生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201118003A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究
課題番号
H21-3次がん・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 玉腰暁子(愛知医科大学疫学・予防医学)
  • 若井建志(名古屋大学医学系研究科)
  • 永田知里(岐阜大学医学系研究科)
  • 溝上哲也(独立行政法人国立国際医療研究センター国際保健医療研究部)
  • 田中恵太郎(佐賀大学医学部)
  • 伊藤秀美(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部)
  • 笹月静(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 予防研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
52,496,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は日本人ががんを予防するために行うべき適切な生活習慣をエビデンスに基づいて提示すると同時に、実践に結びつけるための具体的方法及び行動変容支援のためのツールを開発し、わが国のがん罹患率の減少を目指すものである。
研究方法
米国国立図書館のデータベースPubMedを用いて、1) 糖尿病、メタボリックシンドローム、受動喫煙、心理社会要因、Group1発がん要因(IARC)、脂質と全がんおよび部位別がんの罹患または死亡を結果として分析した疫学研究、2) 日本に住んでいる日本人を対象にした研究、の各条件を満たす文献を検索し、これを、要因ごとにエビデンステーブルに要約する作業を行った。関連の強さを総括した上で、科学的根拠としての信頼性について、予め定めた基準に則り、研究班のメンバーによる総合的な判断によってconvincing、probable、possible、insufficientの4段階で評価し、最終判定した。
結果と考察
糖尿病に関して、肝がんおよび膵がんにおいてprobable、子宮内膜がんにおいてpossibleな関連と判定したが、その他の部位については、判定するには証拠が不十分であった。その他の主なものとして、子宮頸がんにおいて、ヒトパピローマウィルス感染(HPV16型、18型)との関連がconvincing、肺がんにおいて職業性アスベストとの関連がconvincing、受動喫煙との関連はprobableと判定した。また、効果的にがん予防を推進するための介入研究や、エビデンス構築の側面としての個別研究を進捗させた。また、Web上での複数項目への回答により10年間で男性が大腸がんを発生するリスクを算出するツールを開発し、運用を開始した。
結論
糖尿病とがんなど、重要でありながらわが国にはエビデンスが十分そろっていると言えない現状にある。今後日本人におけるがんと糖尿病との関連を見極めるためにもプーリング解析を行う必要がある。班として策定したガイドライン「日本人のためのがん予防法」をはじめとしたがん予防の知識の普及が今後必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

