要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求に関する前向き疫学研究

文献情報

文献番号
201116007A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求に関する前向き疫学研究
課題番号
H21-認知症・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 人間総合科学研究科社会健康医学)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(国立大学法人筑波大学 人間総合科学研究科精神病態医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
2,115,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、これまで脳血管疾患の予防対策を長期間継続してきた茨城県と秋田県の2地区において、循環器健診データと介護保険データを突合してコホート内症例対照研究を行い、要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求を行うこととしている。血清測定項目のうち、血清高感度C反応蛋白、ホモシステイン、脂肪酸、アルファトコフェロール、ガンマトコフェロール及びコエンザイムQ10について、ベースライン時70歳未満の症例対照に限定した分析を行った。
研究方法
1984年から1995年までの茨城県及び秋田県の某農村地域の基本健康診査の受診者のうち、2000年4月から2010年9月までに要介護認知症の診断を受けた者と、その対照となる者で、ベースライン時の年齢が70歳未満であった合計618人である。このうち血清が保存され、分析が可能だった最大525人を分析対象とした。これらの症例対照について、血清高感度C反応蛋白、ホモシステイン、脂肪酸、アルファトコフェロール、ガンマトコフェロール及びコエンザイムQ10を測定し、一般の健診所見とあわせて要介護認知症との関連を条件付きロジスティックモデルにより分析した。
結果と考察
要介護認知症の発症に対して、血清パルミトレン酸、高感度C反応蛋白が正の関連または傾向を、血清n6系及びn3系多価不飽和脂肪酸(特にアルファリノレン酸)、アルファトコフェロール、コエンザイムQ10が負の関連または傾向を示した。血清飽和脂肪酸、ホモシステイン、ガンマトコフェロールに関しては、要介護認知症発症との関連は認められなかった。
結論
血清パルミトレン酸、n6系及びn3系不飽和脂肪酸、高感度C反応蛋白、アルファトコフェロール及びコエンザイムQ10が要介護認知症発症に関連する可能性が示された。あと数年程度の追跡を行うことにより、これらの要因の要介護認知症への関連を確定することが可能になるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

文献情報

文献番号
201116007B
報告書区分
総合
研究課題名
要介護認知症の危険因子・抑制因子の探求に関する前向き疫学研究
課題番号
H21-認知症・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 人間総合科学研究科社会健康医学)
研究分担者(所属機関)
  • 朝田 隆(国立大学法人筑波大学 人間総合科学研究科精神病態医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、これまで数十年間にわたり脳血管疾患の予防対策を実施してきた地域において、循環器疾患健康診査データと介護保険データを一体化させたデータベースを用いてコホート内症例対照研究を行い、要介護認知症の予防に役立つ健診検査・生活指導項目を明らかにする。
研究方法
茨城県及び秋田県の農村地区の、1981年から1994年までの循環器健診・基本健診の受診者(年間約5000名)のうち、2000年4月から2010年9月までに要介護認知症の診断を受けた者と、その対照となる者合計1326人を対象に、古典的な循環器リスクファクター(血圧、糖尿病、脂質、喫煙、body mass index)や血清測定項目(高感度C反応蛋白、ホモシステイン、脂肪酸分画、アルファトコフェロール等のビタミンE類、コエンザイムQ10)と要介護認知症の関連を、条件付多重ロジスティックモデルを用いて分析した。また、上述の介護保険データに基づく要介護認知症の疫学診断基準について、精神科医の診断をゴールドスタンダードとする妥当性の検討を行った。
結果と考察
分析により、従来の循環器リスクファクターである血圧、血清脂質、糖尿病、喫煙が要介護認知症の重要なリスクファクターであることが確認された。加えて、血清バイオマーカーとして、血清パルミトレン酸と血清高感度C反応蛋白が要介護認知症の有力な危険因子として、血清n-6系及びn-3系多価不飽和脂肪酸(特にアルファリノレン酸)と血清アルファトコフェロール、コエンザイムQ10が、要介護認知症の有力な抑制因子である可能性が示された。認知症の疫学診断の妥当性は、感度65%、特異度93%であり、コホート研究のエンドポイントとして用いるに当たり十分な妥当性を有することが確認された。
結論
本研究により、要介護認知症の危険因子・抑制因子として、従来の古典的なリスクファクターに加えて、血清バイオマーカーを用いた新しい危険因子・抑制因子の候補を明らかにすることができた。今後追跡期間を延長し、十分な症例数のもとで、これらの関連を確定していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201116007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
認知症の疫学診断基準を新たに開発し、その妥当性を検証して、疫学研究への適用に十分堪えうる基準であることを実証した。認知症の新しい危険因子・予防因子に関する分析を縦断的に行い、その成果を国内外の学会に報告した。これらの成果は若手研究者を中心に論文化を進めている。さらに本研究を基盤として、平成24年度より新たな厚生労働科学研究である「認知症一次予防のための多角的データ利用による縦断研究」として研究を発展させている。
臨床的観点からの成果
今回新たに分析した血清項目と、これまで指摘されている循環器危険因子とを総合的に分析することにより、古典的循環器危険因子の多くが認知症とも関連していることを確認した。したがって、外来等で行う従来の動脈硬化予防に関する保健指導を強化することで、認知症の予防にもつながる可能性が示された。
ガイドライン等の開発
直接的にガイドライン等の開発につながる知見は、現時点ではないが、将来的にガイドライン開発に貢献できる可能性がある。
その他行政的観点からの成果
本研究成果から、将来的に認知症の一次予防につながる危険因子、予防因子が確立される可能性が高く、さらに大規模なコホート研究等によって確認・検証することにより、健康づくり運動や特定健診制度への有効な検査項目等の提言が可能となり、国や自治体の認知症予防対策への貢献につながる。
その他のインパクト
現時点で特になし。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2016-09-13

収支報告書

文献番号
201116007Z