文献情報
文献番号
201115010A
報告書区分
総括
研究課題名
腰痛の診断、治療法に関する研究:痛み・しびれの可視化技術の確立並びにMRIを用いた脊髄投射路及び末梢神経イメージング法の確立
課題番号
H21-長寿・一般-009
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
戸山 芳昭(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中村雅也(慶應義塾大学医学部)
- 百島祐貴(慶應義塾大学医学部)
- 石井賢(慶應義塾大学医学部)
- 紺野愼一(福島県立医大整形外科)
- 牛田享宏(愛知医科大学学際的痛みセンター)
- 田畑泰彦(京都大学再生医科学研究所)
- 岩崎幹季(大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学)
- 玉置憲一(実験動物中央研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,629,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
MRI拡散テンソル投射路撮影(DTT)による神経投射路の可視化、分子標的イメージングによる神経障害部位の炎症・疼痛の可視化、functional MRI(fMRI)を用いた腰痛に対する脳内変化の可視化、3D-CTを用いた腰椎変性疾患における腰椎の生体力学的解析を行い、高齢者の腰痛や神経障害をきたす疾患の早期診断、病態の解明、予後予測などを可能とする画像診断技術の確立を目指し研究を行った。
研究方法
靱帯骨化モデルマウス脊髄に対するDTTを経時的に撮像し、下肢運動機能及び組織像と比較検討した。頚髄疾患患者に対する術前DTTを撮像し、術後神経症状の改善率と比較検討した。疼痛を可視化できるMRIプローブの作製を行った。慢性腰痛患者のfMRIを撮像し、腰部刺激及び仮想腰痛タスク刺激による脳内信号変化を検討した。腰椎変性疾患患者の動態3D-CTを撮像し、PCソフトウェアによる画像解析処理により腰椎椎間運動の3次元解析を行った。
結果と考察
靱帯骨化モデルマウス脊髄に対するDTT、また頚髄疾患患者に対する術前のDTTにより障害された脊髄の機能予後を評価できることが示唆された。MRIによる炎症と疼痛の可視化に必要な分子標的プローブの基盤となるGd3+イオン配位DTPAデキストランの作製に成功した。functional MRIを用いた腰痛に対する脳内変化は、腰痛患者では仮想腰痛タスクを視認した際に健常者とは異なるパターンの脳活動が検出され、前頭眼野、補足運動野、側頭皮質、視覚連合野、視床、島、後帯状回、小脳などで有意に活動していることが明らかとなった。さらに疼痛刺激に対する脳賦活部位は後帯状皮質で認められ、腰痛を不快感の強い痛みと感じていることが示唆された。fMRIは慢性疼痛の客観的評価法の1つになりうる可能性がある。3D-CTを用いたボリュームレジストレーション法(VR法)により、従来のmodalityでは限界のあった生体腰椎の微細な椎間運動を3次元的かつ高精度で捉えることができ、腰椎固定術後の隣接椎間や仙腸関節に生じる生体内3次元動態変化を捉えることに成功した。
結論
DTT、分子標的イメージング、functional MRI、dynamic 3D-CTなどの最新のイメージング技術を駆使することにより、高齢者の腰痛や神経障害をきたす疾患の早期診断、病態の解明、予後予測などの可能性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2012-07-20
更新日
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