不育症における抗リン脂質抗体標準化に関する研究

文献情報

文献番号
201117025A
報告書区分
総括
研究課題名
不育症における抗リン脂質抗体標準化に関する研究
課題番号
H23-次世代・若手-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北折 珠央(名古屋市立大学 医学部 産科婦人科)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 真弓(名古屋市立大学 大学院医学研究科産科婦人科学分野)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院医学研究科 免疫代謝内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
不育症の明らかな原因は夫婦染色体均衡型転座、子宮奇形、抗リン脂質抗体であり、抗リン脂質抗体陽性患者は約10%を占める。不育症においても約半数に胎児染色体異常を繰り返す症例が存在することから、胎児側の原因を除くと不育症の5分の1を抗リン脂質抗体が関与していることになる。抗リン脂質抗体症候群であればアスピリンヘパリン療法が標準的治療で約70%の成功率である。本邦の不育症治療の問題点は、測定法が標準化されておらず、商業ベースの検査法は産科的な意義が不明であること、医療者側も何らかの治療をしたいという気持ちが起こりがちであるため、正しい診断基準を満たさないまま抗リン脂質抗体症候群として過剰な治療を行っていることが多いことである。そこで我々は一般臨床家でも行うことのできる検査法で、不育症において有用な検査を見つけ、国内において過不足の少ない不育症医療ができるようにすることが本研究の目的である。平成23年度は、不育症検体400例を目標として、新規測定法と既存の検査法による結果を比較検討することを目標として研究を進めた。
研究方法
対象:当院で管理した、夫婦染色体異常と子宮奇形を除く妊娠帰結の明らかな不育症患者414人を対象とした。国際基準を満たした検査法であるが本邦新発売のPhadia社の抗カルジオリピン(CL)-IgG、IgM、IgA抗体と、β2GPI-IgG、IgM、IgA抗体の6種、さらに国際基準を満たしているが研究室でしか行えないAPTT-LA杉浦法と原理が同じであるSRL社のリン脂質中和法の合計7種の新規検査法と既存の3種類の検査法との関連や検査の有用性について検討した。本研究は名古屋市立大学倫理委員会の承認を得ている。
結果と考察
不育症症例414例について、抗リン脂質抗体新規測定法7種(Phadia社6種、SRL社1種)について測定を完了した。CL-IgG陽性率は高い者の偽陽性が多く、既存のβ2GPI-aCL抗体の方が優れていた。CL-IgMは有用である可能性が示唆されたが症例数が少なく今後の検討が必要と思われた。リン脂質中和法、β2GPI-IgG、IgM、IgAの陽性率は低いが特異度が高く、特にリン脂質中和法はaPTT-LA杉浦法で陽性になる患者を100%検出できており、代替の検査法となり得る可能性が示唆された。しかし偽陰性もある可能性があり、産科的な基準値の設定などを見直す必要性があると考えられた。
結論
抗リン脂質抗体測定の標準化は難しいが、複数の検査を組み合わせることで目的とする過不足の少ない不育症医療を目指すことができると考えている。

公開日・更新日

公開日
2012-12-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201117025Z