文献情報

文献番号
201118003B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣改善によるがん予防法の開発に関する研究
課題番号
H21-3次がん・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
津金 昌一郎(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 辻一郎(東北大学大学院医学系研究科)
  • 玉腰暁子(愛知医科大学疫学・予防医学)
  • 若井建志(名古屋大学医学系研究科)
  • 永田知里(岐阜大学医学系研究科)
  • 溝上哲也(独立行政法人国立国際医療研究センター国際保健医療研究部)
  • 田中恵太郎(佐賀大学医学部)
  • 伊藤秀美(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部)
  • 笹月静(独立行政法人国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は日本人ががんを予防するために行うべき適切な生活習慣をエビデンスに基づいて提示すると同時に、実践に結びつけるための具体的方法及び行動変容支援のためのツールを開発し、わが国のがん罹患率の減少を目指すものである。
研究方法
米国国立図書館のデータベースPubMedを用いて、1) 食事要因、栄養素、糖尿病、メタボリックシンドローム、受動喫煙、心理社会要因、Group1発がん要因(IARC)と全がんおよび部位別がんの罹患または死亡を結果として分析した疫学研究、2) 日本に住んでいる日本人を対象にした研究、の各条件を満たす文献を検索し、これを、要因ごとにエビデンステーブルに要約する作業を行った。関連の強さを総括した上で、科学的根拠としての信頼性について、予め定めた基準に則り、研究班のメンバーによる総合的な判断によってconvincing、probable、possible、insufficientの4段階で評価し、最終判定した。
結果と考察
糖尿病に関して、肝がんおよび膵がんにおいてprobable、子宮内膜がんにおいてpossibleな関連と判定したが、その他の部位については、判定するには証拠が不十分であった。その他の主なものとして、子宮頸がんにおいて、ヒトパピローマウィルス感染(HPV16型、18型)との関連がconvincing、肺がんにおいて職業性アスベストとの関連がconvincing、受動喫煙との関連はprobable、熱い飲食物と食道がんの関連がprobableと判定した。また、効果的にがん予防を推進するための介入研究や、エビデンス構築の側面としての個別研究を進捗させた。また、Web上での複数項目への回答により10年間で全がん・循環器疾患を発生するリスク、10年間で男性が大腸がんを発生するリスクを算出するツールを開発し、運用を開始した。
結論
糖尿病とがんなど、重要でありながらわが国にはエビデンスが十分そろっていると言えない現状にある。今後日本人におけるがんと糖尿病との関連を見極めるためにもプーリング解析を行う必要がある。班として策定したガイドライン「日本人のためのがん予防法」をはじめとしたがん予防の知識の普及が今後必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201118003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本人を対象とした研究を系統的にレビューし、その証拠としての確からしさを4段階に評価した。最終的に日本人にとって特に重要なものについて喫煙、飲酒、食事、身体活動、BMI、感染の6項目にまとめがん予防のガイドライン「日本人のためのがん予防法」を作成した。さらに、不足しているエビデンスについては日本のコホート研究をプーリングすることにより新たなエビデンスを構築した。日本糖尿病学会と日本癌学会による「糖尿病と癌に関する委員会」(委員長:春日雅人、2011年10月発足)報告書において糖尿病とがんに関するプール解析の結果が引用された。
臨床的観点からの成果
現状の科学的根拠に基づいた日本人におけるリスク・予防因子の評価結果や、それに基づいたがん予防ガイドライン「日本人のためのがん予防法」は、臨床や公衆衛生の現場において国民ががん予防を具体的に実践するための正しい知識として提供された。
ガイドライン等の開発
厚生労働省への資料の提出により「がん対策推進基本計画(変更案)」の策定に貢献した。具体的にはがんの予防の項目において喫煙および感染について取り組むべき施策や個別目標の記述において基礎資料を提供した。また、『「飲酒量の低減」、「定期的な運動の継続」、「適切な体重の維持」、「野菜・果物摂取量の増加」、「食塩摂取量の減少」等の日本人に推奨できるがん予防法について、効果的に普及啓発等を行う』と、「日本人のためのがん予防法」が引用されている(第33回がん対策推進協議会2012年5月17日 資料2)。
その他行政的観点からの成果
専門委員会への参加(辻一郎、津金昌一郎)および資料の提出により「次期国民健康づくり運動プラン」の策定にかかわっている。がんの発症予防と重症化予防に関する目標の設定、およびがんの原因(リスク・予防要因)についての日本人のエビデンスの現状に関する基礎資料を提供した。
その他のインパクト
研究班で作成したガイドライン「日本人のためのがん予防法」のうち感染を除く5つの因子について守っている数とその後のがんリスクとの関連についてコホート研究の中で解析をし、論文発表した。その内容は新聞各紙に掲載された。日本人のがんの原因についての試算では研究班で行ったプーリング解析の結果などが使用され、貢献した。その内容は新聞各紙に掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
45件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
17件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sasazuki S, Tamakoshi A, Matsuo K,et al.
Green tea consumption and gastric cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 42 (4) , 335-346  (2012)
10.1093/jjco/hys009
原著論文2
Tanaka K, Tsuji I, Tamakoshi A,et al.
Obesity and liver cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 42 (3) , 212-221  (2012)
10.1093/jjco/hyr198
原著論文3
Nagata C, Mizoue T, Tanaka K,et al.
Breastfeeding and breast cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 42 (2) , 124-130  (2012)
10.1093/jjco/hyr182
原著論文4
Sasazuki S, Inoue M, Iwasaki M, et al.
Combined impact of five lifestyle factors and subsequent risk of cancer: the Japan Public Health Center Study.
Prev Med , 54 (2) , 112-116  (2012)
10.1016/j.ypmed.2011.11.003
原著論文5
Oze I, Matsuo K, Ito H, et al.
Cigarette smoking and esophageal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 42 (1) , 63-73  (2012)
