認知症の行動心理症状に対する原因疾患別の治療マニュアルと連携クリニカルパス作成に関する研究

文献情報

文献番号
201116004A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の行動心理症状に対する原因疾患別の治療マニュアルと連携クリニカルパス作成に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
数井 裕光(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科 )
  • 遠藤 英俊(国立長寿医療センター 包括診療部)
  • 井関 栄三(順天堂大学医学部)
  • 森原 剛史(大阪大学大学院 医学系研究科 )
  • 田伏 薫(財団法人浅香山病院)
  • 釜江 和恵(繁信 和恵)(財団法人浅香山病院)
  • 澤 温(医療法人北斗会さわ病院)
  • 西川 隆(大阪府立大学 リハビリテーション学部)
  • 河野 あゆみ(大阪市立大学 在宅看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,888,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者に関わる医療者、介護従事者、患者家族などの間の診療・介護連携を支援する地域連携パスシステムを昨年度までに構築したが、今年度は中核研究として、この我々の地域連携システムを実際の臨床場面で使用し有用性を検証する前向き研究を行った。またDLB患者の診断・治療のための研究、夜間休日のBPSD診療の現状把握研究も行った。
研究方法
中核研究では、大阪府北摂地域で在宅生活をしている認知症患者58例に対して、連携ファイルを作成した。そして患者の診療や介護に関わる人達にガイドブックを配布した。そしてこれらのツールを用いた診療・介護連携を平成23年2月1日より6ヶ月間行った。この運用の前後に結果に示す評価を行った。DLB研究では、78例のDLB患者の前駆症状を整理した。また精神療法の有用性を検討した。夜間休日のBPSD診療については大阪府でアンケート調査を行った。
結果と考察
地域連携システムの運用前後で比較したところ、かかりつけ医と介護従事者との間、および複数の介護施設間の連携が良くなった。また患者の妄想の重症度、焦燥/興奮の頻度、不安の重症度と頻度が改善した。さらに家族介護者の認知症と介護法に関する知識が増加し、介護者の介護負担も軽減した。また患者の生活状況や症状をかかりつけ医がよりよく知るようになった。以上より、連携ファイルと疾患別・重症度別ガイドブックを利用した地域連携パスシステムの実臨床現場での有用性が確認された。その後、この連携ファイルとガイドブックを広く一般に公開した。DLB研究では、便秘、レム睡眠行動障害、嗅覚異常がDLB患者の前駆症状として多いことがわかった。また幻視に対して教育的精神療法を行うことにより患者の不安が軽減した。夜間休日のBPSD診療については、かかりつけ患者以外でも診療できる病院は53施設中5施設しかなかった。しかしかかりつけ患者なら診療する施設は18施設あった。
結論
我々の認知症地域連携システムは実臨床でも有用なシステムであると考えられた。またDLBの早期診断に役立つ症状を整理し、かつ精神療法の有用性を明らかにした。夜間休日にBPSD診療をする病院が非常に少ないこと、かかりつけ医を持つことが重要であることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201116004B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症の行動心理症状に対する原因疾患別の治療マニュアルと連携クリニカルパス作成に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-003
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
数井 裕光(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 遠藤英俊(国立長寿医療センター 包括診療部)
  • 井関栄三(順天堂大学医学部)
  • 森原剛史(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 田伏 薫(財団法人浅香山病院)
  • 釜江 和恵(繁信 和恵)(財団法人浅香山病院)
  • 澤 温(医療法人北斗会さわ病院)
  • 西川 隆(大阪府立大学 リハビリテーション学部)
  • 河野あゆみ(大阪市立大学 在宅看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者に関わる医療者、介護従事者、患者家族などの間の診療・介護連携を支援する地域連携パスシステムを昨年度までに構築したが、今年度は中核研究として、この我々の地域連携システムを実際の臨床場面で使用し有用性を検証する前向き研究を行った。またDLB患者の診断・治療のための研究、夜間休日のBPSD診療の現状把握研究も行った。
研究方法
