大規模コホートを用いた生活習慣病の一次予防のための運動量策定に関する運動疫学研究

文献情報

文献番号
201120008A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模コホートを用いた生活習慣病の一次予防のための運動量策定に関する運動疫学研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 秋三(九州大学 健康科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上園 慶子(九州大学 健康科学センター)
  • 眞崎 義憲(九州大学 健康科学センター)
  • 長野 真弓(京都文教大学 臨床心理学部)
  • 山津 幸司(佐賀大学 文化教育学部)
  • 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 清原 裕(九州大学 医学研究院)
  • 米本 孝二(久留米大学 バイオ統計センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,久山町の一般地域住民を対象に,身体活動・運動および体力指標としての握力と疾患別死亡率との関連性に関する大規模疫学前向き研究を行うと共に,新たに加速度計によって評価された身体活動量・不活動量の調査に加え,さらに運動による非対面および対面型の介入研究を施行し,生活習慣病の一次予防に向けた実践研究を展開する.
研究方法
久山町の地域住民の19年間の追跡調査をもとに,余暇時の身体活動量および握力が心血管病発症に与える影響を検討した.福岡県久山町の住民および福岡県と岡山県にある2企業の男性従業員,合計2378人(地域男性564人,地域女性979人,職域男性835人)を対象に,3軸加速度計センサー活動量計を用い身体活動量・不活動量を調査した.成人を対象に対面および非対面方式での生活習慣病リスク改善のための介入指導を実施した.質問紙法による、わが国の実情に即した身体活動量の定量的評価方法を確立し,それを活用した身体活動量の過不足の診断システムを開発し,最終的には身体活動量とエンドポイントとの関連を様々なコホート集団で検討した.
結果と考察
余暇時の運動習慣なし群を基準とした心疾患発症の相対危険は,他の心血管危険因子を調整後も中等度群で有意に低かった.握力は心血管病と脳梗塞発症の独立した予測因子であった.生活習慣病の一次予防のための運動量を検討するにあたり,身体活動の実態や筋力を調査する必要が示唆された. 3軸加速度計による身体活動調査において,概ね全ての年代において目標歩行数を下回り,とくに職域男性において,不活動の割合が多かった.中等度以上の活動は年齢・性別・集団に関わらず10%前後を推移することから,運動による生活習慣病の一次予防には不活動の減少も考慮に入れる必要性が示唆された. ICT環境を利用した非対面プログラムを大学職員に実施した結果,血液性状の改善が認められた.わが国の実情に即した身体活動質問紙の開発調査では,3軸加速度計との関連では質問紙と1日の平均歩行数およびエクササイズ数との明らかな量―反応関係を認めたことから,質問紙と3軸加速度計の利点を生かした活用方法を検討する必要があると考えられた.
結論
これらの情報は,日本人の生活習慣病に関する一次予防にとって極めて質の高い,我が国初の情報であることから,厚生労働行政への貢献のみならず,広く国民の健康の改善,疾病予防の向上等に貢献できる研究と考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
201120008B
報告書区分
総合
研究課題名
大規模コホートを用いた生活習慣病の一次予防のための運動量策定に関する運動疫学研究
課題番号
H21-循環器等(生習)・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
熊谷 秋三(九州大学 健康科学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 上園 慶子(九州大学 健康科学センター)
  • 眞崎 義憲(九州大学 健康科学センター)
  • 長野 真弓(京都文教大学 臨床心理学部)
  • 山津 幸司(佐賀大学 文化教育学部)
  • 内藤 義彦(武庫川女子大学 生活環境学部)
  • 清原 裕(九州大学 医学研究院)
  • 米本 孝二(久留米大学 バイオ統計センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では,久山町の一般地域住民を対象に,身体活動・運動および体力指標としての握力と総・原因別亡率および心血管系疾患発症との関連性に関する前向き研究を行うと共に,三軸加速度センサー内蔵の活動量計で評価された身体活動・不活動量の実態調査に加え,アンケートによる身体活動量評価の精度、さらには運動による対面・非対面の介入研究を施行し,生活習慣病の一次予防に向けた実践研究を展開する.
研究方法
久山町住民の19年間の追跡調査をもとに,余暇時の運動量および握力が総・原因別死亡,心血管病発症に与える影響を検討した.3軸加速度計センサー内蔵の活動量計を用い,久山町住民,福岡・岡山県にある2企業の男性従業員,合計2378人を対象に身体活動量・不活動量を調査した.成人を対象に対面・非対面方式での生活習慣病リスク改善のための介入指導を実施した.質問紙法による、わが国の実情に即した身体活動量の定量的評価方法を確立し,それを活用した身体活動量の過不足の診断システムを開発し,最終的には身体活動量とエンドポイントとの関連を検討した.
