難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発

文献情報

文献番号
201118026A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性小児がんに対する組織的・包括的取り組みに基づく臨床的特性に関する分子情報の体系的解析と、その知見を活用した診断・治療法の開発
課題番号
H22-3次がん・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
清河 信敬(独立行政法人 国立成育医療研究センター 研究所 小児血液・腫瘍研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 中澤 温子(中川 温子)(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
  • 森 鉄也(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
  • 大喜多 肇(独立行政法人 国立成育医療研究センター)
  • 林 泰秀(群馬県立小児医療センター)
  • 鶴澤 正仁(愛知医科大学 医学部)
  • 小川 誠司(東京大学 医学部)
  • 大平 美紀(千葉県がんセンター)
  • 福島 敬(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
18,804,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性小児がん、特に臨床的必要性の高い疾患や稀少疾患の臨床的特性に関する分子情報の網羅的体系的解析を治療研究グループとの密接な連携や他の研究班との棲み分けにより組織的・包括的に実施し、その成果の治療層別化法としての臨床応用や新規診断・治療法開発への活用により、予後やQOL改善に役立て保険・医療への貢献を目指す。
研究方法
小児がん臨床検体に対しマイクロアレイ等による網羅的な発現遺伝子、ゲノム構造、エピゲノム解析を行った。先行研究の成果も含め、得られた分子情報に基づいてゲノム解析、定量PCR、フローサイトメトリー等による治療層別化法の開発や実用化を検討した。関連する倫理指針、法規を遵守し適切な倫理手続きを行ない実施した。
結果と考察
リンパ芽球性白血病/ALLの難治例の予測法として期待される微少残存病変/MRD検出に関しIg/TCR遺伝子再構成やキメラ遺伝子を利用した定量PCR法とフローサイトメトリー法の本邦での実用化を進めて臨床的有用性を確認した。上記併用によりほぼ全例でMRD検出可能と考えられた。欧米でT-ALLの難治性亜群とされるETP-ALLにつき蛋白遺伝子発現解析により本邦での発症頻度が20.5%であること、現行の治療で欧米程は予後不良でない可能性を示した。
AMLの正常核型の症例の一部、全体の3.6%にNUP98-NSD1再構成を有する症例が含まれ予後不良の亜群である可能性を示した。
骨肉腫のゲノム情報解析により12q、5p、9q領域の異常が予後と相関し治療層別化法として有用である可能性を示した。
神経芽腫群腫瘍/NBのゲノム情報に病理分類情報を組み合せることで新たな層別化法としての可能性を示した。
小児腎肉腫の網羅的エピゲノム解析により病型特異的なエピゲノム様式を明らかにし特定遺伝子のメチル化が腎明細胞肉腫の鑑別診断法として有用であることを示した。
NBで短縮型ALKを見出し、細胞株への発現により自己リン酸化や下流分子の活性化による造腫瘍能を有すること、治療標的となりうることを示した。
結論
難治性小児がんで最も頻度が高いALLの分子情報に基づく難治例層別化法の本邦での実用化を進め、骨肉腫や腎肉腫などの分子プロファイリングを行ない治療層別化や新規診断法への応用を試みた。今後その臨床応用を目指すとともに、さらに分子プロファイリングを継続し新たな標的因子探索や治療開発研究への応用を視野に研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118026Z