がん性疼痛患者のQOL向上のための橋渡し研究連携拠点の構築

文献情報

文献番号
201118011A
報告書区分
総括
研究課題名
がん性疼痛患者のQOL向上のための橋渡し研究連携拠点の構築
課題番号
H21-3次がん・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山田 芳嗣(東京大学大学院 医学系研究科外科学専攻生体管理医学講座麻酔学)
研究分担者(所属機関)
  • 眞下 節(大阪大学 医学部附属病院)
  • 小川 節郎(日本大学 医学部附属病院)
  • 細川 豊史(京都府立医科大学 附属病院)
  • 植田 弘師(長崎大学大学院 薬学系研究科)
  • 池田 和隆(財団法人東京都医学総合研究所 依存性薬物プロジェクト)
  • 藤原 康弘(国立がん研究センター中央病院 臨床試験治療開発部)
  • 廣瀬 宗孝(福井大学 医学部附属病院)
  • 服部 政治(癌研有明病院 麻酔科)
  • 住谷 昌彦(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
23,897,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん性疼痛の制圧を目指す橋渡し研究連携拠点を基礎医学者と臨床医が構築し、新規治療法の開発研究seedsの探索に加え、がん性疼痛患者の病態に応じたオーダーメイド医療を展開し麻薬性鎮痛薬の適正使用を普及すること、治療抵抗性がん性疼痛の征圧を目的とする。
研究方法
1.臨床現場のニーズに応える基礎研究シーズの探索と開発
a)難治性がん性神経障害性疼痛の発現機序解明とその治療応用、b)麻薬性鎮痛薬に対する耐性形成のメカニズムを解明する。
2.臨床試験プロトコールを作成し、橋渡し研究を実施する
3.がん性疼痛に対する橋渡し研究の実践:がん性疼痛患者の遺伝的素因に着目した麻薬性鎮痛薬の必要量の決定や新規治療法の探索のために一塩基多型を調査する。
結果と考察
1.臨床現場のニーズに応える基礎研究シーズの探索と開発
a)神経障害性疼痛の原因分子であるリゾフォスファチジン酸の前駆体LPCの発現増加を明らかにし、新たな治療介入の作用点を発見した。b)神経障害性疼痛の発症に5-HT2C受容体のRNA編集が関与することを明らかにした。今後の遺伝子サイレンシングによる治療介入に発展させる。c)脊髄上位中枢におけるBDNFの麻薬性鎮痛薬耐性形成への関与を明らかにし、がん化学療法剤ゲフィニティブの耐性形成抑制作用を確認した。今後のがん性疼痛患者の治療への応用を検討中である。
2.臨床試験プロトコールの作成と橋渡し研究の実施
本研究班で明らかにしてきたミクログリアの活性阻害作用を持つ抗菌薬のミノサイクリンの鎮痛効果についての橋渡し研究を行った。痛みは減少しなかったが、情動障害が改善しQOLが改善した。ミノサイクリンの脊髄上位中枢(大脳)レベルでの効果機序を、今後、基礎研究で確認する。 
3.がん性疼痛と遺伝子多型
a)ヒトcyclic AMP応答配列結合タンパク質の遺伝子多型と術後疼痛の関連を明らかにした。b)ミクログリア活性に関連するP2Y12受容体、全身炎症に関連するレジスティン、アディポネクチンなどメタボリック症候群関連サイトカインなどのがん性疼痛の重症化への関与を明らかにした。 
結論
がん性疼痛の征圧に向けて基礎研究の観点と臨床ニーズの観点の両方が相互作用的に研究展開できる橋渡し研究連携拠点を構築した。新たな治療候補となる遺伝子多型を複数同定できた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-09-29
更新日
-

