ヒトATL及びHBZトランスジェニックATL発症マウスを用いた比較ゲノム解析によるATL発症機構の解析

文献情報

文献番号
201118072A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトATL及びHBZトランスジェニックATL発症マウスを用いた比較ゲノム解析によるATL発症機構の解析
課題番号
H23-3次がん・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
森下 和広(宮崎大学 医学部 )
研究分担者(所属機関)
  • 安永 純一朗(京都大学 ウイルス研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,046,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人T細胞白血病(ATL)はHTLV-1感染後に多くのゲノム異常、エピゲノム異常が蓄積し多因子による発症が考えられる。またHTLV-1 bZIP factor (HBZ) はそのTGがT細胞リンパ腫を発症することからHBZはATLの発がんに必須である。そこで我々はATL細胞およびHBZ TGマウスを用いて全ゲノム、エピゲノム解析を行い、発症の分子メカニズムを明らかにする。
研究方法
1. 各種ATL細胞を用いたゲノム異常解析(森下)
急性型ATLでのゲノム解析を元にしてくすぶり型、慢性型ATL検体についてのSNPアレイゲノム解析と網羅的遺伝子発現解析を行う。
2. ATL発症関連因子群の機能異常解析(森下)
急性型ATLのゲノム解析から、これまでにATL発症関連因子として単離したTSLC1、ZEB1、NDRG2、BCL11Bについてそれぞれ遺伝子改変マウスを作成し白血病発症を含む異常の検討を続ける。
3. HBZ-TGに発症するTリンパ腫におけるゲノム異常探索 (安永)
複数のHBZ-TG由来Tリンパ腫細胞株を樹立、NSGマウスの生体内で継代・維持、次世代遺伝子解析装置を用いて全エクソンシークエンシング(エクソーム解析)を行う。
3. HBZ発現によるエピゲノム変化の解析 (安永)
本研究ではHBZ-TG由来のTリンパ球におけるヒストンアセチル化の変化を、次世代遺伝子解析装置によるChIP シークエンスの手法を用いて包括的に比較解析する。
結果と考察
急性型ATLの発症因子群として5遺伝子を同定、TGFbeta耐性に関してZEB1失活とSmad7高発現が、PI3K/AKT情報伝達活性化にNDRG2失活が、臓器浸潤能にはTSLC1高発現が関与していた。また、HBZはEPC-1と結合し、TIP60と複合体を形成しヒストンやその他のタンパクのアセチル化修飾に関与している。急性型ATLではEPC1融合遺伝子の発現を同定したがHBZはEPC-1との結合を介し、宿主細胞にゲノム、エピゲノム異常の発生、蓄積に関与する可能性が示唆される。
結論
急性型ATL発症関連因子として複数個の因子を同定しその機能解析を行った。ゲノム異常に伴う遺伝子構造異常(EPC-1/ASXL2)、発現異常(ZEB1、NDRG2、BCL11B、TSLC1)を同定したが、一方でHBZはEPC-1、TIP60と複合体を形成することを見出した。EPC-1の機能異常による発がんにおける意義について現在解析中である。今回の結果を基にさらにHTLV-1感染症からATLへの発症の道筋を明らかにすることが可能である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118072Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,059,000円
(2)補助金確定額
13,059,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,037,003円
人件費・謝金 0円
旅費 173,730円
その他 835,267円
間接経費 3,013,000円
合計 13,059,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-10-06
更新日
-