評価を行った。②心筋梗塞については、心筋梗塞後患者81名を在宅生体センサー管理群(保健指導+生体センサーを用いた管理)21名、保健指導群26名、コントロール群34名に分け、6ヶ月後の状況を比較検討した。③退院後早期の再入院の状況を把握するため、A県の後期高齢者広域連合より400名の脳梗塞入院患者レセプトデータを入手し、退院後3ヶ月以内の再入院の状況について分析した。④運動や食事、サプリメント摂取による、脳卒中予防効果に関する国内外のエビデンスレベルの高い文献を収集・要約した。
結果と考察
①脳卒中後患者では、発症後6ヶ月時点で、行動目標達成度、自己効力感、うつ、QOLのほか、血圧、総/LDL-コレステロール、空腹時血糖及びFramingham Risk Scoreの各指標について統計学的に有意な改善が認められた。②心筋梗塞後患者では、保健指導群及び生体センサー管理群において血圧、体重について、統計学的に有意な改善が認められた。③A県のデータ分析の結果、退院後3ヶ月以内の再入院率をみると、男女とも「75-79歳」の再入院率が「80-84歳」「85-89歳」より高いという結果であった。④平成23年度においては約300件のエビデンス情報をJoanna Briggs Instituteのウェブサイトにアップロードした。
結論
脳卒中・心筋梗塞後の患者に対する保健指導や生体センサー管理による行動変容や心理的、生理的有効性が示唆されたことから、今後症例数をさらに増やすとともに、さらに長期(24ヶ月)亘るフォローアップを実施し、再発や医療経済学的影響などの長期的指標を含めてさらに詳細な分析評価を行う予定である。また脳梗塞については再発等による発症後早期の再入院の実態が明らかになったことから、高齢者のうちでも特に比較的若い「75-79歳」の群への積極的アプローチの重要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120013B
報告書区分
総合
研究課題名
保健指導を中心とした地域における脳卒中及び心筋梗塞の再発予防システムとエビデンス構築に関する研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-014
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
大森 豊緑(公立大学法人名古屋市立大学 大学院医学研究科 医学教育・社会医学講座 医療健康政策科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 長束 一行(国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 横田 千晶(国立循環器病研究センター 脳血管内科)
  • 坂本 知三郎(関西リハビリテーション病院)
  • 木村 穣(関西医科大学 健康科学センター)
  • 山田 和子(和歌山県立医科大学 保健看護学部)
  • 松本 昌泰(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 森山 美知子(広島大学 大学院保健学研究科)
  • 百田 武司(日本赤十字広島看護大学)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 牧本 清子(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中・心筋梗塞は死亡率・再発率が高く、重篤な後遺症を残すため、保健指導による生活習慣やリスク要因の管理が非常に重要である。本研究は脳卒中・心筋梗塞の再発・重症化予防のための効果的な保健指導手法を開発するとともに、地域レベルでの効果的な保健指導システムの構築を目的とする。
研究方法
①脳卒中・心筋梗塞の再発・重症化予防における保健指導の有効性を検証するため、急性期病院に入院治療後退院した患者で同意が得られた者を対象として、保健指導による介入群と非介入群に無作為に分け、無作為化比較介入研究を行った。②脳卒中を発症し入院治療を受けた患者約2000名を対象に再発・重症化の状況やそれに関連する要因を後方視的に検証した。③IT等を活用した効果的な脳卒中地域連携システムを構築するため、大阪豊能地域における地域連携パスのIT化を進めた。④脳卒中・心筋梗塞の予防に関するエビデンス情報データベースを構築するため、コクラン等の主要な情報源から、エビデンスレベルの高い文献を収集した。
結果と考察
①脳卒中については174名を対象に保健指導による介入研究を実施し、介入群では6ヶ月時点で行動目標達成度、自己効力感、うつ、QOL、各種生理学データ等の指標において統計学的に有意な改善が認められた。心筋梗塞については、対象者81名のうち保健指導群及び保健指導+在宅生体センサー管理群では、対照群に比べ血圧、体重が統計学的に有意な改善が認められ、その有用性が示唆された。②脳卒中患者について後方視的に分析した結果、重症度(mRS)、病型等が再発・重症化等の予後の予測因子となることが明らかになった。③脳卒中地域連携パスのIT化を推進するため、共用データベースの作成、FileMaker等を用いた共通システムの構築を行った。④脳卒中・心筋梗塞の予防に関するエビデンス情報データベースを構築するため、系統的な文献収集・要約等を行い、これまでに約300件の情報を収集・要約、ウェブサイトにアップロードした。
結論
これまでの前向き介入研究により、行動変容をはじめとする各種指標に改善が認められたことから、保健指導の有効性が示唆された。今後症例数を増やすとともに、長期フォローアップを行うことにより、その有効性や影響要因に関する検証が必要と考えられる。また後方視的研究により、重症度や病型等が予後に影響を及ぼすことが明らかになった。一方、地域レベルでは急性期?回復期/維持期に亘る医療連携が十分でないことから、本研究の成果等を踏まえ脳卒中・心筋梗塞後患者の再発・重症化予防のための効果的な地域連携システムの構築を目指したい。

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
脳梗塞・心筋梗塞は我が国の死因の3割を占めるとともに、再発率も高く、重篤な後遺症を残すことから、その予防は社会的に重要である。これらの疾患の治療法に関する研究は多々あるが、保健指導による再発予防に関する研究はほとんどないため、本研究は稀少かつ有用な研究である。本研究により、再発予防に対する保健指導の有効性が実証されたことの学術的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
脳卒中・心筋梗塞後の患者を対象に3ヶ月間の保健指導及び24ヶ月間のフォローアップによる介入研究を行い、行動目標達成度、自己効力感、抑うつ等の指標及び血圧、コレステロール値等の生理学的指標の改善が認められたことは臨床的意義が大きい。またRetrospectiveな研究により、脳卒中の病型や発症時のmRSが予後の有用な指標となることが実証された。
ガイドライン等の開発
本研究を通じて、脳卒中・心筋梗塞の再発予防に向けた保健指導教材・疾病自己管理手帳を開発するとともに、認知行動科学等の理論に基づく患者教育(保健指導)プログラムを開発した。
その他行政的観点からの成果
脳卒中・心筋梗塞の再発・重症化予防は、社会的に重要な課題である。本研究の成果は今後の地域における行政機関・医療機関等が連携して、脳卒中・心筋梗塞の再発・重症化予防に取り組むための基礎資料となるとともに、本研究のノウハウを地域で活用すれば効果的な予防対策の推進が可能となる。
その他のインパクト
大阪豊能地域等において、住民(看護職、介護職等を含む。)を対象とした「脳卒中予防のための公開セミナー」を3ヶ年に亘り開催し、脳卒中予防に関する知識の普及啓発を図った。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
20件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
28件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Omori T, Kawagoe M, Moriyama M, et al.
Multifactorial analysis of factores affecting recurrence of stroke in Japan
Asia Pacific Journal of Public Health  (2012)
原著論文2
原田浩二、森山美知子、百田武司、他
心筋梗塞の再発予防に向けた地域連携と患者教育の実態調査
日本医療マネジメント学会雑誌 , 12 (3) , 156-160  (2011)
原著論文3
原田浩二、森山美知子、百田武司、他
脳卒中再発予防に関する医療施設の患者教育の実態調査
広島大学保健ジャーナル , 10 (2) , 124-128  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

収支報告書

文献番号
201120013Z