10.1093/jjco/hyr170
原著論文6
Pham NM, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Physical activity and colorectal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 42 (1) , 2-13  (2012)
10.1093/jjco/hyr160
原著論文7
Matsuo K, Ito H, Wakai K, et al.
Cigarette smoking and pancreas cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence in the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 41 (11) , 1292-1302  (2011)
10.1093/jjco/hyr141
原著論文8
Sasazuki S, Inoue M, Tsuji I, et al.
Body mass index and mortality from all causes and major causes in Japanese: results of a pooled analysis of 7 large-scale cohort studies.
J Epidemiol , 21 (6) , 417-430  (2011)
10.2188/jea.JE20100180
原著論文9
Shimazu T, Sasazuki S, Wakai K, et al.
Alcohol drinking and primary liver cancer: a pooled analysis of four Japanese cohort studies.
Int J Cancer , 130 (11) , 2645-2653  (2012)
10.1002/ijc.26255
原著論文10
Matsuo K, Mizoue T, Tanaka K, et al.
Association between body mass index and the colorectal cancer risk in Japan: pooled analysis of population-based cohort studies in Japan.
Ann Oncol. , 23 (2) , 479-490  (2012)
10.1093/annonc/mdr143
原著論文11
Oze I, Matsuo K, Wakai K, et al.
Alcohol drinking and esophageal cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 41 (5) , 677-692  (2011)
10.1093/jjco/hyr026
原著論文12
Wakai K, Matsuo K, Nagata C, et al.
Lung cancer risk and consumption of vegetables and fruit: an evaluation based on a systematic review of epidemiological evidence from Japan.
Jpn J Clin Oncol , 41 (5) , 693-708  (2011)
10.1093/jjco/hyr027
原著論文13
Inoue M, Nagata C, Tsuji I,et al.
Impact of alcohol intake on total mortality and mortality from major causes in Japan: a pooled analysis of six large-scale cohort studies.
J Epidemiol Community Health. , 66 (5) , 448-456  (2012)
10.1136/jech.2010.121830
原著論文14
Ma E, Sasazuki S, Iwasaki M,et al.
10-Year risk of colorectal cancer: development and validation of a prediction model in middle-aged Japanese men.
Cancer Epidemiol , 34 (5) , 534-541  (2010)
10.1016/j.canep.2010.04.021
原著論文15
Inoue M, Sasazuki S, Wakai K,et al.
Green tea consumption and gastric cancer in Japanese: a pooled analysis of six cohort studies.
Gut , 58 (10) , 1323-1332  (2009)
10.1136/gut.2008.166710
原著論文16
Tanaka S, Yamamoto S, Inoue M,et al.
Projecting the probability of survival free from cancer and cardiovascular incidence through lifestyle modification in Japan.
Prev Med , 48 (2) , 128-133  (2009)
10.1016/j.ypmed.2008.11.006
原著論文17
Tanaka K, Tsuji I, Wakai K,et al.
Alcohol drinking and liver cancer risk: an evaluation based on a systematic review of epidemiologic evidence among the Japanese population.
Jpn J Clin Oncol , 38 (12) , 816-838  (2008)
10.1093/jjco/hyn108
原著論文18
Mizoue T, Inoue M, Wakai K,et al.
Alcohol drinking and colorectal cancer in Japanese: a pooled analysis of results from five cohort studies.
Am J Epidemiol , 167 (12) , 1397-1406  (2008)
10.1093/aje/kwn073
原著論文19
Sasazuki S, Charvat H, Hara A, et al.
Diabetes mellitus and cancer risk: pooled analysis of eight cohort studies in Japan.
Cancer Sci , 104 (11) , 1499-1507  (2013)
10.1111/cas.12241
原著論文20
Inoue M, Inoue M, Sawada N, Matsuda T, et al.
Attributable causes of cancer in Japan in 2005--systematic assessment to estimate current burden of cancer attributable to known preventable risk factors in Japan.
Ann Oncol , 23 (5) , 1362-1369  (2012)
10.1093/annonc/mdr437

公開日・更新日

公開日
2015-04-28
更新日
2017-05-25

収支報告書

文献番号
201118003Z