がん性疼痛治療の施設成績を評価する指標の妥当性を検証する研究

文献情報

文献番号
201119059A
報告書区分
総括
研究課題名
がん性疼痛治療の施設成績を評価する指標の妥当性を検証する研究
課題番号
H22-がん臨床・一般-036
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
的場 元弘(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科)
研究分担者(所属機関)
  • 武林 亨(慶應義塾大学 医学部衛生学公衆衛生学教室)
  • 東 尚弘(東京大学大学院 医学系研究科健康衣料政策学/公衆衛生学教室)
  • 宮下 光令(東北大学大学院 医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 加藤 雅志(国立がん研究センターがん対策情報センターがん医療支援研究部)
  • 秋山 美紀(慶應義塾大学 環境情報学部)
  • 吉本 鉄介(社会保険中京病院 緩和支持治療科)
  • 冨安 志郎(長崎市立市民病院 麻酔科診療部)
  • 岩瀬 哲(東京大学医学部附属病院 緩和ケア診療部)
  • 山口 拓洋(東北大学病院 医学系研究科医学統計学医療情報管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん臨床研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、臨床で毎日の評価が可能で、質問と回答が簡易に実施可能な内容に限定しながら、それぞれの患者の痛みの状況と疼痛治療の十分さを評価し、かつ、その結果を施設単位で集計することで、がん疼痛治療の施設成績の指標となる「除痛率」を開発する。
研究方法
青森県立中央病院のがん、またはがんの既往のある全入院患者を対象に、痛みに関する質問とQOL関連項目に関するアンケート調査を行い、追跡調査する。現状把握のための前観察期(入院日,8日目,15日目)、連続測定期(痛みを連日質問されることの影響の評価)、教育啓発期(WHO方式がん疼痛治療法に従った全部署ごとを対象にした教育介入)を実施し、病棟単位、病院全体での中等度以上のがん疼痛の改善状況(除痛率)、医療用麻薬消費量、医療者のがん疼痛に対する意識と知識の変化などについて調査し、すでに確立しているQOLとの比較から指標としての妥当性を検討する。
結果と考察
2012年2月15日入院中の患者、および2012年2月15日から29日の新規入院患者のうち同意を得られた286/490例(同意取得率55%)を予備解析の対象とした。
3回の除痛質問すべて回答した(つまり、Day15まで入院していた)患者は、153名であり、除痛対象患者はDay1で78名、Day8で93名、Day15で79名であった。これらの患者における除痛率は、それぞれ33%、42%、38%であった。除痛率は現状で高いとは言えず、改善の余地が示された。今後、痛みの治療に関する啓発活動を行い、除痛率の改善が見られれば、除痛率が施設としての痛みの治療の成績を表すと考えられる。尚、除痛を聴取する際の質問に際して回答が難しいという感想も寄せられており、今後、現場における質問に対する回答の過程などを聴取することにより、回答に至る患者の思考過程を明らかにして、質問の要諦をまとめる必要がある。
結論
がん対策基本法が求める全患者QOLの改善を達成するためには、拠点病院をはじめとする行政施策を実施する施設が、組織的に疼痛治療の改善に取り組むべきこと、および治療成績向上は、QOL向上にも直結することを示唆する成績を示すことができた。本研究班が予定している教育効果の検証において、この知見はより確実に実証される可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2013-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201119059Z