文献情報

文献番号
201118011B
報告書区分
総合
研究課題名
がん性疼痛患者のQOL向上のための橋渡し研究連携拠点の構築
課題番号
H21-3次がん・一般-011
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山田 芳嗣(東京大学大学院 医学系研究科外科学専攻生体管理医学講座麻酔学)
研究分担者(所属機関)
  • 眞下 節(大阪大学 医学部附属病院)
  • 小川 節郎(日本大学 医学部附属病院)
  • 細川 豊史(京都府立医科大学 附属病院)
  • 植田 弘師(長崎大学大学院 薬学系研究科)
  • 池田 和隆(財団法人東京都医学総合研究所 依存性薬物プロジェクト)
  • 藤原 康弘(国立がん研究センター中央病院 臨床試験治療開発部)
  • 廣瀬 宗孝(福井大学 医学部附属病院)
  • 服部 政治(癌研有明病院 麻酔科)
  • 住谷 昌彦(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん性疼痛の制圧を目指す橋渡し研究連携拠点を基礎医学と臨床医で構築し、新規治療法の開発研究seedsの探索に加え、がん性疼痛患者の病態に応じたオーダーメイド医療の基盤とする。
研究方法
1.臨床現場のニーズに応える基礎研究シーズの探索と開発
a)難治性がん性神経障害性疼痛の発現機序解明とその治療応用、b)麻薬性鎮痛薬に対する耐性形成機序を解明する。
2.臨床試験プロトコールを作成し、橋渡し研究を実施する
3.がん性疼痛患者の重症因子、麻薬性鎮痛薬感受性、新規治療法の探索のための遺伝子多型を調査する
結果と考察
1.臨床現場のニーズに応える基礎研究シーズの探索と開発
a)神経障害性疼痛の原因分子としてリゾフォスファチジン酸を同定し、各種治療法の有用性を確認した。その他、5-HT2C受容体のRNA編集などを新規治療開発の基盤とした。b) BDNF, NMDA受容体NR2Aに着目し、麻薬性鎮痛薬の耐性形成をゲフィニティブで抑制した。麻薬性鎮痛薬の脳鎮痛作動部位を特定し、ドラッグデリバリシステム研究の基盤となる。c)抗腫瘍効果を持つ抗trkA受容体ペプチドの侵害受容性/炎症性疼痛および神経障害性疼痛の両病態への鎮痛効果を確認し、臨床応用を目指す。
2.臨床試験プロトコールの作成と橋渡し研究の実施
ミクログリアの活性阻害作用を持つ抗菌薬ミノサイクリンの鎮痛効果についての橋渡し研究を実施した。痛みは減少しなかったが、情動障害とQOLが改善し、脊髄上位中枢(大脳)を今後の基礎研究の対象とする。
3.がん性疼痛と遺伝子多型
ミクログリア活性に関連するP2Y12受容体、全身炎症に関連するメタボリック症候群関連サイトカインなどががん性疼痛の重症化に関連し、μオピオイド受容体などが麻薬性鎮痛薬感受性に関連することを明らかにした。新規治療法の開発やがん性疼痛の病態解明の基盤となる。
4.薬物療法の発展への寄与
神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインを発行、非がん性慢性疼痛に対する麻薬性鎮痛薬の適正使用ガイドラインを今後発行予定である。がん性疼痛に対する鎮痛補助薬の適応拡大を関連学会と連動して厚生労働省に申請した。
結論
がん性疼痛の征圧に向けて基礎研究の観点と臨床ニーズの観点の両方が相互作用的に研究展開できる橋渡し研究連携拠点を構築し、有機的な連携に成功した。新たな治療候補となる遺伝子多型を複数同定した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2017-09-29
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201118011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
がん性疼痛の克服に向け、(1)治療抵抗性の神経障害性疼痛の発症分子(リゾフォスファチジン酸)の同定とそれに続くミクログリアの活性化を脊髄レベルだけでなく脊髄上位中枢でも起こることを明らかにし、それらに基づく治療応用、(2)麻薬性鎮痛薬の反復使用による耐性形成機序におけるBDNFの役割を明らかにし、それに基づく治療応用、(3)抗腫瘍効果をもつ新規鎮痛剤(抗TrkA受容体阻害ペプチド)の開発を、臨床展開を視野に置き重点的に行った。
臨床的観点からの成果
がん性疼痛を終末期がん性疼痛とがん治療期がん性疼痛に分類し、両がん性疼痛患者の全ゲノム遺伝子多型を比較検討することにより、終末期がん性疼痛の重症化および麻薬性鎮痛薬抵抗性の原因分子としてP2Y12受容体を同定した。メタボリック症候群に関連する各種アディポカインと疼痛への関連を明らかにした。麻薬性鎮痛薬に対する鎮痛感受性の関連分子を明らかにした。臨床試験プロトコルを開発し、基礎研究に基づくミノサイクリンについての橋渡し研究を実践した。
ガイドライン等の開発
麻薬性鎮痛薬に抵抗性を示す神経障害性疼痛に対する薬物療法ガイドラインを日本ペインクリニック学会から発行(2011年7月22日)し、疼痛関連学会に教育資材として配布した。麻薬性鎮痛薬の適正使用に関する「非がん性疼痛に対するオピオイド処方ガイドライン」を日本ペインクリニック学会から2012年7月に発行予定で準備している。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省「医療上の必要性が高い未承認の医薬品又は適応の開発の要望に関する意見」を、2009年16品目、2011年15品目について日本ペインクリニック学会や日本緩和医療学会などの関連学会と連動して申請した。
その他のインパクト
(1)がん性疼痛を主体とした麻薬性鎮痛薬の投与にあたり、患者の遺伝的素因に基づくオーダーメイド医療を展開することによって、適切な鎮痛効果と副作用の最小限化を達成できる麻薬性鎮痛薬の用量設定方法を開発し、朝日新聞(2012年1月22日夕刊)に掲載された。(2)がん性疼痛を含む治療抵抗性慢性疼痛に対して運動療法が有効であることを概説し、痛みに伴うADL制限が痛みの増悪因子となっていることについての啓蒙活動を読売新聞(2011年11月17日朝刊)を通じて行った。