中核研究では、大阪府北摂地域で在宅生活をしている認知症患者58例に対して、連携ファイルを作成した。そして患者の診療や介護に関わる人達にガイドブックを配布した。そしてこれらのツールを用いた診療・介護連携を平成23年2月1日より6ヶ月間行った。この運用の前後に結果に示す評価を行った。DLB研究では、78例のDLB患者の前駆症状を整理した。また精神療法の有用性を検討した。夜間休日のBPSD診療については大阪府でアンケート調査を行った。
結果と考察
地域連携システムの運用前後で比較したところ、かかりつけ医と介護従事者との間、および複数の介護施設間の連携が良くなった。また患者の妄想の重症度、焦燥/興奮の頻度、不安の重症度と頻度が改善した。さらに家族介護者の認知症と介護法に関する知識が増加し、介護者の介護負担も軽減した。また患者の生活状況や症状をかかりつけ医がよりよく知るようになった。以上より、連携ファイルと疾患別・重症度別ガイドブックを利用した地域連携パスシステムの実臨床現場での有用性が確認された。その後、この連携ファイルとガイドブックを広く一般に公開した。DLB研究では、便秘、レム睡眠行動障害、嗅覚異常がDLB患者の前駆症状として多いことがわかった。また幻視に対して教育的精神療法を行うことにより患者の不安が軽減した。夜間休日のBPSD診療については、かかりつけ患者以外でも診療できる病院は53施設中5施設しかなかった。しかしかかりつけ患者なら診療する施設は18施設あった。
結論
我々の認知症地域連携システムは実臨床でも有用なシステムであると考えられた。またDLBの早期診断に役立つ症状を整理し、かつ精神療法の有用性を明らかにした。夜間休日にBPSD診療をする病院が非常に少ないこと、かかりつけ医を持つことが重要であることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2012-08-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201116004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
近年、我が国では、認知症診療において情報共有ノートは数多く作られており、各地域で使用され始めている。しかし、広域における情報共有ノートの有用性を確認した研究はない。我々は、兵庫県川西市において全市的に情報共有ノートを導入した。そして導入前後に家族介護者に対してアンケート調査を行うことで、広域での認知症診療における情報共有ノートの有用性を確認した。
臨床的観点からの成果
認知症の原因となる疾患の多くは進行性で、根治が不可能である。そのため認知症患者の多くは長年にわたり介護を必要とする。その中では、患者に関わる家族介護者と医療従事者・介護従事者が情報を共有し、連携をとることが重要である。本研究では、情報共有ノートがそのような連携を改善することを示した。
ガイドライン等の開発
認知症地域連携パスは老年精神医学雑誌(23;314-322,2012)で、情報共有ノート(みまもり・つながりノート)はホームページ(http://handaichiikirenkei.com/index.html)で、疾患別重症度別ガイドブックは書籍(認知症知って安心!症状別対応ガイド、メディカルレビュー社、2012)として公開した。
その他行政的観点からの成果
兵庫県川西市において、情報共有ノートは介護保険の市独自のインフォーマルサービスとして2013年2月から制度化されている。導入時に配布した利用者は、川西市在住の要支援2以上の方の家族介護者(3072名)であった。その中で、認知症患者と同居している家族介護者に限ると、74名の家族介護者が1年半後にもノートの使用を継続していた。これは全対象者の2.4%に当たる。今後、他の地域で同様の事業を行う際に、手厚い介入を要する患者・家族の割合を推定する上で、この割合が参考になると考える。
その他のインパクト
2015年9月の「第9回アジア認知症学会」熊本県で、情報共有ノートの、認知症診療における連携改善に対する有用性と、家族介護者に対する教育的効果について口頭発表した。現在、情報共有ノートは全国的に作成し始められている。我々は先駆者として、各市町村や認知症疾患医療センターのシンポジウムに呼ばれ、ノート導入の方法などを解説してまわっている。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
47件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
38件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
精神病院にBPSD治療のために入院した患者のBPSDが、1ヶ月程度で退院時と同等にまで軽減することを示した。この結果は、BPSD治療のために精神病院に入院する期間を短縮する施策立案の参考にされた。
その他成果(普及・啓発活動)
1件
市民公開フォーラム「認知症とむかいあう、となりあう」大阪市、2012.2.12の開催。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kazui H, Ishii R, Yoshida T, et al.
