文献情報
文献番号
201118020A
報告書区分
総括
研究課題名
放射線障害と宿主要因からみた発がんの分子基盤とその臨床応用に関する研究
課題番号
H22-3次がん・一般-005
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
安井 弥(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 石川 雄一((財)癌研究会癌研究所 病理部)
- 宮本 和明(呉医療センター・ 中国がんセンター 臨床研究部)
- 臺野 和広(独立行政法人放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター )
- 神谷 研二(広島大学 原爆放射線医科学研究所)
- 宮川 清(東京大学 大学院医学系研究科疾患生命工学センター)
- 林 奉権((財)放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)
- 楠 洋一郎((財)放射線影響研究所 放射線生物学/分子疫学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
13,320,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
放射線発がんの分子基盤を解明し,リスク評価や治療開発等の臨床応用に資することを目的とし,「放射線関連がんにおけるエピジェネティクス」,「放射線障害による発がんモデルにおける検証」,「原爆被爆者コホートを用いた宿主要因と発がん」について解析する。これにより,職業被曝や医療被曝等による放射線障害に対する具体的な予防策および放射線障害に起因するがんの診断法・治療法を提示することが可能となる。
研究方法
被爆者胃がん、乳がんについてmicroRNAの発現および機能、メチル化異常について解析した。病院癌登録データベースから放射線二次がんの抽出を行なった。ラットの放射線誘発乳がん,自然発症した乳がん検体および正常乳腺組織について,CpGアイランドマイクロアレイにてメチル化を解析した。複製後修復機構の制御因子であるRAD18の放射線応答への寄与を細胞生物学的に解析した。DNA修復機能に関与するSYCP3を発現と治療感受性の分子機構を検討した。CD14の遺伝子多型と大腸発がんリスク、被爆線量との関連解析を行なった。放射線感受性の個体差に関わる生物学的機序を探るための試験管内実験系の開発研究を行った。
結果と考察
胃がんでは多変量解析によりmiR-143Highは被曝関連胃がんの独立したマーカーであることが示された,乳がんの新規DNAメチル化異常およびmicroRNA発現異常を同定した。放射線二次がん候補の約1000例を抽出した。ラット乳がんモデルにおいて、放射線誘発乳がんに特徴的なDNAメチル化異常が存在することが分かった。RAD18の発現抑制は、放射線への高感受性、チェックポイントの活性化とp53・H2AXのリン酸化の抑制に関与することを見いだした。SYCP3は,BRCA2の機能を抑制し, PARP阻害剤に対する高感受性をもたらすことを明らかにした。CD14遺伝子のプロモーター領域に存在する多型が、大腸発がんのリスク要因であることを見出した。ヒト末梢血 CD34 陽性造血幹細胞における自然発生ならびに放射線誘発 γH2AX フォーカス頻度測定系を確立した。
結論
本研究の成果は,放射線障害の具体的な評価法や予防策および放射線障害に起因するがんの診断法・治療法を提示に貢献するものである。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
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