高齢者地域住民コホート研究による加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)の実態把握および予防対策に関する研究

文献情報

文献番号
201115021A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者地域住民コホート研究による加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)の実態把握および予防対策に関する研究
課題番号
H22-長寿・若手-007
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
村木 重之(東京大学 医学部附属病院 22世紀医療センター 臨床運動器医学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
1,403,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢による衰弱は、平成19年度国民生活基礎調査において脳卒中、認知症に次いで要介護の原因の3位を占め、急速に超高齢化したわが国においてその予防は喫緊の課題であり、その主たる原因としてサルコペニアによる脆弱化が挙げられている。しかし、サルコペニアに関するエビデンスレベルの高い疫学研究はこれまで皆無に近く、その予防対策は極めて困難であった。本研究では、高齢地域住民コホート研究において、サルコペニアの実態の把握及びその危険因子の解明により、予防の為の介入プログラムを開発し、質の高いエビデンスに基づいた予防法を提言する事により、要介護者を低減することを最終目的としている。
研究方法
対象は、東京都板橋区および和歌山県太地町のコホート対象者1,774名(平均年齢72.1歳)である。いずれのコホートも地域代表性は確認されている。同対象者に対し、握力、下肢筋力および上下肢の筋量を測定した。握力は、TOEI LIGHT握力計(TOEI LIGHT社)を、下肢筋力はアルケア社製簡易筋力測定・訓練器(図3)を、上下肢筋量はタニタ製体組成計(MC-190)を用いて測定した。また、その他の調査項目としては、既往歴、生活習慣・運動習慣、転倒状況に関する詳細な問診票、栄養調査(BDHQ)、膝痛関連指標(WOMAC)、腰痛関連指標(Oswestry Disability Index)、QOL関連指標(EQ5D、SF8)、ADL・要介護度調査、整形外科専門医による診察所見、身体計測、歩行速度、立ちしゃがみ時間、片脚起立時間など運動機能テスト、単純X線撮影(腰椎・股関節・膝関節)、血液・尿検査など多数項目に及ぶ。
結果と考察
変形性膝関節症、変形性腰椎症、圧迫骨折を有している対象者は、いずれもこれらの疾患を有しない対象者よりも有意に下肢筋力が低かった。さらに、膝痛、腰痛を有する女性は、有しない女性よりも有意に筋力が低かった。さらに、QOLの指標であるWOMAC pain score,physical function scoreは、女性において筋力および筋量の両方と関連がみられた。また、要介護を受けている対象者は、受けていない対象者と比較して筋力が著しく低く、筋力増強訓練が要介護者の低減に有効であることが示唆できた。一方、運動機能に関しては、6m歩行時間、片脚立ち時間、5回いす立ち上がり時間のいずれも筋力と強い関連がみられ、これらの運動が筋力増強訓練に有効であることが示唆された。
結論
今後、これらのエビデンスをもとに開発したサルコペニア予防のための介入プログラムを対象者に適応し、その有効性を検証する。

公開日・更新日

公開日
2012-06-18
更新日
-

収支報告書

文献番号
201115021Z