Neuroimaging studies in patients with Charles Bonnet Syndrome
Psychogeriatrics , 9 (2) , 77-84  (2009)
原著論文2
田伏薫、繁信和恵
認知症疾患治療病棟における転倒・転落の原因と対策
Jpn J Gen Hosp Psychiatry , 21 (3) , 304-311  (2009)
原著論文3
Takaya M, Kazui H, Tokunaga H, et al.
Global cerebral hypoperfusion in preclinical stage of idiopathic normal pressure hydrocephalus.
J Neurol Sci. , 298 (1) , 35-41  (2010)
原著論文4
Hayashi N, Kazui H, Kamino K, et al.
KIBRA genetic polymorphism influences episodic memory in Alzheimer's disease, but does not show association with disease in a Japanese cohort.
Dement Geriatr Cogn Disord , 30 (4) , 302-308  (2010)
原著論文5
中山博識、大西久男、西川隆
島根県内の老健施設における認知症の周辺症状と介護負担の失態調査
島根医学 , 30 (3) , 184-191  (2010)
原著論文6
木藤友実子、数井裕光、吉田哲彦他
経時的に詳細な言語機能評価をした運動ニューロン疾患を伴う意味性認知症の一例
Brain and Nerve , 62 (6) , 625-630  (2010)
原著論文7
藤城弘樹、井関栄三
高齢者の幻覚妄想と病理学的背景
老年精神医学雑誌 , 21 (6) , 671-676  (2010)
原著論文8
Kazui H, Yoshida T, Takaya M, et al.
Different characteristics of cognitive impairment in elderly schizophrenia and Alzheimer’s disease in the mild cognitive impairment stage.
Dement Geriatr Cogn Disord Extra , 1 (1) , 20-30  (2011)
原著論文9
Yoshida T, Kazui H, Tokunaga H, et al.
Protein synthesis in the posterior cingulate cortex in Alzheimer’s disease.
Psychogeriatrics , 11 (1) , 40-45  (2011)
原著論文10
矢山壮 繁信和恵、山川みやえ他
入所施設の認知症の行動心理学的徴候(BPSD)で入院を依頼する要因の実態調査
老年精神医学雑誌 , 22 (12) , 1413-1421  (2011)
原著論文11
太田一実、井関栄三、村山憲男他
レビー小体型認知症患者の幻視に対する心理的介入の有用性--2症例での検討
精神医学 , 53 (9) , 845-853  (2011)
原著論文12
太田一実、藤城弘樹、村山憲男他
顕著な幻視を呈したレビー小体型認知症の2症例 その心理・環境的要因
精神科 , 19 (1) , 90-96  (2011)
原著論文13
藤城弘樹、千葉悠平、井関栄三
レビー小体型認知症の分類・病期と診断
老年精神医学雑誌 , 22 (11) , 1297-1307  (2011)
原著論文14
数井裕光、武田雅俊
意味認知症
Brain and Nerve , 63 (10) , 1047-1055  (2011)
原著論文15
藤城弘樹、井関栄三、村山憲男他
特発性レム睡眠行動障害の長期経過後に、場所依存性に幻視が出現したレビー小体型認知症の1例
精神医学 , 53 (1) , 7-13  (2011)
原著論文16
Fujishiro H, Nakamura S, Kitazawa M, et al.
Early detection of dementia with Lewy bodies in patients with amnestic mild cognitive impairment using (123)I-MIBG cardiac scintigraphy.
J Neurol Sci. , 315 (1) , 115-119  (2012)
原著論文17
Yamakawa M, Suto S, Shigenobu K, et al.
Comparing dementia patients' nighttime objective movement indicators with staff observations.
Psychogeriatrics , 12 (1) , 18-26  (2012)
原著論文18
杉山博通、数井裕光、繁信和恵他
認知症地域連携パス
老年精神医学雑誌 , 23 (3) , 314-322  (2012)
原著論文19
Nomura K, Kazui H, Wada T, et al.
Classification of delusions in Alzheimer’s disease and their neural correlates.
Psychogeriatrics (in press) , 12 (2)  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2017-05-29

収支報告書

文献番号
201116004Z