認知症の本人の自己対処および生活支援に関する研究

文献情報

文献番号
201116005A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の本人の自己対処および生活支援に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永田 久美子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター 包括診療部)
  • 三浦 研(大阪市立大学 生活科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,345,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の本人が自身の生活上の課題に自己対処しながら安定や生活を拡充していくための「自己対処支援ツール」として昨年度試作した「認知症の本人の生活課題リスト」、「認知症の.本人による自己対処ガイド」、「認知症の本人の自己対処支援ガイド」の試行と検証を目的とした。
研究方法
アルツハイマー型認知症の本人50人(FAST stage:軽度20、中等度20、高度10、居所:自宅14、グループホーム24、特養ホーム12))とその家族・支援者50組を対象に、3か月間のツール試行調査を実施。試行前、試行後1か月、3か月、試行終了時に、聴き取りと質問紙調査を実施。
結果と考察
ツールの利用を通じ、認知症の重症度、居所に関わらず、本人が自分の不安や不自由、有する力や生活上の希望を確認しながら、自己課題と自己対処策を見出すことが確認された。本人の自己対処を家族・支援者が1から3か月支援することで、8割のケースで本人ができることの増加、行動・心理症状の減少、生活範囲の拡大、意欲の向上、処方薬の減少等の本人のプラスの変化、家族・支援者の本人理解の向上、不安の軽減、介護継続意欲の向上等のプラスの変化が確認され、本人・家族・支援者の変化の良循環も確認された。うち6割は調査終了後もツールを自主的に利用する持続効果が確認された。良循環や継続的な利用が生じなかったケースは、接触頻度、本人の言葉やサインの把握数、本人生活背景情報の量が少ない特徴がみられた。発症後より早期からのツールの活用を求める意見が9割を占め、ケア関係者の教育や本人・家族への情報提供のしくみに自己対処の考え方や支援方法の導入の必要性が示唆された。
結論
「認知症の本人の生活課題リスト」、「認知症の.本人による自己対処ガイド」、「認知症の本人の自己対処支援ガイド」からなる「自己対処支援ツール」が、認知症本人の生活課題と自己対処法の明確化、本人の心身や生活上の多面的なプラスの変化、家族・支援者の本人理解の向上、不安・負担の軽減、介護継続意欲の向上等のプラスの変化、本人・家族・支援者間のプラスの良循環をもたらす効果があることが確認された。

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

文献情報

文献番号
201116005B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症の本人の自己対処および生活支援に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-004
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永田 久美子(社会福祉法人浴風会 認知症介護研究・研修東京センター 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター 包括診療部)
  • 三浦 研(大阪市立大学 生活科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症の本人が自身の生活上の課題に自己対処しながら安定や生活を拡充していく支援方法の確立にむけ、認知症の本人の生活課題リスト、認知症の.本人による自己対処ガイド、認知症の本人の自己対処支援ガイド(以下、自己対処支援ツール)の開発と検証を目的とした。
研究方法
平成21年度に本人の自己対処に関する文献・記録調査、本人・家族・支援者15組を対象とした実態調査を実施。平成22年度にツール素案を作成し新たな15組を対象とした調査結果をもとにツール試案を作成。平成23年度、アルツハイマー型認知症の本人50人(FAST stage:軽度20、中等度20、高度10)と家族・支援者50組を対象に、3か月間のツール試行調査を実施。試行前、試行後1か月、3か月、試行終了時に、聴き取りと質問紙調査を実施。
結果と考察
ツールの利用を通じ、認知症の重症度、居所に関わらず、本人が自分の不安や不自由、有する力や生活上の希望を確認しながら、自己課題と自己対処策を見出すことが確認された。本人の自己対処を家族・支援者が1?3か月支援することで、8割のケースで本人ができることの増加、行動・心理症状の減少、生活範囲の拡大、意欲の向上、処方薬の減少等の本人のプラスの変化、家族・支援者の本人理解の向上、不安の軽減、介護継続意欲の向上等のプラスの変化が確認され、本人・家族・支援者の変化の良循環も確認された。うち6割は調査終了後もツールを自主的に利用する持続効果が確認された。良循環や継続的な利用が生じなかったケースは、接触頻度、本人の言葉やサインの把握数、本人生活背景情報の量が少ない特徴がみられた。発症後より早期からのツールの活用を求める意見が9割を占め、ケア関係者の教育や本人・家族への情報提供のしくみに自己対処の考え方や支援方法の導入の必要性が示唆された。
結論
「本人の自己対処支援ツール」が、本人の生活課題と自己対処法の明確化、本人の心身や生活上の多面的なプラスの変化、家族・支援者の本人理解の向上、不安・負担の軽減、介護継続意欲の向上等のプラスの変化、本人・家族・支援者間のプラスの良循環等の効果が確認された。本人の自己対処を考慮しない現状の支援の問題も浮き彫りとなり、重症度や居所に関わらずできるだけ早期から本人の自己対処に焦点をあてた支援の考え方や方法の普及の必要性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2012-07-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-03-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201116005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
認知症の本人が生活上の課題に自己対処していくための「自己対処支援ツール」を開発した。活用を通じて本人の状態の改善や安定、生活範囲の広がり、本人・家族・支援者間の関係の改善等の効果があることが確認された。成果を学会で報告し、医療・福祉・介護・環境・教育等幅広い分野の研究者から反響がよせられた。
臨床的観点からの成果
開発したツールは、認知症のレベルや本人の居所によらず活用可能であることが確認された。認知症発症後のできるだけ早期段階からの活用の必要性が調査対象者の多数から提示され、介護現場はもとより、(早期)診断・治療を行う医療機関やリハビリ機関での普及・活用の必要性が示唆された。
ガイドライン等の開発
認知症の本人が、自身に生じている生活上の課題に自己対処していく上での指針となる「自己対処ガイド」を開発した。また、家族や支援者が一方的・過剰な支援に陥らずに本人の意向や有する力を活かして自己対処していくことを支援するための指針となる「自己対処支援ガイド」を開発した。
その他行政的観点からの成果
認知症ケア人材育成等事業、若年性認知症対策総合推進事業、市民後見推進事業、認知症対策普及・相談・支援事業、市町村認知症施策総合推進事業等の認知症施策を進める上で、
今回開発した「自己対処支援ツール」が、認知症の本人本位の支援や自立支援、権利擁護を具現化していくために寄与することが期待できる。
その他のインパクト
研究で明らかになった知見や開発したツールを、国内各地の認知症の当事者の会や家族会、自治体等が開催する住民対象の認知症講座やケア関係者向けの研修等で幅広く普及させていく予定である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
シンポジウム「認知症の本人から学ぶ」本人なりの対処と求めている支援とは(平成21年度厚生労働科学研究・研究成果等普及啓発事業)

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201116005Z