腫瘍脈管系を標的としたがん浸潤転移とがん幹細胞制御法の確立

文献情報

文献番号
201118023A
報告書区分
総括
研究課題名
腫瘍脈管系を標的としたがん浸潤転移とがん幹細胞制御法の確立
課題番号
H22-3次がん・一般-008
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 靖史(東北大学 加齢医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高倉 伸幸(大阪大学 微生物病研究所)
  • 矢野 聖二(金沢大学 がん進展制御研究所)
  • 渡部 徹郎(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 平川 聡史(浜松医科大学)
  • 望月 直樹(国立循環器病センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
14,104,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
抗血管新生剤が臨床導入されているが、現行のVEGFシグナルを遮断する薬剤には、血管内皮細胞の障害による副作用、VEGF以外の因子への置換による耐性の問題などがある。本研究の目的は現行の抗血管新生剤の問題点を克服し、がんの浸潤転移とがん幹細胞の制御を可能とする本邦発の革新的ながん治療法を確立することである。
研究方法
佐藤は血管新生抑制因子VASH1の作用増強と、そのホモログで血管新生を促進するVASH2の作用阻害を目指す。高倉は癌組織周囲の血管成熟の制御を目指す。矢野はがん細胞の薬剤耐性に対する血管内皮の役割の解明を目指す。渡部は、BMP9を標的とした新しい治療法の開発を目指す。平川はLYVE-1のプロセシングを標的としたリンパ管新生の効果的は制御法の確立を目指す。望月は、腫瘍血管成熟のシグナル機構を解明を目指す。
結果と考察
内皮細胞の産生するVASH1は、癌細胞のcalpainによって分解・不活性化されること、癌細胞の産生するVASH2は、mir200によって負に発現調節されていることを明らかにした。腫瘍周囲組織の血管は、腫瘍内部と同様未成熟であり、血管新生抑制剤により正常化されることが解明された。本機構ががん細胞のがん周囲組織からの浸潤に関与することが示唆された。EML4-ALK変異を有する肺癌細胞のALK阻害薬耐性が血管内皮細胞が産生する液性因子によって引き起こされることを明らかにした。TGF-β2が内皮間葉移行を介してがん関連線維芽細胞の形成を誘導する新規の分子機構を明らかにした。ヒアルロン酸受容体LYVE-1のectodomain sheddingがリンパ管内皮細胞の接着を解除し、細胞遊走を誘導するために重要であることを示した。HGF やVEGFによる内皮細胞の刺激が、EphA2受容体によるSHP2のカルボキシ末端のリン酸化によってErkが活性化されることが重要であることを突き止めた。
結論
腫瘍血管新生制御の新しい分子標的としてのVASH1、VASH2、BMPファリーの機能解析を進める。腫瘍血管を正常化の意義と、それを達成するための治療法開発を目指す。薬剤耐性に対する腫瘍血管内皮の機能を明らかにする。LYVE-1のectodomain sheddingの腫瘍リンパ管新生における意義について研究を進める。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
201118023Z