口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究

文献情報

文献番号
201120011A
報告書区分
総括
研究課題名
口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 雄一(国立保健医療科学院 生涯健康研究部 地域保健システム研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 花田 信弘(鶴見大学歯学部・探索歯学講座)
  • 葭原 明弘(新潟大学大学院医歯学総合研究科・口腔保健学分野)
  • 柳澤 繁孝(大分岡病院)
  • 三浦 宏子(国立保健医療科学院)
  • 森田 学(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・予防歯科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、一般集団に対して早食いと咀嚼機能低下の両面をカバーする保健指導を確立することを目的としているが、今年度は「咀嚼支援マニュアル」を完成させ、複数の介入研究を行うことと、平成17年国民健康・栄養調査等の政府統計利用による食品・栄養摂取と口腔状態や食習慣との関連についての分析に重点を置いて研究を行った。
研究方法
 介入研究では、「咀嚼支援マニュアル」を作成し、これを用いた介入研究として、市町村における特定保健指導に早食い習慣の是正を図る保健指導を上乗せする介入研究をはじめとして、職域や歯科医院の患者に対する介入研究も行った。また、特定健診受診者のなかで咀嚼に支障を来している人を見出す方法の検討も行った。観察研究として、国民健康・栄養調査等の政府統計の用いた研究、千葉県・大分県の特定健診受診者の大規模データを用いた早食いと特定健診の主要指標との関連の分析、また市町村現場における歯周疾患検診事業と特定健診・特定保健指導との連携についての実態調査を行った。
結果と考察
 介入研究では、「ゆっくりよく噛む」という行動目標を立てる人の割合が高く、早食い習慣の是正に関する保健指導は、特定保健指導の受診者にとって比較的受け入れがよいものであることが複数の研究により示された。また、早食い是正に関する保健指導を特定保健指導の受診者全員に行っている自治体における調査において、「ゆっくりよく噛む」習慣の励行度と体重減少との関連をみたところ、成功度の高い群における体重減少が大きいことが示された。
観察研究では、食品・栄養摂取が口腔状態と密接に関連していること、また食行動との関連が強いことなどが国民健康・栄養調査関連のデータを用いた分析により示された。また、特定健診受診者の大規模データを用いた分析により、食べる速さによる肥満度等の差異は、地域差を超えたものであることが確認された。市町村の現場では、歯周疾患検診と特定健診・特定保健指導の連携不十分である実態が明らかとなった。これを解消するために、関係者間で情報共有を進めていく必要性が高いと考えられる。
結論
「咀嚼支援マニュアル」を完成させたことなど、本研究班の成果により、一般集団に対して早食いと咀嚼機能低下の両面をカバーする保健指導を確立することができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201120011B
報告書区分
総合
研究課題名
口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-012
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 雄一(国立保健医療科学院 生涯健康研究部 地域保健システム研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 花田 信弘(鶴見大学歯学部・探索歯学講座)
  • 葭原 明弘(新潟大学大学院医歯学総合研究科・口腔保健学分野)
  • 柳澤 繁孝(大分岡病院)
  • 三浦 宏子(国立保健医療科学院)
  • 森田 学(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・予防歯科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、特定健診・特定保健指導に歯科の項目がないという現状に鑑み、特定保健指導の成果向上に寄与できる歯科的なアプローチとして、早食いと咀嚼機能低下の両面をカバーする保健指導を確立することを目的として、介入研究・観察研究・基礎研究を行った。
研究方法
 介入研究では、「咀嚼支援マニュアル」を作成し、これを用いて、市町村における特定保健指導に早食い習慣の是正を図る保健指導を上乗せする介入研究をはじめとして、職域や歯科医院の患者に対する介入研究も行った。また、特定健診受診者のなかで咀嚼に支障を来している人を見出す方法の検討も行った。
 観察研究としては、咀嚼回数や咀嚼能力と肥満度や食品・栄養摂取との関連について、独自の疫学調査や国民健康・栄養調査等の政府統計の利用など様々な研究を行った。さらに、咀嚼回数を測定する機器を開発し、これを用いた基礎研究も行った。加えて、外部の研究者や実践者との交流の機会を持ち、普及啓発の集会も行った。
結果と考察
 介入研究では、「ゆっくりよく噛む」という行動目標を立てる人の割合が高く、早食い習慣の是正に関する保健指導は、特定保健指導の受診者にとって比較的受け入れがよいものであることが複数の研究により示された。また、早食い是正に関する保健指導を特定保健指導の受診者全員に行っている自治体における調査において、「ゆっくりよく噛む」習慣の励行度と体重減少との関連をみたところ、成功度の高い群における体重減少が大きいことが示された。
観察研究では、特定健診受診者の大規模データを用いた分析により、早食いと肥満・メタボリックシンドロームの関連の強さが幅広い年齢層で確認された。また、咀嚼回数と肥満およびメタボリックシンドロームとの関連、栄養摂取と現在歯数の関連に自身が調理をするか否かが影響していること等、多くの知見が認められた。これらの知見を咀嚼機能が低下した人達への効果的な介入方法の検討に活かす必要がある。
結論
 「咀嚼支援マニュアル」を完成させたことなど、本研究班の成果により、一般集団に対して早食いと咀嚼機能低下の両面をカバーする保健指導を確立することができた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 従来、特定健診・特定保健指導には歯科に関する項目がなかったが、本研究班では、メタボリックシンドローム改善に寄与できる歯科的な対策として、咀嚼に支障がある人のスクリーニングと早食いに関する保健指導に着目し、「咀嚼支援マニュアル」を開発した。今後、このマニュアルが多くの市町村・職場の特定健診・特定保健指導や類似の事業に活用されることが期待される。また、咀嚼に関して様々な視点から観察研究を行ったが、学術的に従来検討されていない視点によるものが多く、今後、活用されていくと推察される。
臨床的観点からの成果
 歯科医院での受診患者に対して行った早食い習慣の是正を図る保健指導では、介入前後の3ヶ月間で有効性が認められた。また、歯科医院側の協力度も高く、半数以上が歯科医院の場でも咀嚼指導が十分可能と回答していた。歯科医師と歯科衛生士は、特定保健指導に関わることができるので、特定保健指導が将来的に歯科医院の場で行われる可能性が示唆され、今後、さらに踏み込んで検討する必要性が高いことが示された。
ガイドライン等の開発
 なし
その他行政的観点からの成果
 今回、三重県の4自治体で行った介入研究は、すでに自治体で行われている特定保健指導を基盤としたものであり、介入研究が実施されたこと自体が行政施策として取り入れられた側面を有している。また、このうちの1自治体では特定健診未受診者に対する町で行うフォローアップ事業において「咀嚼支援マニュアル」を活用した歯科関連事業が実施され、本研究班の成果が施策に取り入れられたとみることができる。
その他のインパクト
 本研究班で開発した「咀嚼回数カウンター」を用いた実験光景について、研究班メンバーが所属する研究室(鶴見大学生理学講座)が、NHK「首都圏ネットワーク」の取材を受けた。
 第70回日本公衆衛生学会(於秋田市)において、本研究班で取り組んだ内容を中心に、「口腔保健推進における多職種連携 ~その先駆的取り組み~」と題する自由集会を行った(参加者約50名)。
 研究班のウェブサイトを作成し、幅広い層に研究成果の周知を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
口腔衛生学会雑誌(2件【注】)、日本咀嚼学会雑誌(1件)。【注】この2件は、厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記されていなかったので、「主な原著論文…」には記さなかった。
原著論文(英文等)
1件
日本咀嚼学会雑誌(1件)。
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
日本公衆衛生学会(5件)、日本栄養改善学会(1件)、健康教育学会(1件)、日本咀嚼学会(4件)
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
三重県4市町で行った介入研究は特定保健指導の一環として行われた。また、このうち1町では、「咀嚼支援マニュアル」を用いた特定健診の非受診者へのフォローアップ事業に取り入れられた。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
第70回日本公衆衛生学会(於秋田市)において、本研究班で取り組んだ内容を中心に、「口腔保健推進における多職種連携 ~その先駆的取り組み~」と題する自由集会を行った>

