文献情報
文献番号
201118075A
報告書区分
総括
研究課題名
がん・精巣抗原を標的としたATLに対する新規免疫療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-3次がん・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
石田 高司(名古屋市立大学大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学)
研究分担者(所属機関)
- 西川 博嘉(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 実験免疫学)
- 稲垣 宏(名古屋市立大学大学院医学研究科 臨床病態病理)
- 宇都宮 與(慈愛会今村病院分院 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
研究者らはATLに対する新規免疫療法の標的として、多くの固形がんに対する免疫療法の標的抗原として臨床試験が進んでいる、がん・精巣抗原を位置づけ、以下に示す3つの項目を研究目的に掲げた。
i) HTLV-1感染からATL発症に至るまでの免疫病態の解明
ii) HTLV-1キャリアのATL発症予防法の確立
iii) ATLに対するがん・精巣抗原を標的とした新規免疫療法の開発
i) HTLV-1感染からATL発症に至るまでの免疫病態の解明
ii) HTLV-1キャリアのATL発症予防法の確立
iii) ATLに対するがん・精巣抗原を標的とした新規免疫療法の開発
研究方法
ATL患者から書面、口頭での説明の上、書面で同意を得て、リンパ節、末梢血由来のATL細胞、または血清を取得した。
がん・精巣抗原の発現は、RT-PCRおよび免疫組織染色で検討した。
また、ELISA法により10種類のがん・精巣抗原に対する液性免疫応答を解析した。NY-ESO-1に関してはCD4およびCD8T細胞免疫応答を検討した。
がん・精巣抗原の発現は、RT-PCRおよび免疫組織染色で検討した。
また、ELISA法により10種類のがん・精巣抗原に対する液性免疫応答を解析した。NY-ESO-1に関してはCD4およびCD8T細胞免疫応答を検討した。
結果と考察
結果
i) がん・精巣抗原はATL細胞に高頻度に発現している
57例のATL患者細胞の検討でNY-ESO-1 (61.4%)、MAGE-A3 (31.6%)、MAGE-A4 (61.4%)の発現を認めた。
ii) ATL患者ではがん・精巣抗原に対する液性免疫応答がみとめられる
11.6%の患者でNY-ESO-1に対する特異的液性免疫応答が認められた。
iii) ATL患者ではがん・精巣抗原NY-ESO-1に対する細胞性免疫応答がみとめられる
ATL9症例中5症例でNY-ESO-1特異的CD8+T細胞応答が同定された。
iv) がん・精巣抗原NY-ESO-1特異的CD8+T細胞は自己ATL細胞に反応する
5症例のNY-ESO-1特異的CD8+T細胞応答が同定された患者のうち1症例で自己ATL細胞が得られたため、NY-ESO-1特異的CD8+T細胞が認識し、エフェクター機能を発揮できるかを検討した。ATL患者由来NY-ESO-1特異的CD8+T細胞は自己ATL細胞を認識し、エフェクターサイトカインを産生した。
考察
ATLにおいて がん・精巣抗原が高頻度に発現していることが明らかになった。
研究者らはCCR4を分子標的とする抗体薬(ポテリジオ)の開発研究を実践してきた。ポテリジオ はCCR4陽性のATL細胞を選択的に殺傷し、免疫療法のエフェクターとなるCD8陽性細胞に対する直接作用を有さない。加えて免疫療法の障害となる内因性の制御性T細胞の除去作用を有するため、ポテリジオとがん・精巣抗原を標的とする免疫療法(ワクチン療法あるいは養子免疫療法)は有望と考えられる。
i) がん・精巣抗原はATL細胞に高頻度に発現している
57例のATL患者細胞の検討でNY-ESO-1 (61.4%)、MAGE-A3 (31.6%)、MAGE-A4 (61.4%)の発現を認めた。
ii) ATL患者ではがん・精巣抗原に対する液性免疫応答がみとめられる
11.6%の患者でNY-ESO-1に対する特異的液性免疫応答が認められた。
iii) ATL患者ではがん・精巣抗原NY-ESO-1に対する細胞性免疫応答がみとめられる
ATL9症例中5症例でNY-ESO-1特異的CD8+T細胞応答が同定された。
iv) がん・精巣抗原NY-ESO-1特異的CD8+T細胞は自己ATL細胞に反応する
5症例のNY-ESO-1特異的CD8+T細胞応答が同定された患者のうち1症例で自己ATL細胞が得られたため、NY-ESO-1特異的CD8+T細胞が認識し、エフェクター機能を発揮できるかを検討した。ATL患者由来NY-ESO-1特異的CD8+T細胞は自己ATL細胞を認識し、エフェクターサイトカインを産生した。
考察
ATLにおいて がん・精巣抗原が高頻度に発現していることが明らかになった。
研究者らはCCR4を分子標的とする抗体薬(ポテリジオ)の開発研究を実践してきた。ポテリジオ はCCR4陽性のATL細胞を選択的に殺傷し、免疫療法のエフェクターとなるCD8陽性細胞に対する直接作用を有さない。加えて免疫療法の障害となる内因性の制御性T細胞の除去作用を有するため、ポテリジオとがん・精巣抗原を標的とする免疫療法(ワクチン療法あるいは養子免疫療法)は有望と考えられる。
結論
がん・精巣抗原はATLに対する免疫療法の新規標的分子となり得る。
公開日・更新日
公開日
2015-05-20
更新日
-