発表件数

原著論文(和文)
99件
原著論文(英文等)
81件
その他論文(和文)
57件
その他論文(英文等)
6件
学会発表(国内学会)
160件
ペインクリニック学会、麻酔科学会、臨床麻酔科学会、慢性疼痛学会、他
学会発表(国際学会等)
70件
IARS Annual Meeting, PAIN WEEK, ASA学会、他
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
12件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Wei-Ying Ma, E. Murata, M.Hirose, et al.
A Synthetic Cell-Penetrating Peptide Antagonizing TrkA Function Suppresses Neuropathic Pain in Mice
J Pharmacol Sci , 114 (1) , 79-84  (2010)
原著論文2
K. Ueda, M.Hirose, Eri Murata, et al.
Local Administration of a Synthetic Cell-Penetrating Peptide Antagonizing TrkA Function Suppresses Inflammatory Pain in Rats
J Pharmacol Sci , 112 (4) , 438-443  (2010)
原著論文3
Matsumoto M, Kondo S, Usdin TB and Ueda H
Parathyroid hormone 2 receptor is a functional marker of nociceptive myelinated fibers responsible for neuropathic pain
J Neurochem , 112 (2) , 521-530  (2010)
原著論文4
Nishiyori M, Nagai J, Nakazawa T, Ueda H
Absence of morphine analgesia and its underlying descending serotonergic activation in an experimental mouse model of fibromyalgia
Neurosci Lett , 472 (3) , 184-187  (2010)
原著論文5
Xie W,Uchida H,Nagai J, Ueda M,Chun J and Ueda H
Calpain-mediated down-regulation of myelin-associated glycoprotein in lysophosphatidic acid-induced neuropathic pain
J Neurochem , 113 , 1002-1011  (2010)
原著論文6
Nagai J, Uchida H, Matsushita Y, Yano R, Ueda M,Niwa M, Aoki J, Chun J, Ueda H
Autotaxin and lysophosphatidic acid1 receptor-mediated demyelination of dorsal root fibers by sciatic nerve injury and intrathecal lysophosphatidylcholine
Mol Pain , 6 (78) , 1-11  (2010)
原著論文7
Ma L, Nagai J, Ueda H
Microglial activation mediates de novo lysophosphatidic acid production in a model of neuropathic pain
J Neurochem , 115 (3) , 643-653  (2010)
原著論文8
Kobayashi T, Washiyama K, Ikeda K
Inhibition of G protein-activated inwardly rectifying K+ channels by the selective norepinephrine reuptake inhibitors atomoxetine and reboxetine
Neuropsychopharmacology , 35 , 1560-1569  (2010)
原著論文9
Shiotsuki H, Yoshimi K, Shimo Y, Funayama M, Takamatsu Y, Ikeda K, et al.
A rotarod test for evaluation of motor skill learning
J Neurosci Methods , 189 , 180-185  (2010)
原著論文10
Ichiro Sora, BingJin Li, Moe Igari,F.Scott Hall, and Kazutaka Ikeda
Transgenic mice in the study of drug addiction and the effects of psychostimulant drugs
Ann. N.Y. Acad. Sci. , 1187 , 218-246  (2010)
原著論文11
Jun Nagai and Hiroshi Ueda
Pre-emptive morphine treatment abolishes nerve injury-induced lysophospholipid synthesis in mass spectrometrical analysis
JOURNAL OF NEUROCHEMISTRY , 118 , 256-265  (2011)
原著論文12
M.Nishiyori, H.Uchida, J.Nagai, K.Araki, T.Mukae, S.Kishioka,H.Ueda
Permanent relief from intermittent cold stressinduced fibromyalgia-like abnormal pain by repeated intrathecal administration of antidepressants
Molecular Pain , 7 (69) , 1-10  (2011)
原著論文13
Soichiro Ide, Masabumi Minami, George R Uhl, Masamichi Satoh, Ichiro Sora and Kazutaka Ikeda
(-)-Pentazocine induces visceral chemical antinociception, but not thermal, mechanical, or somatic chemical antinociception, in μ-opioid receptor knockout mice
Molecular Pain , 7 (23) , 1-11  (2011)
原著論文14
Masahiko Sumitani, Arito Yozu, Toshiya Tomioka, SatoruMiyauchi, and Yoshitsugu Yamada
Complex Regional Pain Syndrome Revived by Epileptic Seizure Then Disappeared Soon during Treatment with Regional Intravenous Nerve Blockade: A Case Report
Anesthesiology Research and Practice , 1-4  (2011)
原著論文15
Masahiko Sumitani, Hiroshi Ueda, Jun Hozumi, et al.
Minocycline does not decrease intensity of neuropathic pain, but improved its affective dimension
J Pain and Palliative Care Pharmacotherapy , 30 , 31-35  (2016)

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201118011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,500,000円
(2)補助金確定額
30,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,647,463円
人件費・謝金 1,446,601円
旅費 449,699円
その他 18,353,237円
間接経費 6,603,000円
合計 30,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-09-05
更新日
-