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
塩澤光一、花田信弘
試作した“咀嚼回数カウンター”の精度について
日本咀嚼学会雑誌 , 20 (1) , 27-34  (2010)
原著論文2
Shiozawa K,Kohyama K, Hanada N
Influence of boiling time or partial cutting food on the masticatory behavior in humans
日本咀嚼学会雑誌 , 21 (5) , 40-48  (2011)
原著論文3
佐藤眞一、高澤みどり、羽生田和正、他
千葉県内市町村における歯科保健と特定健診・保健指導についての質問紙調査
千葉県衛生研究所年報 ,  (60) , 61-64  (2013)
原著論文4
佐藤眞一、柳堀朗子、中島慶子、他
千葉県内の全市町村国民健康保険特定健康診査データによる早食いと肥満の関連に関する検討
千葉県衛生研究所年報 ,  (60) , 47-52  (2013)
原著論文5
加藤佳子、濱嵜朋子、佐藤眞一、他
食習慣改善に対する態度とメタボリックシンドロームの関連 平成17年国民健康・栄養調査および国民生活基礎調査データによる解析
日本公衆衛生雑誌 , 61 (8) , 385-395  (2014)
原著論文6
塩澤光一、中道敦子、花田信弘
食べ方の違いがヒトの咀嚼行動に及ぼす影響
日本咀嚼学会雑誌 , 22 (1) , 18-25  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201120011Z