文献情報
文献番号
201117024A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故による母乳中の放射性物質濃度評価に関する調査研究
課題番号
H23-次世代・指定-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
欅田 尚樹(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
- 久保 隆彦(国立成育医療研究センター 周産期センター)
- 海野 信也(北里大学 医学部)
- 今村 定臣(日本産婦人科医会)
- 板橋 家頭夫(昭和大学 医学部)
- 中村 好一(自治医科大学 医学部)
- 大野 和子(京都医療科学大学 医療科学部)
- 吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
- 池内 嘉宏(日本分析センター)
- 山口 一郎(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 寺田 宙(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成23年3月11日に、東日本大震災に伴う津波により東京電力福島第一原子力発電所においては全電源喪失をきたし、その後の一連の事象とともに放射性物質による環境汚染が引き起こされた。それに伴い、飲食品の放射性物質による汚染が検出され住民の懸念が高まっている。この問題に関連して、母乳中の放射性物質濃度について調査研究を行った。
研究方法
調査は、同年5月18日から福島県および周辺県、さらに対照地域として今回の事故による放射性物質の影響が少ないと考えられる高知県を加えた8県より108人の対象者について実施した。放射性物質濃度の測定はゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリによった。
結果と考察
測定結果は、放射性物質は101人が不検出で、7人から最大で13.1Bq/kgの放射性セシウムが検出されたが、この時点では放射性ヨウ素は全員不検出であった。検出されたのは、福島県在住の方であったが、それ以外には流通食品と自家栽培の野菜などの摂取の影響、飲料水として水道水の使用など、飲食品の特徴などに特に偏った傾向は検出されなかった。また放射性物質を摂取したことによる内部被ばく線量は、体内への摂取量にそれぞれの放射性物質固有の実効線量係数をかけることで預託実効線量として計算されるが、仮に母乳中の放射性セシウム134Cs、137Csの濃度がそれぞれ10Bq/kg、放射性セシウム合計として20Bq/kgの母乳を毎日800g、1年にわたって摂取した場合を考えると、134Cs、137Csの摂取量はそれぞれ2,920ベクレルとなる。この場合の線量の増加は約0.14mSvと推計された。
以上の結果は、飲食品のモニタリングなどが有効に機能していることを反映しているものであり、乳児への健康リスクは無視できる程度と考えられた。これらの結果については、研究班より6月7日に速やかにプレスリリースを発表した。また、関連学会より、Q&Aとして結果に対する見解を発表した。
以上の結果は、飲食品のモニタリングなどが有効に機能していることを反映しているものであり、乳児への健康リスクは無視できる程度と考えられた。これらの結果については、研究班より6月7日に速やかにプレスリリースを発表した。また、関連学会より、Q&Aとして結果に対する見解を発表した。
結論
今回の調査研究により、試料を大量に入手することが困難な母乳中の放射性物質濃度の標準的な評価手法が提示できた。
また事故に伴う母親の内部被ばくに由来する母乳の放射性物質の汚染は限定的であり、幸いにして健康影響が懸念されるレベルにはないことが示された。
また事故に伴う母親の内部被ばくに由来する母乳の放射性物質の汚染は限定的であり、幸いにして健康影響が懸念されるレベルにはないことが示された。
公開日・更新日
公開日
2012-12-28
更新日
-