結果と考察
地域住民における余暇時の運動量と握力は,総死亡,循環器死亡,心血管病,脳卒中および脳梗塞の独立した保護因子であった.加速度計による身体活動量・不活動量の実態が明らかとなった.その結果,健康づくりのための運動基準・運動指針には,中等度以上の身体活動の増加に加え,不活動時間の減少も考慮する必要性が示唆された.また,性・年齢別,対象集団別に具体的な推奨運動量の設定が必要であると考えられた.ICT環境による非対面型介入プログラムは,メタボリックシンドロームとその予備軍への運動の動機づけを促す有用なツールであり,臨床所見の悪化は観察されないことが示唆された.疫学研究や保健指導において活用可能な身体活動質問紙を確立するため,システム化と妥当性の確認,簡略化を進めた結果,更なる改善が必要性と共に,さらに質問紙を用いた研究の必要性が示唆された.JALSPAQは幅広い研究分野に応用可能であるが,質問紙・身体活動量測定の各方法の利点・欠点を理解し,選択することが必要と考えられる.
結論
これらの情報は,日本人の生活習慣病に関する一次予防にとって極めて質の高い我が国初の情報であることから,厚生労働行政への貢献のみならず,広く国民の健康の改善,疾病予防の向上等に貢献できる研究と考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201120008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で得られた運動疫学研究の成果は、死亡と疾患発症と生活習慣因子との関連性を追求している世界的な疫学研究コホートである久山町研究において実施された研究であることから、世界的にも極めて質の高い研究成果である。具体的には、運動や筋力が死亡や心血管系疾患発症の予防因子であることを明らかにした点は評価されよう。さらに、加速度センタサー内臓の活動量計を用いた調査により新規のコホート作成が出来たことより、今後は種々の健康事象との関連性に関する前向き研究が期待される。
臨床的観点からの成果
定量化された運動や筋力が死亡や心血管系疾患発症の保護因子であることを明らかにできた点は、以下に述べる臨床的関連から評価できる。すなわち、いかなる程度の運動量や握力があれば、死亡や心血管系疾患の発症を抑制できるかといった基準値、参考値が提案できた点は、今後の厚労省が推奨しうる健康政策立案に関して有効かつ重要な証拠と考えられる。また、日本を含め世界的に蔓延しつつある身体不活動量に関して加速度計を用い定量化し、その実態を大規模な集団を対象に明らかにした点は臨床的に重要な知見である。
ガイドライン等の開発
一般地域住民の余暇時の身体活動量および握力と総死亡・原因別死亡さらには疾患発症との関連性に関する前向き研究の研究成果は、改定中の「運動基準・運動指針」策定委員会での参考資料となると考えられる。特に、握力と心血管系疾患発症との関連性には、余暇時の身体活動量の影響を調整後も両者には負の関連性(握力が高いと心血管系疾患発症は低下)が観察された点は、特筆すべき研究成果である。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
財団法人循環器病研究振興財による補助を受けて、平成23年2月18日に日本健康支援学会年次学術集会に併せて開催した。講演者は、澤田亨(東京ガス株式会社安全健康・福利室主任研究員)、田中喜代次(筑波大学教授)、熊谷秋三(九州大学教授)であった。アンケート調査の結果によると、極めて好評な評価を得ることが出来た。さらに、握力と死亡率および心血管系疾患発症との関連性に関する久山町研究の成果が読売新聞に掲載された(2月20日夕刊)。また、フジTVスーパーニュースでも研究成果が放映された。

発表件数

原著論文(和文)
8件
原著論文(英文等)
34件
その他論文(和文)
24件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
80件
学会発表(国際学会等)
24件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岸本裕代,大島秀武,野藤 悠,他
日本人地域一般住民における身体活動量の実態:久山町研究
健康科学 , 32 , 97-102  (2010)
原著論文2
Kazuko Ishikawa-Takata,Yoshihiko Naito,Shigeo Tanaka, et al.
Use of Doubly Labeled Water to Validate a Physical Activity Questionnaire Developed for the Japanese Population.
J Epidemiol , 21 (2) , 114-121  (2011)
原著論文3
Kishimoto, H., Hata, J., Ninomiya, T, et al.
Midlife and late-life handgrip strength and ris k of cause-specific death in a general Japanese population: the Hisayama Study.
J. Epidemiol . Commun. Health , 68 , 663-668  (2014)

公開日・更新日

公開日
2015-10-07
更新日
2016-06-06

収支報告書

文献番号
201120008Z