肝癌発症リスク予測システムに基づいた慢性C型肝炎に対する個別化医療の導入及びゲノム創薬への取り組み

文献情報

文献番号
201119081A
報告書区分
総括
研究課題名
肝癌発症リスク予測システムに基づいた慢性C型肝炎に対する個別化医療の導入及びゲノム創薬への取り組み
課題番号
H23-がん臨床・一般-015
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
松田 浩一(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 谷川千津(東京大学 医科学研究所 )
  • 加藤直也(東京大学 医科学研究所 )
  • 小池和彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 溝上雅史(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
  • 徳永勝士(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 高橋篤(理化学研究所 ゲノム医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,115,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌による死亡原因の第4位である肝癌の約70%がHCVの感染に起因している。最近我々はHCV陽性肝癌の疾患感受性遺伝子としてMICAを同定した。これらの知見を元に、本研究では①慢性C型肝炎患者に対する発癌リスク予測システムの構築②リスクに応じた治療方法選択による個別化医療の実現(介入試験)③MICAの活性化による肝癌予防法・治療薬の開発を目的とする。
研究方法
今年度は、具体的に以下の4つを行った。
①共同研究施設においてHCV関連疾患患者のDNA、血清及び臨床情報の収集
②肝癌発症予測遺伝子の探索
健常人約3000人、慢性C型肝炎患者1600名、HCV陽性肝硬変患者800名、HCV陽性肝癌患者約700人について約60万箇所のSNPの遺伝子型決定し、相関解析により新規の予後因子を探索。
③HBV陽性肝癌の発症関連因子の探索
SNP rs2596542のHBV陽性肝癌での臨床的意義の検討
④MICA遺伝子多型の機能解析
MICAのプロモータ領域内で発現量に影響するSNPの同定を試みた。またこのSNPと血清MICA値や発癌リスクとの関連を検討した。
結果と考察
①これまで東京大学医科学研究所、東京大学消化器内科、国立国際医療センター3施設あわせて慢性C型肝炎患者6000名、HCV陽性肝癌患者1500名のサンプルを収集した。
②MICAの遺伝子多型(rs2596542)がHCV陽性肝癌の発症リスクを2倍高める事、また高リスク群では低リスク群と比べ血中MICA濃度が低くなる(0 vs 68.5 pg/ml)事を明らかとした。さらに、HCV陽性肝硬変に対する相関解析を行った結果、MHC領域の3つの遺伝子多型が独立して肝硬変の発症リスクと関連することを明らかとした。
③rs2596542がHBV陽性肝癌の発症リスクにも関与すること、分泌型MICAが高値の肝癌症例は予後が不良となることも明らかとした。
④MICAのプロモーター解析の結果、アレル特異的な転写因子SP1の結合を明らかとした。

結論
今回の解析によって、HCV陽性肝癌の発症と関連する複数の遺伝因子を同定した。これらの知見を元に、HCVキャリアーの予後予測システムの構築を目指す。MICAはHCV陽性肝癌、HBV陽性肝癌共に高発現していることから、MICAに対する抗体を用いることによって、、抗腫瘍効果が期待できると考えられる。今後、monoclonal抗体の作成と抗腫瘍活性の検討を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119081Z